鉄拳2 / tekken2


  • ナムコ/namco
  • プレイステーション
  • 1995.12-1996.1
  • アレンジ製作

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  • プレイステーション版鉄拳でもお世話になった、新宿御苑近くのバズーガスタジオにてトラックダウンを行った。但し前回と決定的に違うのはエンジニアが細江さんだった事である。
    • しかも細江さんは48とSSLという業界標準セットでアシスタントエンジニアを従えての作業は初めてだった。この度胸に驚いた。
    • adatを使い始めたのがこの頃だった。機材をそのまま持ち込むよりはるかに効率が良かったが、バックアップを考えると膨大なビデオテープ(adatはSVHSにマルチトラックでデジタル録音していく)と格闘するのが辛かった。
      • 当初はadatを3台シンクさせて一度に24トラック流しこもうとしていたのだが、よくエラーが発生し作業中にテープを吐き出した。また、ジャムる(テープが異常に巻き込まれる等で使えなくなる)事も多かった。とはいえこういったトラブルには慣れているスタッフばかりだったので、「まったくしょうがねーなーこいつは」などと言いつつ回避方法を試行錯誤した。結果、1台ずつ、8トラックづつ収録するのが一番安全で確実ということになった。
  • Ring A Bell
    • キング曲アレンジ
    • この曲も80年代風、Frankie Goes To Hollywood風にまとめようと思った。ただ、鉄拳サウンドトラックで担当した野球場曲アレンジもそうだったように、習作の範疇を超えていない。
      • プリプロの段階であまり冴えないと感じていたので、何とかしてトラックダウンで良い感じにしようと細江さんにいろいろと試してもらったが、結局習作の範疇は超えられなかった。無理な相談をした事を今でも申し訳なく思っている。
  • Two Different Sides
    • フォレスト・ロウ曲アレンジ
    • この曲名の示す意味が、自分で付けておきながら思い出せない。スネアが2種類ある事からだったか?
    • アレンジ上参考にしたのは、ソロ名義とYMO名義の「千のナイフ」であるが、それにとらわれ過ぎず、余裕がある感じが良い。
    • 途中のシンセソロは当時一番活躍していたNord Lead。JD800以上に徹底的に使い倒していた。サウンド面は当然の事、ストーン調のモデュレーションホイールと、木製のピッチベンダーが大変気に入っていた。
      • ホイールのトルク感と、最大、最小値に持っていった時にコツンと当たる感じが大好きだった。
      • また、ピッチベンダーを揺らす事で書き込まれた「ビブラート」は非常に味があり、その他の製品のベンダーでは決して得られない。
    • この当時から、音色は同じでもそれを操作するインターフェースの違いが楽曲自体に影響を及ぼすのではないか、と思うようになった。
  • The Headshaker
    • 吉光曲アレンジ
    • 製作中から既に大変気に入っていた曲だが、今聴いてみると音色が多すぎて整理されていない点が惜しい。
    • 「和楽器を使ってみました」という楽曲だけには決してしたくなかった。高いレベルで昇華させる事を目指し、実現できた。
      • 尺八、琴、ストリングスは全てTrinity。ローランド系と相反する湿気を帯びた、甘い感じのコルグらしい音が大好きだった。尺八と琴に関してはピッチベンド、モデュレーションも含めかなり細かく打ち込んだ。
      • 和モノのパーカッション系はJV1080だったと思う。当時評判は高かったが、なぜかあまり好きになれなかった。これ以降も数えるほどしか使っていない。
    • 冒頭部、ビートの入らない静かな部分が非常に気に入っていたのだが、格闘ゲームに合わないと言う事で当時のサウンドディレクターに削られそうになり大モメになった。結果的に全く削られなかったのだが。
      • 曲調が合わない、という意見は理解できた。ただ、それまでラフチェックやTD時の立ち会い等をせずに、完パケた後に断りなくそうしようとしたやり方に腹がたった。その後、自分がディレクターになった際、ちょっとでも楽曲なり音なりに手を入れようとする場合には、製作者に前もって説明するよう心掛けた。その点では大変感謝している出来事である。。
      • またこの頃から、多くのゲーム製作者が持っていた「ゲームに合う曲、合わない曲」といた基準に疑問を持つようになった。
      • それから随分たって、ゼビウス開発者で有名な遠藤氏からこんな話しを聞いた。「ドルアーガのネーム入れの曲は小沢さんの新人研修曲だったんだよ。だけど、曲を聴いた多くのスタッフのコメントが、『こんな曲はゲームに合わない』って言っててね、それは違うなと思って、じゃあ俺がこの曲が合うゲームを作ってやる、と作り始めたとも言えるね、ドルアーガは」.....この話には何か勇気づけられるものがある。
    • サントラのインナーに書いた、「フロア向け、但し前半はチルアウト」という楽曲解説は凄まじく恥ずかしい。消し去りたい。

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