民法 / 契約総論


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総論

契約自由の原則

 契約とは、相対立する2個以上の2個以上の意思表示の合致により成立する法律行為であり、その締結を何人にも強制されず、またその内容刀を自由に決定することができる

契約の種類

 契約には、下記のような分類がある

  1. 有名契約と無名契約
    • 有名契約(典型契約):民法が規定する13種類の典型契約
    • 無名契約(非典型契約):それ以外の契約
  2. 双務契約と片務契約
    • 双務契約:契約の当事者が互いに対価的な意味を有する債務を負担する契約
       ex. 売買など
    • 片務契約:一方の当事者のみが債務を負うか、または双方の債務が対価的な意味を持たない契約
       ex. 贈与、使用貸借など
  3. 有償契約と無償契約
    • 有償契約:契約当事者が互いに対価的意義を有する出捐をする契約
       ex. 売買契約、賃貸借契約など
    • 無償契約:契約者が互いに対価的意義を有する出捐をしない契約
       ex. 贈与、使用貸借契約など
  4. 諾成契約と要物契約
    • 諾成契約:契約の成立が、当事者の意思表示のみで成立する契約
       ex. 売買契約など
    • 要物契約:契約の成立に、当事者の合意の他に、物の引渡などの給付が要件とされる契約
       ex. 消費貸借、使用貸借、寄託
  • 主な典型契約の性質
    双務・片務有償・無償諾成・要物
    贈与片務無償諾成
    売買双務有償諾成
    交換双務有償諾成
    消費貸借片務無償(有償もある)要物
    使用貸借片務無償要物
    賃貸借双務有償諾成
    雇用双務有償諾成
    請負双務有償諾成
    委任片務(双務もある)無償(有償もある)諾成

契約の成立

契約の成立


契約の成立

 契約の成立には、申込と承諾の2つの意思表示が合致することが必要である

申込の効力

  • 原則
    • 申込の意思表示は、その通知が相手方に到達したときに効力を生じる<97条1項>
    • 表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない<97条2項>
       ⇒申込の通知を発した後は、申込者が死亡しても、通知の到達があれば申込は有効に成立する
  • 例外
    • 申込者が反対の意思を表明していた場合
    • 申込者の死亡や能力喪失があったことを相手方が知っていた場合
      • 死亡の場合:効力が生じない
      • 能力喪失の場合:制限行為能力者の意思表示として扱われる

申込の拘束力

  • 相手方に申込が到達すると、申込者は勝手に撤回ができなくなる<521、524条>
  • 申込の効力の存続期間
    • 承諾期間の定めがある場合には、その期間中は申込の撤回ができないが、期間の経過により申込は効力を失う
    • 承諾期間の定めがない場合
      • 対話者間における場合には、対話中は何時でも撤回できると考えられる
      • 各地者間における場合には、承諾を受けるのに相当な期限は拘束力がある<524条>

承諾

 承諾には、承諾するかどうかの自由があり、承諾は対話者間では直ぐに相手方に到達するので問題は無いが、各地者間では、民法は承諾を発信したときに効力が生じるとしている<526条>。

第三者のためにする契約<537条>

  • 契約当事者の一方が第三者に直接に債務を負担することを相手方当事者に約する契約を第三者のためにする契約という<537条1項>
    • 例えば、AB間でA所有の土地について売買契約を締結した場合に、買主Bが代金をAではなく、第三者Cに支払う旨の契約をするような場合
      • 要するにAB間の売買契約において、特約によって代金の支払の相手方をCとすること
    • 第三者のための契約では、売主Aを要約者といい、買主Bを諾約者という。そして利益を受けるCを受益者と呼ぶ。
  • 第三者のためにする契約は、要約者と諾約者との間の合意で成立する<537条1項>。但し、受益者の諾約者に対する権利は、受益者が諾約者に契約の利益を享受する旨の意思表示をしたときに発生する<537条2項>。

契約の効果

同時履行の抗弁権<533条>

同時履行の抗弁権

  • 双務契約において、一方の債務が履行されるまでは他方の債務も履行しなくて良いとするものであり、公平の原理に基づき、対立する債務に履行上の牽連性を認めるもの
  • 自分の債務履行が拒絶できることもあるが、同時に自分の債務を履行しないことが履行遅滞にならない

要件

  1. 双務契約の当事者間に債務が存在すること
  2. 相手方の債務が弁済期にあること
  3. 相手方が自己の債務の履行またはその提供をしないで履行を請求をしてくること

危険負担<534条>

 双務契約において債務者の責めに帰すべき事由によらず債務が履行できなくなった場合に、それと対価的関係にある債務も消滅するか否かという存続上の牽連関係の問題を危険負担という。

 危険負担において、一方の債務が消滅した場合には、他方の債務も消滅することを債務者主義と言い、一方の債務が消滅しても他方の債務は消滅しないことを債権者主義と言い、民法では原則として債務者主義を採用しているが<536条1項>、特定物に関する物権の設定または移転を目的とする契約<534条1項>や、停止条件付双務契約の目的物が債務者の責めに帰すことができない事由によって損傷した場合<535条2項>、債務や物の消滅について債権者に帰責性がある場合<536条2項>には債権者主義が適用される。


債務者主義<536条1項>

 534条、535条が適用されない場合において、当事者双方の責めに帰することができない事由によって一方の債務を履行することができなくなったときは、他方の債務も消滅する<536条1項>

債権者主義<534条>

  • 特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって一方の履行が不能になった場合でも、もう片方の債務は消滅しない<534条1項>
  • 不特定物においても、物が特定したときから債権者主義が適用される<534条2項>ため、現実には債権者主義の方が適用範囲が広い結果になっている

停止条件付双務契約の場合の処理<535条>

 停止条件付双務契約において

  • 停止条件の成否が未定の間に目的物が滅失した場合<535条1項>
    • 債務者主義が適用される
  • 停止条件の成否が未定の間に目的物が毀損した場合<535条2項>
    • 債権者主義が適用される
  • 停止条件の成否が未定の間に、債務者の責任によって毀損した場合<535条3項>
    • 条件が成就したときは、債権者は、契約の履行または解除のいずれかを選択できる
    • 同時に損害賠償請求をすることも可能である

債権者の責任による履行不能<536条2項>

 534条、535条に定める場合以外で、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、債務者が自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

契約の解除

 契約の解除とは、契約が締結された後に、その当事者の一方的な意思表示によって契約が初めから無かったことになることを言う。


解除事由について

債務不履行による契約解除の種類

  • 履行遅滞による契約解除<541条>
  • 定期行為の履行遅滞による契約解除<542条>
  • 履行不能による契約解除<543条>
  • 不完全履行による契約解除(明文にはない)
    • 完全な履行ができる場合であっても履行遅滞による解除が可能、完全な履行ができない場合には履行不能として契約解除できるため

履行遅滞による解除権の発生要件

  1. 債務者の責任によって履行が遅れていること
  2. 相当の期間を定めて催告していること
    • 相当の期間:履行を行うのに必要な期間であり、一般的には2、3日
    • 催告:履行を促すこと
  3. その期間内に履行が無いこと

 また履行不能の場合には、債務者は履行のしようがないので、上記の催告は不要になる

解除権の行使方法

 解除権は、相手方に解除する旨の意思表示をすることにより行使する。解除権の行使に条件・期限は付けられないし、解除の撤回もできない<540条>。

 また、解除権は不可分性があり、当事者の一方が複数いる場合には、全員に対して意思表示が必要となる。逆に、複数当事者が解除権を有する場合には、一人について解除権が消滅すると、全体の解除権行使ができなくなる。

解除の効果

 解除権が行使されると、契約は初めから遡及的になかったことになり、未履行の債務は契約の消滅により当然、履行必要性が無くなるし、履行してしまった債務は原状回復する義務が生じることになる<545条>。
 さらに、原状回復をしても、なお損害がある場合には、損害賠償をすることも可能である<545条3項>。
 但し、契約解除によって、第三者の権利を害することはできないとされている<545条1項但書>。


定期行為の履行遅滞による契約解除

定期行為
結婚式当日に用いる衣装の貸借やクリスマスケーキの注文などのように、一定の時までに履行しなければ契約目的を達することができない行為。

 定期行為が一定期間内に履行されなかった場合は、催告をすることなく、解除権が直ちに発生する。