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物権総説 †
物権総説 †
物権の意義と物権法定主義 †
- 物権とは、物を直接的・排他的に支配する権利を指す
- 民法は物権について、法律で定めるもの以外は勝手に創設することができないとする(物権法定主義)<175条>
物権 | 所有権、占有権、地上権、永小作権、地役権、入会権 |
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担保物権 | 留置権、先取特権、質権、抵当権 |
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物権的請求権 †
民法上は明文で規定していないが、物権にはいわゆる物権的請求権が認められ、以下の3つがあるとされる
- 物権的妨害予防請求権
自己の物権の実現を妨害されるおそれがある場合に、そのおそれを取り除くよう請求する権利(物を奪われる以外の方法で物権侵害が生じている場合の請求権)
- 物権的妨害排除請求権
自己の物権の実現が妨げられている場合に、その妨害を取り除くよう請求する権利
- 物権的返還請求権
物が奪われた場合に、その奪った物に対して、所有権に基づいて物の引渡・明け渡しを請求する権利
物権の変動 †
物権が移転、もしくは発生・消滅すること。当事者の意思(契約)や時効・相続により生じる。
公示の原則 †
民法は、物権変動を目に見えるように一定の形式を伴わせるようにし、これが無いと自己の権利を第三者に主張できないという原則
⇒動産では引渡、不動産では登記が公示に該当する
公信の原則 †
公示を信頼して取引をした者は、譲渡人の権利の有無とは関係無く公示通りの権利を取得するという原則
民法においては、不動産物件変動については公示の原則を採用し(177条、登記を対抗要件とする)、動産については公信の原則を採用している(192条、動産における即時取得)。
⇒家の所有者はAだが登記簿にBが所有者だと書かれてあった場合、Cがそれを信じてBから家を買ったとしても家はCのものにはならないということ
不動産の物件変動の対抗要件<177条> †
- 民法第177条
- 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
不動産の物件変動には公示の原則が採用されているので、これを第三者に主張(対抗)するためには、登記が必要となる。
例えば、A所有の土地をBが買い付けた場合には、Aから土地の所有権をBに移転することになるが、A所有の土地を買い付けたBが
登記せずにこれを放っておいたところ、その後にAがCに同じ土地を二重に売り渡したような場合に、先に購入したBと後から購入したCの優劣が問題となる(二重譲渡の問題)場合、177条からすれば、不動産物件変動を第三者に対抗するためには登記が必要であると言うことから、BCいずれか先に登記を具備した方が優先すると言うことになる。
また、177条は、登記の有無のみを問題としており、当事者の善意や悪意を問題にしていないので、Cが悪意であっても、Cが先に登記を具備すればBに優先する。
177条の意味 †
ここでいう第三者とは、当事者若しくはその包括承継人以外の者で、不動産に関する物権の変動の登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者をいうと回される。つまり、先の例で行くと、売り主であるAは当事者であるから第三者には含まれない。
また、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する者と言うことは、Bが登記を有していないことを指摘して自分の権利の正当性を主張できる者ということであるから、例えば当該土地を不法に占拠している者とか、単に投棄を違法な手段で具備したような者はここでいう第三者には含まれないと理解される。
背信的悪意者 †
単なる悪意を越えて、登記の欠缺を主張することが信義則に反するような、いわゆる背信的悪意者については、もはや177条の第三者には含まれないと解されている(最判昭43.8.2)。
動産の物件変動の対抗要件<178条> †
- 第178条
- 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
動産の場合は、引渡がなければ、これを第三者に対抗することができないとされている。例えば、A所有の宝石をBが買い受けた場合には、Aから宝石の所有権がBに移転することになるが、買受人であるBとしては、以下の四つのうちのいずれかの方法により「引渡」を得ないと、これを第三者に主張できないことになる。
- 現実の引渡
目的動産を現実に引き渡すこと。
- 簡易の引渡
買い主Bが既に目的物を所持しているような場合において、売買が為された際に、一度目的物を返還して、再度引き渡してもらうのは無駄なので、当事者の意思表示だけで引渡があったとするもの。
- 占有改定
物の譲渡後も、譲渡人が引き続きその物を所持するような場合のこと。例えば、買主Bが売買後もそのまま売主Aに目的物を預けておくような場合。
- 指図による占有移転
例えば、Aの宝石を第三者Cが預かっている場合に、Bがこの宝石を購入したところ、AがCに対して今後はBの為に預かる旨を通知し、Bがこれを承諾することになされる引渡のこと。
即時取得<192条> †
- 第192条
- 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
即時取得とは、動産を占有する者を、善意無過失で権利者と信じて、これと取引した者を保護する制度であり、例え動産の占有者が無権利者であっても、その動産の権利を取得できるというもの。
- 即時取得の要件
- 目的物が動産であること(登録制度のある登録済の自動車、船舶などは対象外)
- 有効な取引行為が存在すること
- 無権利者からの取得であること
- 平穏・公然、善意・無過失であること(占有開始時において)
- 占有が開始されていること
※即時取得した場合において、その占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者等は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる<193条>。また、占有者が、盗品又は遺失物を、公の市場等で善意に買い受けたときは、被害者等は、占有者が支払った代価を弁償して回復できる<194条>。
占有権 †
- 民法第180条
- 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。
物の支配という現実の事実状態を一応保障するために認められた物権のことで、登記は要しない。また、相続の対象にもなる。
要件 †
- 自己のためにする意思を持つ
- 物を現実に支配すること。但し、自分自身が現実的に支配する必要は無く、代理人による場合でもよい。
⇒悪意占有者(泥棒など)にも占有権が認められる。
効果 †
- 占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定される
⇒覆すことができる
- 善意の占有者は占有物より生ずる果実を取得することができる
占有状態の保護制度 †
- 占有回収の訴え
- 様態
占有物を他人に一方的に奪われた場合、その占有を回復するための訴え
⇒所有していた本が盗まれた場合など
- 請求事項
妨害の停止(要するに回収)および損害の賠償(但し、侵奪のときより1年を期限とする)
- 占有保持の訴え
- 様態
占有が他人によって現実に妨害されている場合に、その妨害を排除するための訴え
⇒隣地の樹木が自分の土地に倒れた場合など
- 請求事項
妨害の停止および損害の賠償(損害賠償には、妨害者の故意・過失があることを要する)
- 占有保全の訴え
- 様態
まだ現実の妨害はないが、占有の妨害のおそれがある場合、その妨害の予防を求める訴え
⇒隣地の樹木が今にも自分の土地に倒れそうな場合
注意点
- 占有回収の訴えは侵略者から善意で目的物を譲り受けた者に対しては訴えを提起できない。
- 占有訴権は占有の事実を決する訴えでもあるから、同一の事実関係について、所有権に基づいて訴えを提起することもできる。
⇒占有訴権の中では所有権を主張しても意味は無いということでもある。
所有権 †
意義と相隣関係 †
意義 †
- 民法第206条
- 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
法令の制限内において、その物の支配権限の全てを有している権利
相隣関係 †
- 相隣関係
- 隣地や隣家との関係についての問題
- 隣地への立入請求<209条>
民法209条1項で、土地の所有者は、境界またはその付近において障壁または建物を築造しまたは修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができるとして、隣地への立ち入り請求権を認めている。但し、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできないとも規定している。
209条1項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その賞金を請求できることができるともしている。<209条2項>
- 行動に至るための他の土地の通行権<210条>
民法210条1項において、他の土地に囲まれて行動に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる、としている。但し、通行の場所及び方法は、必要な限度で、かつ、他の土地のために損害が最も少ない物を選ばなければならなく<211条1項>、通行する他の土地の損害に対して賞金を支払わなければならない<212条>。
次に、分割によって公道に通じない土地が生じたとき(土地の一部譲渡により生じた場合も同様)は、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することになる。この場合には、他人の土地の通行について償金を支払うことを要しない。<213条>
共有関係 †
数人がそれぞれ共同所有している割合としての持分を有することによって、1個の所有権を有する状態を共有という。
共有持ち分については、共有者間に同意があればそれにより、明らかではない場合には各共有者間で平等であると推定される。<250条>
共有物の使用 †
- 民法第249条
- 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
具体的にどのように共有物を使用するかは、共有者で協議するのが通常となる。
共有物に対して何らかの処分を行う場合については、民法はその行為の内容により下記のような要件を定めている。
行為 | 内容 | 具体例 | 要件 |
保存行為 | 共有物の現状を 維持する行為 | 共有物の修理 | 一人でも可能 |
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管理行為 | 共有物を利用・ 改良する行為 | 共有物を貸すこと | 各共有者の 持分の過半数 |
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変更行為 | 共有物の形もしくは 性質に変更を加えること | 農地を宅地にすること 共有物を売ること | 共有者全員の 同意が必要 |
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共有物の分割 †
- 共有物はいつでも分割を請求できる。ただし、特約で5年を越えない期間の分割禁止特約をすることができる<256条1項>。
- 共有物の分割方法は、原則としては当事者の協議によるが、協議が整わないときは裁判で分割する<258条>。
その他の物権 †
地上権 †
- 民法第265条
- 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
意義 †
- 建物や竹木を所有するため他人の土地を利用する権利。
- 地表だけでなく地下や空中を目的とする者も設定できる。
- 地代は必ずしも要求されない。それゆえ無償でも可。
発生 †
- 契約による場合
- 時効により取得した場合
- 法定地上権(抵当権)による場合
対抗要件 †
登記
譲渡・転貸 †
所有者の承諾は不要(貸借権は必要)
その他 †
- 地代不払いについては2年以上怠った場合には土地所有者からの地上権消滅請求が認められる。
- 相隣関係の規定は地上権にも準用される。
- 抵当権の目的とすることができる。
地役権 †
- 民法第280条
- 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る)に違反しないものでなければならない。
日本は土地が少ないため、地役権はその土地を有効に利用させるのに役立つ権利ということで、方はなるべく地役権を存続させるように配慮している
⇒得やすく、失いにくく
意義 †
- 設定契約で定めた目的に従って、他人の土地を自分の土地の便益のために用いる権利
- ex. 隣の土地を通行したり、隣の土地を通して水を引く権利。この場合、他の土地から便益を受ける土地を要役地、他の土地に便益を与える土地を承役地と言う。
- 要役地と承役地は隣接していなくてもよい。
- 地上権同様、対価は無償でもよい。
発生 †
- 契約による場合
- 時効により取得する場合、但し、地役権が表現かつ継続のものに限られる。表現とは地役権の行使が常時外部から見えることを意味する。
対抗要件 †
登記
時効 †
- 共有者の一人が地役権を時効取得すると他の共有者も取得する。
- 要役地の共有者は自己の持分についてのみ、地役権を消滅させることはできない。
- 承役地の共有者は自己の持分についてのみ、地役権を消滅させることはできない。
- 時効によって消滅するのは、その不行使の部分だけであって、地役権全部が消滅するわけではない。
処分 †
要役地から分離して処分することはできない。
その他 †
承役地が分割または一部譲渡されても、地役権はその各部の上に存する。
永小作権・入会権 †
永小作権 †
小作料を支払って他人の土地において耕作または牧畜をする権利のこと<270条>。地上権と異なり、有償である必要がある。
入会権<263、294条> †
入会権とは、村落など、一定の地域に居住する集団が山林や原野、漁場や用水等を総有的に支配する権利を言う。総有とは、団体の構成員は、使用・収益の権能を持つが、処分の権能は団体に属し、構成員は持分をもたず、分割の請求もできないという特殊な共有形態となる。
民法は、入会権については、各地方の慣習に従うと規定している。
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