ワーキングチェアの選び方。


ワーキングチェアの選び方。

(選び方と言っても、あくまでも経験に基づく主観ですので参考程度に)


■用途を限定させた方が結果的には快適。
 前傾(立ち姿勢)での勉強や仕事と、リラクゼーションの後傾状態の両方を完全にサポートしている椅子はありません。前傾使用か後傾使用かをはっきり定義づけた方が結果的には快適な環境が整います。書類などの書き物作業メインなどの場合には前傾、PC作業メインなら後傾という選択をあらかじめ決めたほうがいいでしょう。


■机の高さと合った物を買う。
 日本の机は非常に天版の高さが低いですが、ワーキングチェアの多くは外国製のために高い天版を想定したような作りになっています。ゆえに座面高を最低まで下げても上半身がベストポジションに収まってくれないということがあります。比較的下まで下げることができるのがミラとリープとアーロン(Aサイズ)ですが、その他の椅子はほとんどが座面高が42センチを超えます。逆に、座面は充分に下げることができるのに、天板の高さが高すぎるケースも考えられます。この時に自分の腕が机の天版に対して楽な位置に来ているかどうかは要確認です。小柄な人は、低い座面に対応できる低い天板の机を探すか、高い座面の椅子にフットレストを組み合わせるかが思案のしどころとなります。


■ヘッドレストはあまり重要視しなくてもいい。
 個人的な感想ですが、完全なリラクゼーション用途の場合を除いてヘッドレストはあってもなくてもあまり代わりありません。というのも、仕事などで集中している場合にはけっこうヘッドレストから頭が浮いてしまっている事が多いからです。逆にヘッドレストを使用するように意識するあまり、集中力が散漫になってしまう可能性すらあります。もちろん休みたい時にヘッドレストがあるというのは大きな利点ですが、それにとらわれて他の重要な点を妥協するのはあまりにももったいないと思います。


■ヘッドレストを重要視したほうがいい場合もある。
 長時間のPC作業が主用途で、首がいわゆるストレートネックであったり頸椎が後湾してしまっているような人の場合は、首から肩にかけての疲労軽減のためにヘッドレストは非常に効果的であると言えます。ただしリクライニング時にも頭を起こして使えるようにヘッドレストの位置・角度が調整できる物を注意して選びましょう。


■革張りの椅子は避ける。
 一見豪華に見える革張りの椅子ですが、予想以上に蒸れ、しかも滑ります。夏は正直なところかなり不快ですし、後傾使用などの場合には体が滑っていってしまいますので百害あって一利無しです。しかし、エアコンなどで常時完全に温度調整がなされている環境で使用する分にはそれほどでもないかもしれません。


■高圧ガスダンパーを用いた昇降装置について
 簡単に高さ調節ができることから、現在最もメジャーとなっていますが、高圧のガスが使われた中国製品で爆発死亡事故が起きています。ごく一部の粗悪品において起こった事故ですが、そのような事も起こり得ると心に留めておいたほうが良いかもしれません。


■メッシュチェアの不快適性。
 メッシュ(網状の)チェアは見た目のインパクトが絶大で、アーロンチェアが発表された時から人気の高い物ですが、これには大きな弱点があります。それは周囲のフレームで柔らかいメッシュを支えるという形状のために固いフレームにどうしても体が触れて、場合によっては痛みすらも感じてしまうという欠点があるからです。しかも1時間程度の試座ではその不快適性は判別できないというのが一番たちの悪いところ。私も大丈夫だと思って買ってみたら、実はものすごく不快だったという経験があります。もちろん体型にジャストフィットしている場合にはそういう事はないかもしれませんが、そういった人は極めて希だと思います。頻繁に体を動かすようにすればそういった不快な感覚はないかもしれませんが、ワーキングチェアとしてそれが向いているとは思えません。むしろ体を動かさなくても作業に集中できるというのが高機能チェアの最大の利点だと思います。また、煙草を吸う方の場合には、灰が落ちただけで一発で穴が空いてしまうという危険もはらんでいる事をお忘れ無く。ゆえにメッシュチェアは、よほど体にフィットしていると感じない限り避けた方が無難です。体重の重い人は特に沈み込みが激しくなりますので、気をつけましょう。


■身長によって選択できる椅子は変わってくる。
 たとえばエルシオは使用者が一般的な体格の場合、身長160〜165センチ程度の体格でないと背面形状がストレスになります。(猫背を誘発する) アーロンBsizeは170センチ以下、リープ(通常タイプ)は170センチ以上、リープHDは170センチ以下、コンテッサは170センチ以下、プリーズは特になし、スカイは170センチ以上、エモーションは160〜180センチ程度?という具合です。中でもエルシオはかなり使う人を選びますので注意してください。


■試座は必須。
 ワーキングチェアは長く使う物で、なにより高い買い物です。上記の身長の件でもそうですが、体格によって合う合わないは致命的ですので試座は必須だと思います。せっかく買っても体に合わなければ我慢しつつ使い続けるか売り払うしかないのですから。


■高機能チェアは腰痛を治療するための物ではない。
 よく腰痛なので高機能チェアを購入しようという方がいらっしゃいますが、現在腰痛の方が高機能チェアを買ったからといって腰痛が解消されるとはお考えにならないでください。もし今あなたが腰痛なのだとしたら、まずは病院に行って治療すべきです。もちろん腰痛の再発を解消するには正しい姿勢を取るのが一番ですので、そういった意味では高機能チェアは良いと思いますので検討しましょう。


■疲労軽減には体に合ったアームレストの付いている物が効果的。
 アームレストが体に合っていると、上半身への負担を大幅に減らす事ができますので疲労の軽減に役立ちます。PCによる文字書き仕事の場合など、長時間同じ姿勢で仕事をする場合には最適ですので、アームレストを重視した方がいいでしょう。アームレストが高機能な椅子にはエルシオ、レビーノ、リープなどが上げられます。(モデルによってはアームレスト不可動モデルもあるので注意)逆に駄目な物ではプリーズ、エモーションなど。これらはアームレストの設定幅が極めて小さいというのに、背面リクライニングにアームレストが追従しない上に姿勢変化が大きいいために、姿勢によって大きくアームレストと肩との距離が変わってしまうという致命的な欠陥があります。よほど体に合っている人以外にはお勧めできません。理想的なアームレストとしては、前腕の肉厚の部分にチョンとアームレストを引っかける事ができるという状態が理想です。これなら腕を動かす際にも邪魔にならないために作業効率を落とす事はありませんし、上半身への疲労蓄積を軽減させる事が可能です。


■保証期間と、破損時の対応。
 保証期間は製品や代理店によって大きく異なります。アーロンチェアの場合にはハーマンミラージャパン正規取り扱い品の場合には構造部が12年間有効。スチールケース社製品の場合には構造部15年・可動部10年と長期間が有効のため、破損時にも安心の体制が整っています。逆に保証期間が短いのがオカムラ・コクヨ・イトーキなどの国内代理店扱いの製品(エモーションなどの輸入品も含む)です。構造部の保証は3年・可動部はわずか2年です。ちょうど壊れやすい時期に保証期間が切れるので怖いところ。スカイチェアなどの15万円もするものが壊れてしまったらいくらかかるのかと思うとぞっとします。そうそう心配しすぎる必要はないと思いますが、高機能チェアは構造が複雑なので頻繁に設定を変更する人の場合には壊れる可能性がそれなりにあるということを頭にとどめておいてください。
(参考)アーロンチェアの破損で修理に出したことがあったのですが、その際にはハーマンミラーから専用の段ボール箱が送られてきて、それに入れて着払いで発送でした。ハーマンミラー到着後に製品の検査が行われ、保証修理対象部分と判断されたので修理後にまた送り返されてきました。この場合の送料もハーマンミラーもちでした。気になったので問い合わせてみましたが、保証修理の場合には無料、保証外修理の場合には修理代金と往復の送料を取られるそうです。大型の重い椅子ですので、送料は往復で1万円を越えていたでしょうから、このサービスはありがたかったです。


■取り扱い代理店の選択。
 リープチェアなどのスチールケース社製品の場合、取り扱い代理店の選択も重要という情報があります。品物が市場に出てくる流れは「スチールケース社→取り扱い代理店→小売店」という流れになっていますが、この取り扱い代理店が曲者で、この選択を誤ると修理時などに非常に苦労させられるようです。評判がいいのは「内田洋行」で、この代理店を介している小売店での購入をお勧めします。逆に評判が悪いのが「くろがね」との事です。この代理店もので故障したときには、何度問い合わせても放置プレイの連続で、平気で修理完了までに数ヶ月かかることも珍しくないとか。といっても、この情報は2年ほど前のものですので体制は変わっているかもしれませんが、トラブルを避けるには考慮するほうが無難だと思います。購入時には小売店に「代理店はどこか?」と聞くことをお忘れなく。


■中古品の可否。
 中古品は試座代わりに買ってみるという場合以外にはお勧めしかねます。前ユーザーがどんな使い方をしているのかわからないということももちろんですが、基本的に中古品は(ハーマンミラー、スチールケースの場合)メーカー保証が消失してしまいますので、破損時にとんでもない高額の修理代を請求されたりします。たとえばアーロンチェアで座面のメッシュが痛んでしまった場合、メッシュの張替えだけということはせずに座面ユニット丸ごと交換という修理対応となります。この座面ユニットは3万円もしてしまうので、技術料や送料なども含めると、場合によってはたった1回の修理で5万円に軽く到達してしまいます。これではかなり痛い出費となると思います。ゆえに10万円の椅子を7〜8万円で買ったとしても、保証が消失しているのでは長期間使用に不安を抱えてしまうのではないでしょうか。2万円をケチって不安を抱えるよりも、2万円を支払って新品と安心を購入したほうがよろしいかと思います。なお、オカムラなど国内代理店取り扱いの椅子の場合にはメーカー保証は継続するようですが、もともと保証期間が短いのでどうということはないかも…。