人物紹介 / 左慈


左慈

今回は群雄所属であるが、過去の作品では魏に属していた事もあった。
これは演義に出てくる左慈と正史に出てくる左慈の立ち位置の違いで、
今作のカードテキストにある通り、曹操の元にふらりと現れ、
仙人になりたければ劉備に天下を譲れと勧めたり、曹操に斬首刑にされかける左慈は
演義ベースの左慈であり、これだと群雄所属が妥当である。怪しげな術に振り回され、これ以降曹操は病を発し寝込んでしまう。

正史に出てくる左慈はと言うと、巷で有名であった方士(占いや医術、祈祷などを行う人のこと)で、
有能な人材が大好きな曹操に興味を持たれ、招聘される。
宴席に左慈も招かれ、曹操が冗談で松江(現在の上海近くの川、孫権領)の珍魚が食べたいと言ったところ、
左慈は水を張っただけのお盆から、その魚を釣り上げて見せた。
曹操が蜀の生姜も食べたいと言うと、左慈はちょっと出掛けると蜀でしか取れない生姜を持って帰って来た。
「たまたまその辺りの店で見付けたのではないだろうか。本当にすぐに蜀に行き来出来るのであれば、
以前蜀に反物の買い付けに出した使者に、追加でもう少し買うよう伝えてくれ。」と曹操が言うと、
後日、使者が左慈に言い付けた通りの量の反物を持って蜀から帰って来た。使者は左慈に会って曹操からの伝言を聞いたと言う。
これら左慈の不可思議な術に、曹操は大いに喜んだ。

別の日、曹操は100人程度の供を連れて出掛けるが、左慈が部下たちにお酒と干し肉をふるまい喜ばせた。
曹操はどこが出所なのか怪しみ、調べさせたところ、酒蔵から酒と干し肉が全部無くなっていた。
さすがの曹操もこれには怒り、左慈を捕まえようとすると、左慈は壁の中に消えた。
市場にいるとの目撃情報があったので行ってみると、町の人間が全員左慈の顔であった。
今度は山にいるとの情報があったので行ってみると、左慈は羊の群れに紛れ込んでしまった。
「殺すつもりではない。術を試したかっただけだ。」と伝えると、一匹の羊が立ち上がって人間の言葉を話し始めた。
その羊を捕まえようとすると、他の羊達も立ち上がって喋り始めたので、結局左慈は捕まらなかった。

これであれば、左慈は曹操に招聘された客の一人でしかなく、曹操も左慈をそれほど敵視した訳でもなく、
左慈自身も招いてくれた礼はしようとしており、魏軍所属も頷ける。
もう一度確認の為に記すが、後半のエピソードは、演義でなく正史の記述である。

仙人や妖術使いの類は実在を疑われる事が多いが、左慈は正史以外にも曹丕や曹植の残した記述にも名前が確認され、
怪しいエピソードの真偽はともかくとして、ほぼ実在の人物とみて間違いなさそうである。
なお、その曹丕も曹植も、揃って左慈は300歳と記している。

因みに芥川龍之介の「杜子春」で、主人公の杜子春の前に現れる鉄冠子は左慈の号であるという(※但し演義では左慈の号は
「烏角先生」であり、全くの御門違いに思われるが、北宋代の詩人である蘇軾の詩や明代の怪奇小説集である「剪燈新話」では
左慈は「鉄冠道人」という別名で登場しており、芥川はそこをモチーフにして「鉄冠子」という名前を号として付けたと思われる。)。