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5 二〇〇三年一月二十二日 学園島南部 オターキングラード戦域上空

 「一%・・・なるほど。お前ららしい考えだ」

 舞虎は口元を緩める。
 一%の希望の縋るよりも、舞虎は九十九%の絶望を打開する方法を先に考える性格だ。

 「戦場のエースというのは、戦場に長く居すぎた奴の過信だ」

 対戦車ライフルの砲火を浴びせ、WGを弾き飛ばす。
 セミオートで断続的に二十价討魴發噌み、WGに反撃する隙を与えない。

 「お前のことだよ」

 一時的に動きを止めたWGを、仲間のSGが追い討ちをかける。
 稲葉のSG隊は魔法を使えるほどマナに余力が無く、実弾兵器を主力にしているのはそのためだ。
 とは言え、舞虎はアクセルなんたらだのディバインなんたらだの、一々声に出して魔法を唱えるのは気の乗らないことだった。
 無論、深夜にやっている魔法少女のバトルアニメは嫌いではないが。

 <<ほざけ!>>

 WGの腹部が光を増していく。
 先ほど舞虎は、戦車隊がWGのレーザーに似た攻撃で損害を出したという報告を受けている。
 舞虎は強い危機感を抱きつつも、部下に命令を下す。

 「グラウフォーゲル2、3!電磁防護幕展開!」
 「グラウフォーゲル2、了解!」
 「グラウフォーゲル3、了解!」
 
 光の渦がWGの腹部から放たれ、間一髪でSGたちが連結させた電磁防護幕に食い止められた。
 WGはグラウフォーゲル4を狙っていたようだった。

 <<なんだと!?弾かれている!>>

 ある博士の発明品が伊達では無かったので、舞虎は押し付けられるのも悪くないと思ってしまう。
 電磁防護幕―――まるで漫画にでも出てくるバリアに似た装置は、博士の電動マジックによって類い稀なる防御力をSGたちに与えるのだ。
 ただ異常に金がかかる上に、博士が手作りで作っているが故に、その数は決して多くない。

 「一人で何でもできると思わない方がいい。グラウフォーゲル4、5!トドメを刺せ!」
 「ウィルコ!」
 「了解です!」

 つい先ほどと同じように、アンカーがWGの手足を絡め取った。
 グラウフォーゲル4とグラウフォーゲル5が、それぞれMG42とフリーガーファウストを携えてWGへ突っ込んでいく。
 WGは逃げようとするが、先ほどと同じようにワイヤーが体へと食い込む。

 「捕まえた!」
 「電流を流します!」

 高圧電流がワイヤーを伝って、WGの体へ流された。
 舞虎は勝利を確信する。

 <<うわあああああああああ!>>

 舞虎は悲鳴を上げる対戦車ライフルを構え、スコープの十字に彼女の頭を合わせた。
 グラウフォーゲル4とグラウフォーゲル5もまた、WGに狙いを定める。

 「こちらグラウフォーゲル1。終わりだ」

 冷め切った舞虎の言葉に対して、WGは熱気を含んだ叫びを上げる。
 高圧電流を流されながらも、まだ戦意は衰えていないらしい。

 <<言ったはずよ!戦いに百%など存在しないって!>>

 WGの体に光が―――マナが輝き、絡んだワイヤーを掴み取った。

 <<それで勝ったつもりかァ!>>

 電流が―――いや、WGの体からマナがワイヤーを伝わって、SG達へ逆流し始めた。
 ワイヤーを伝わったマナはアンカー射出部まで入り込み、トラブルを引き起こす。

 「アンカーが!」
 「グラウフォーゲル1より各員、アンカーをパージしろ!」
 「了解!」

 舞虎はすぐに、SGのアンカーを切り離させた。
 インカムで空中管制機を呼び出し、叫ぶ。
 自分はミスを犯したと、舞虎は自分を責めた。

 「ファルケシャンツェ!"缶切り"を呼んでくれ!」
 <<駄目だ。許可できない。敵は全戦線で攻勢に出た。グラウフォーゲル隊、今すぐ戦線に合流せよ>>
 
 空中管制機は苦々しい口ぶりで言った。
 
 「しかし!」
 <<これ以上は無理だ。救出部隊の損耗率が五十%を超えている>>
 「・・・了解。スモーク!」

 舞虎はSGたちに煙幕弾を発射させた後、WGが煙に包まれている間にブースターを吹かして後退させる。
 眉間に皺を寄せ、舞虎は苦渋の表情を浮かべた。
 
 「仕留めそこなったか・・・私のミスだな」
 「大尉、全員無事です!」
 「お前たち・・・」  

 部下たちは小さく敬礼する。
 その姿に、舞虎は救われたような気がした。
 
 「そうか。よし、戦域より離脱する!」

 舞虎は心の奥で、真の勝利とは何かと思い出す。
 一人も仲間を失わないで帰ること―――それこそが勝利だと。