ダンシングアイ / Dancing Eyes


  • ナムコ/namco
  • 業務用ビデオゲーム
  • 1996.12
  • 楽曲制作

  • ヘルプで2曲、しかも内容に対し特にオーダーが無く、ゲーム自体は極めてアッパー。と、ノリノリでこなせそうな作業内容にみえたが、結果的にはその後のゲームサウンドクリエイトに対する考え方においてターニングポイントになった。
  • というのも、この頃から、ゲームに対してどう楽曲側から演出するかという意識が全く無い事に大変違和感を感じていた。例えば、このゲームは48面あるから、曲も当然48曲必要、というもはや仕様ともいえないような仕様や、作曲者の好きな、または得意な、楽な曲を作り当てていくというようなやり方に対して、ということだ。
    • このゲーム自体のテイストから、そんな楽曲演出など必要ないという意見もあるだろうが、これはそれ以前の問題で、「このゲームの楽曲はコンセプトがない事がコンセプト」といった認識も無く、自動的に作っていくようなやり方であり、そのやり方が生理的に受け付けなくなってきた。
    • また、曲数も多いし、なんかスケジュールが間に合わなくなってきたから、空いてる人もいる事だしなんとなくヘルプ(スタッフ)を増やしていこう、という当時蔓延しつつあったやり方にも全く納得がいかなかった。そこにはスタッフのマネージメントという意味でも、演出的にも、なんの意識も感じられないという、前述した件と全く同じ理由によるものだからである。
  • とはいえ、一度請け負ったものであるし、なんとか面白みをいれようとした。
    • 「昔のナムコゲームの曲は良かった」とは、よく言われ続け、また、自分もそう感じていたのだが、その「昔」のテイストを今(製作当時)表現するとしたら、というコンセプトを設定した。ゲームシステム自体に古き良きアクションパズルのテイストがあり、そこからの発想だった。音色数と最大同時発音数を数音に限定させて作っていった。
    • また、昔のゲームによくみられた、楽曲とゲーム自体のインタラクティブ感を出したかった。最初は自機(?)が動くと曲がスタートし、自機が止まると曲が止まる、というディグダグ風な事を考えたが、さすがに1面のみにその特別仕様を追加する事はプログラム作業の優先度的に難しかった。とはいえ、なにかしら仕掛けておきたいと思っていたので、自機が右に動くと楽曲全体が右方向にオートパン(右から左へと音が流れ続ける)、自機が左に動くと左にオートパン、というギミックをうめこんだ。苦肉の策だったが、実際にゲームをしながら聞いてみると意外と気持ち良かった。ただ、あまり一般の人には伝わらない仕掛けではあった。
  • 納得のいかない体制の中での楽曲製作は、途中から精神的に非常に辛くなっていったが、なんとか作り上げた。そして、うすうす感じていた、自分はゲームの楽曲に対する無意識を非常に嫌う、という事を確信する事ができた。そういう意味でこのヘルプを担当した事は貴重であった。
  • ちなみにゲーム自体は大変気に入っている。今でも、このゲームの家庭用移植を待ち望んでいる。もしその際は是非、開発中の傑作な仮タイトルでリリースして欲しいと思う。

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