主人の使いで都へ末広がりを買い求めにいった家来の太郎冠者は、それが扇の一種であることを知らなかったため、詐欺師にだまされて古傘を買ってしまう。そのとき、主人の機嫌を直すという囃子物も教わり帰宅すると、やはり主人に叱られる。太郎冠者は教わった囃子物をそっと始める。「傘をさすなる春日山・・・」とくりかえし囃すうちに主人の機嫌も直って、やがて主従ともどもそれに打ち興じる、というあらすじ。滑稽味と祝言性の両面を巧みにそなえた曲といえよう。とくに祝言性のめでたい雰囲気は、囃子物とそれに続く笛の<シャギリ>(曲の終り)でより強調されている。囃子物の謡は、旋律としてはツヨ吟で、一部にイロ詞が入る。リズムとしては、狂言ノリ(大蔵流はその変形)を主体とし、足拍子が踏まれる。囃子方が三ツ地を打ってアシラう場合がある。