シックス・シグマ」の語源となっているのは、統計学における標準偏差を意味するσである。6σの状態とは、ある製品組立工程の品質特性値が正規分布に従うと仮定するならば、6σの外に出る確率は、100万分の3.4である。すなわち、ある工程では100万個製品を組み立てて3.4個のばらつき(不良品)が生じる。「100万回作業を実施しても不良品の発生率を3.4回に抑える」ことへのスローガンとしてシックス・シグマという言葉は使われ、定着していった。
なお、シックス・シグマにおける6σは、本来の6σとは異なる数字である。正規分布に従う製品不良の発生状態において、管理幅を±6σとした場合、管理限界から外れる確率は10億分の2、すなわち0.002ppmである。シックス・シグマにおける6σは3.4ppmであり、その数値に差がある。通常の品質管理における管理幅は、±3σであり、管理限界から外れる確率は0.27%である。これを±6σまで拡張することは非常に労力を要するうえ、それに応じた成果を得るのは困難である。そこで、±6σよりも低い管理レベルで±6σに近い成果を得ることができるような管理方法が「シックス・シグマ」では提唱された。管理幅を±4.5σまで拡張し、更に正規分布の中心を1.5σシフトさせて片側の管理限界外を無視できるようにした。これにより、±4.5σの管理限界外の半分の値3.4ppmが「シックス・シグマ」における目標値とされるようになった。
シックス・シグマの活動のポイントは、ばらつきの抑制に主眼がおかれている。ばらつきが発生しているプロセスに着眼し、そのプロセスの平均値向上を試みるよりも、ばらつきを抑えることに力点を置いてコントロールしていく。平均値が向上しても、品質のばらつきが大きく品質不具合が発生してしまっては、品質不良が原因で発生する損失COPQ(Cost Of Poor Quality)を減らすことができない。品質のばらつきを小さく抑えることで後工程不具合流出を減らし、COPQを低く抑える。
シックス・シグマの実際の活動は、ブラックベルトという資格を有する人物が中心となって行う。このブラックベルトは、柔道の黒帯が語源となっている。ブラックベルトは専門の教育機関により認定される。ブラックベルトはシックス・シグマを遂行するにあたり中心となって推進する人物に授与される。ブラックベルトを補佐する資格として、グリーンベルトが存在する。
MAICとは、シックス・シグマにおける行動プロセスである。QCサークル活動などおけるPDCAサイクルを発展させたものであるが、大きな特徴はM(Measurement)、A(Analysis)という現状分析により大きな主眼をおいていることである。
MAICの意味は以下の通りである。下記プロセスを持続的に回し続ける。
シックス・シグマの手法は1980年代に、モトローラによって開発された。その開発に当たっては日本の製造業で活発に行われているQCサークル活動を参考にしたとされる。ボトムアップ型かつ暗黙知が支配的な日本のQCサークル活動を、トップダウンで行う手法として、また統計学手法を取り入れた定量的評価を中心とした手法として開発された。モトローラで考案されたシックス・シグマは、GEが経営全体のプロセス改革に適用して発展させていった。
1990年代後半になって日本にも紹介され、1999年に東芝はGEの手法に習い、さらに独自の改良を加えて全社的な適用を行っているほか、ソニーでも導入されている。東芝の手法は下記方法を行っている。
・DMAIC
・DFACE
Define(定義)、Measure(測定)、Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)のステップからなる経営変革手法。VOCをベースにして、事業活動を分析しデータドリブンでプロセスの改善を進めるもの。東芝は、シックスシグマ手法の提唱者であるマイケル・ハリー博士が創設したSix Sigma Academyから正規ライセンスを受けています。
Design for Six Sigma手法の東芝版。米国スタンフォード大学と共同で開発した東芝オリジナルの手法である。VOCを起点に、商品企画と製品開発プロセスを革新するもの。Define(定義)、Focus(現状認識)、Analyze(分析)、Create(設計)、Evaluate(確認)のステップからなる。
1998年から導入したシックスシグマ手法を用いた経営品質の向上を目的とした運動。
顧客第1の発想を基に顧客の声(VOC(Voice of Customer))を事業活動の出発点にする。 トップダウンアプローチで事業全体の最適化を図る。 組織を越えたプロジェクト活動を通して成果を達成する。 強力な運動推進体制を整備し、グループ全体で展開する の、四つの特徴を持っている。全体最適から掘り起こされた個々のプロジェクトを定着することで着実な成果を積み上げていくもの。当社はこのシックスシグマ手法を採用したプロジェクト課題の実施にあたり、業績向上施策や業績のビジュアル化と利益向上につながるフォロー体制といった仕組みを独自に構築した。東芝MIはこれらの仕組と二つの変革手法をMI運動をとおして経営変革手法として体系化したもの。
シックスシグマ six sigma / 6 sigma
各種の統計分析や品質管理手法を体系的に使用して、製品製造やサービス提供に関連するプロセス上の欠陥を識別・除去することにより、業務オペレーションのパフォーマンスを測定・改善する厳格で規律ある経営改善方法論。
シックスシグマは、もともとは1980年代初頭に米モトローラ(Motorola, Inc.)で生産プロセスを改善するために開発された手法で、多くを日本の製造メーカーなどで実施されていたTQC(total quality control:総合品質管理)に負っている。
品質管理のためには“ばらつき”をコントロールすることが欠かせないが、その方法であるSQC(statistical quality control:統計的品質管理)などの一般的な管理図では3シグマ法が使われている。シグマ(σ)とは、統計学用語で標準偏差(分散の平方根)のことで、分布の「ばらつき」を示す。3シグマ法は、品質のばらつきを標準偏差で測定し、正規分布の中心に平均からプラスマイナス3シグマを上限・下限管理限界として、管理限界の外に出た場合に対応を行うことで品質を維持しようというものだ。シックスシグマは、上限・下限管理限界に6シグマを使用することがその名の由来である。
シックスシグマの活動は、ブラックベルトと呼ばれるチームリーダーの下に行われる。「COPQ(cost of poor quality:製品やサービスの品質不良のために生じる無駄なコスト)」と「CTQ(critical to quality:経営品質に決定的な影響を与える数少ない要因)」を2つの指導原理として、特定の要因やプロセスなどをフローチャート化し、「MAIC」(Measurement/Analysis/Improvement/Control)というサイクルをまわすことで各プロセスをチェックし、欠陥が起こる部分を改善する作業を継続的に行っていく。
1990年代半ばには、GE(ゼネラル・エレックトリック)が、製造プロセスではなく経営活動中に存在するプロセス全般を対象に、顧客視点をベースに経営改革を実現する手段として導入し成果を上げたとされたことから、経営改革手法として一躍有名になった。
シックスシグマは日本的経営の研究から生まれてきたものといえるが、原則として米国企業の風土に合わせてトップダウンで進めるように設計されている点には注意が必要である。逆に日本企業の特質を踏まえた「日本版シックスシグマ」を提唱する向きもある。
なお、「Six Sigma」は米モトローラの登録商標となっている。
米国のモトローラが日本の品質管理(QC)をもとに編み出しGEが育てた経営改革手法、シックスシグマ。
米国の競争力委員会が日本企業の競争力を徹底的に調査。生産技術水準と製品品質の高さがその要因と結論付けられる。モトローラ社(米半導体大手企業)がボケベル事業で日本参入を試みるが、日本企業の生産技術力と製品品質の高さにより失敗。元モトローラ社のマイケル・ハリー博士が日本のTQCを研究し、「6σ活動」を開始。生産現場における品質改善活動として展開。
企業内研修センターであるモトローラ大学にて全社員に教育を行う。
ジャック・ウェルチ氏がCEOとして就任。業界トップになれる事業に集中する事業構造再編を実施。自身の方針と価値観を社内に浸透させるため、組織改革を実行。
ウェルチ氏の病気により経営に空白期間。この間、経営の意思決定が停滞。ウェルチ氏、問題解決を自ら行える人材を育成するため、シックスシグマ活動導入を決定。
シックスシグマ活動を「問題解決と経営リーダー育成を体系的に行う経営手法」として確立。