セッションログ(第拾弐話〜第拾参話)

第拾弐話「アイドルを捜せ!!」

はい、舞ちゃんに投げたバトンタッチを投げ返された修善寺歩です。
諸事情(次回セッション準備)により、再度私が書く事になりました。
総括で〆たはずなのに、また出てくるのは何か恥ずかしいものを感じますね^^;
先ほど冥府から明美が「私が書くぅ〜>w</」と騒ぎ出しましたけど、最後故にちゃんと〆ないといけないので却下しました。
あの子が書くと緊張感がない内容になりそうなので:_-)

さて、いよいよ最終戦に向けて状況が悪化の一途を辿る中、私たちもウィザードとして,そして子供として最後の時を向かえようとしています。
各自大人への階段を上り、それぞれの道を歩んでいこうとしています。
第拾弐話は、その主となる内容となります。
※ ログ内の()は思った事、括弧なしが通常の内容。

[登場人物]
 PC       : 柄楠狩刃(PC1),三田舞(PC2), 修善寺歩(PC3)
 NPC(イノセント) : [堀越学園 ] 石原弘三,空寝遊, 石原弘美
          [中野の住人] 主治医,曹荘の大家
 NPC(ウィザード) : [印具堂  ] 閻魔ふたつ,犬神明
          [その他  ] シンシア
 NPC(妖怪)    : [六葉社  ] カラス天狗「かぁ爺」, 化狐「おこんさん」, 化狸「たぬきち」, 河童「くぅ」
          [仲魔   ] 怪異「B29」,屍鬼「ゾンビアーミーx7」,妖怪「泥田坊」
          [フリー  ] 怪異「初音ミク」,魔人「ピーターパン」
          [敵    ] 魔王「バックベアード」,妖虫「妖怪蝗」

[一日目:朝(病院)]
私は午前中の授業を休み、病院で診察を受けていました。
あれから父は家に殆んどいなくなり、家には母のみが家事とさだめさんの世話をしていました。
何をしているかは聞いていませんけど、私も日を追う毎に発作の頻度が多くなり始めたため、今日は臨時に検診を受ける事になったのです。
心配してか、おこんさんとたぬきちがついてきていました。
(もう、別に心配しなくてもいいのに…。)
冥府の入り口が塞がった事により、主治医を含む大人達には再び妖が見えなくなっていました。
ですが、何か保護者についてきてもらっているみたいで、恥ずかしかったのよね^^;

主治医の話では、私の病状は以前に更に悪化しており、本来であれば今すぐ入院してほしい、との事です。
確かにここ最近の妖との戦いくらいから、体が重くなり始め、発作が酷い時には咳に血が混じっている状態にまでなっていたのです。
手術の成功率は七割,成功すれば寿命はかなり延びるとのことですが、肝心の「どれくらい延びるの?」という質問には答えてくれませんでした。
特定疾患にも入っている私の病気は、まだ治療法が模索状態のため、まだまだ未知の部分が多いのは知っていました。
つまり、現状の医学ではわからないのです。
でも少しでも延びるなら、と手術のために奔走する両親の想いが届く事を信じるしかないのです。

今は出来る事をするしかない。
バックベアードを倒して明美の仇を取る。
それまでは皆には悪いけど、私の命を削って妖と戦う事を許してね。
そう思い診療室を出た私は、おこんさんとたぬきちに学園に行く事を伝えて別れました。
髪型は、うなじが隠れるくらいのショートカット。
服装は、男子の制服。
(こんな格好で学園行くのは久しいわね。)
ズボンだから何か足回りに違和感があるのよね。
あ、言葉遣いも気をつけなくちゃ。
もう入れ替わりごっこは終りにしたのですものね。
皆なんて言うのかしら、ちょっとそれが心配…。

[一日目:朝(堀越学園)]
一方、学園では話題は学園祭で持ちきり、各クラスや部活はその準備で学業なぞそっちのけな状態でした。
そんな中、舞ちゃんと柄楠君に石原君がバンドの準備について話していました。
唄も決まっており、衣装も準備中との事ですがかなりの色物ばかりだったそうです。
(メイド服,看護婦,スクール水着って先生許可してくれなさそうなものも混じっている…。)
閻魔さんと犬神君もバンドの要員として石原君は誘いましたが、犬神君は拒否、閻魔さんだけの出場とのことです。
ただ、学園祭の日程と準備の関係でバンド要員は、クラス主催の喫茶には出れないとの事でした。
そのかわりバンドに専念する事になりそうです。
そして、その構成ですが…。
・ボーカル:三田舞,修善寺歩
・ギター :柄楠狩刃
・ベース :閻魔ふたつ
・ドラム :空寝遊
(私がボーカル?唄得意じゃないのよ、私…。)
石原君の話では、学園内でも最上位級の容姿をもつ舞ちゃんと私をボーカルに添えたい、との事でした。
初めて聞いたお話ですけど、男子の間では舞ちゃんと私はそういう扱いだそうです。
(色々罪悪感感じるけど、私ってやっぱり男には見えないのね…。)

学園祭のお話をしていると、閻魔さんが遅れて登校してきましたが、何かあったようで意気消沈した様子でした。
どうやら閻魔さんの力がなくなったとの事なのです。
犬神君も同様だったらしいのですが、既に割り切っていました。
印具堂の師匠達は、18歳くらいになると力が消える事をちゃんと説明していなかったらしく閻魔さんの落ち込みようは凄いものでした。
選ばれた存在という自分の存在意義を喪失した、という事のようです。
舞ちゃんと柄楠君が何か色々励まし?な言葉をかけて何とか持ち直したようですが…。
聞いたお話では、ファッションデザイナーを目指す事になったとか。

それはいいとしても、最後の戦いの前に頼れる仲間が減った事を意味します。
そして、力を失うという事は、私達にとっても他人事ではないのです。
それまで私達の力は持つのか、それがやりとりについて聞いた時の一番心配でした。

そして、次は遊ちゃんが騒ぎ出しました。
なんでも自分のブログがウィルスに侵されてしまった、との事。
それを二人は見たそうなのですが、内容は「真夜中と子供達」。
なんと私達の戦いを携帯画像に取り、それを公開していたのです。
顔についてはモザイクが入っていますけど、無断で私達の戦いを掲載していた事は問題です。
当然お仕置きが待っています。
二度とやらないよう舞ちゃんにきつく叱られたそうです。
(間に受ける人はまずいないと思うけど、この子の好奇心は別な意味で凄いわね^^;)

[一日目:昼(堀越学園)]
学園に登校した私は、一つ深呼吸してクラスに入りました。
今まで女子の格好で暮らしていたので、髪を切って男子の制服で登校したのはほぼ初めてでした。
案の定、私を誰も認識しれくれず転入生扱いでした。
(舞ちゃん、柄楠君わざとでしょ?)
最初は他のクラスメイトからもどうしたのか、と問われましたけど適当にはぐらかしておきました。
流石に「妹の死を見届けたから」とは言えませんから…。
ただ、どうしても言葉遣いは意識している間は問題ないのですけど、油断すると元に戻っていたのよね。
これは治るの結構かかりそうね…。

私は、舞ちゃんと柄楠君に放課後の約束を取り付けて、石原君と学園祭についての段取りを確認しました。
きっちり謝っておかないといけない、と心に決めていたから。
あとは、学園祭の衣装に男子用のかっこいいのがなかったのが気になりました。
石原君にないのか確認したのですが、期待できなさそうな返答でした。
(学園祭だし、もうこれは派手にいこうかしら?)
別な意味で諦めがつきました。

そして放課後、私は舞ちゃんと柄楠君を前に深々と頭を下げ謝りました。
沙耶ちゃんの事、今まで迷惑をかけてきた事、罪状は数え切れないでしょう。
私と明美が生きてきた事そのものが罪とも言えるのですから。
二人は最初色々戸惑ったようですが、私の謝罪を受け入れてくれました。
正直、怖かったのです、受け入れてくれるかどうか。
今まで犯してきた罪を考えれば、どのような扱いとなっても文句は言えない、とは思っていても今まで一緒に戦ってきた仲間から見放される事に。
それ故に二人が受け入れてくれた事は嬉しかったのです。
でも、わかっています。
これが贖罪の始まりなのだということ、喜んでいる場合ではないのです。

そのやり取りの最中、シンシアさんが私達の前に現れたのです。
その傍らにピーターパンを連れて。
(どういうつもり、敵をここに連れてくるなんて?)
構える私をシンシアさんは制止し、連れてきた理由を説明し始めました。
ピーターパンの説明では、
 ・世界中の子供達と妖を上空まで上げて、バックベアードを倒す。
 ・飛行能力は、ティンカーベルの力で子供達や妖を一時的に飛ばせるようにする。
という作戦を検討しているそうです。。
そして、そのためには妖怪蝗を排除しなければならず、それが懸案事項だそうです。
シンシアさんは難色を示していましたが、これ以外に思いつく手立てがないのでしょう、渋々了承という表情をしていました。
それもそのはず、バックベアードが取り憑いている衛星が一番低高度の位置来ても120Kmもあり、狙撃される危険性が高い事です。
そこは数で押す算段のようですけど、力押しが通じる相手とは私も思えなかったのです。
私達のところに来たのは、作戦の協力と妖怪蝗の対応についての相談だったのです。

あの妖怪蝗は、西洋の伝承では太陽の神アポロンが堕ちた姿「アバドン」ではないかとの事でした。
そこで、藤原さんから舞ちゃんは天の岩戸の伝承を妖怪蝗に対して使える話を聞いていたらしく、天の岩戸の伝承をなぞる事を提案してきたのです。
(つまり、妖怪蝗を岩戸と見立て、伝承をなぞって開けよう、ということね。)
アポロンは唄が好きらしく、伝承をなぞれば学園祭に妖怪蝗をひきつけれるというものです。
祭りの儀式は、この学園祭で私達がライブを行う予定のため、その時間に合わせて作戦を決行する事になりました。
ですが、儀式には唄と踊りが上手い娘が必要となります。
私達はそこまでの技量はないため、それを探す必要があったため、その歌い手を探す事になりました。
でも、そう簡単に見つかるのかしら、それが心配だったのです。

[一日目:夜(堀越学園)]
明日から歌い手を探さないといけないため、今日は早めに私達は帰宅する事にしました。
私は、舞ちゃんと柄楠君とは学園前から帰り道が異なるため、一人で帰りました。
どうやらもう片方、住宅街側の舞ちゃんと柄楠君が歩く道で事が起こったようです。

舞ちゃんと柄楠君は帰り道に、学校から流れる妖気が混じる歌声を確認したのです。
二人の帰り道は、学園を側面に沿う形となるため聴こえたのでしょう。
私はこの時既に学園から離れた道を歩いていたため、気づかなかったのです。
その歌声は、若干機械音のような感じが残ってはいましたが、歌声は確かに上手かったそうです。
二人は、即座に学園に戻り、歌声が流れている視聴覚室に飛び込みます。
そこには、モニターが全て電源がついており、部屋の端に緑色のツインテールの少女が立っていたのです。
「初音ミク」
最近ボーカロイドとして人気が出ている電脳世界で唄う人工の歌姫。
妖怪というのは人の想いによって生まれるものなので、このような現代の妖は出現しても不思議ではありません。
(でも、他の妖とは違って何か違和感を感じるわね…。)
彼女の話では、三次元で皆の前で歌いたい、という人の想いによって具現化したとの事。
それと電脳世界でも、ウィルス「アバドン」が蔓延しているらしく、他の仲間は既にやられて自分だけ何とか逃げてきたそうです。
そして、舞ちゃんに三次元で唄うために体を貸してほしい、と迫ってきたのです。
舞ちゃんはあっさり了承して体を貸してしまいました。
このことを私が聞いた時、どうして簡単に貸したのか聞いたのですが、答えは「もう慣れた」だそうです。
慣れって怖いですね…。
学園祭で唄う事を約束し、それまで力を貸す事となったのです。
これで儀式での歌い手は揃ったのです。

[一週間の間]
学園祭まであと一週間、私達はバンドの練習を始めました。
舞ちゃんの唄が凄く上手く、隣で一緒に歌う私とは比べ物になりませんでした。
(これ絶対比べられるわよ…。)
苦笑する私とは対照的に楽しそうに歌う舞ちゃんを見ていて、ライブは上手くいきそうと思っていました。
後で初音ミクの件について聞いて、儀式の問題は解決した事を知りました。
最後の思い出となるこの学園祭が上手くいきますように、私はそれをただ願い、そして自分も頑張ろうと思いました。

初音ミクが舞ちゃんに乗り移っている間、彼女の生活は歌と隣り合わせになっていたようです。
妖の副作用として、何か唄えそうなものが流れると唄ってしまう習性があるのです。
舞ちゃんも力を貸してもらうという立場もあって、容認しているそうです。
ちょっと人目についていたのですが、私が注意しても聞いてくれません。
(確かに今までの私の行いよりはいいのかな…。)

そんなちょっとしたトラブルもありましたが、練習は順調に捗り本番を迎える事となったのです。

[学園祭当日:昼(堀越学園)]
学園祭当日、クラスでは以前耕した畑から取れた野菜を用いて、喫茶をやっていました。
男子はメイド服,女子は執事という逆転した濃い空間で色々作っていたのです。
折角なので師匠達も来ており、楽しそうに色々な催しを見ていました。
クラスの喫茶でカレーを作っていたのでお昼ご飯として食べたのですけど…。
(あれ?カレーに大根と茄子が入ってる…。)
作ったのは女子なのですがおいしそうに食べてます。
何か色々間違っているような気もしますけど、学園祭だしいいのかな?
ちなみに、かぁ爺はちょっと食べて顔色を変え、くぅは顔色を変えて気を失い、たぬきちはどれもおいしそうに食べてました。

壁には畑の経緯などを書いたボードや写真があったのですが…。
その写真には、畑の一件に関わった曹荘の大家やB29,ゾンビアーミー,泥田坊が写っていました。
ですが、写真に写る妖達が閻魔さんには見えなかったのです。
こういう写真などの映像においても力がないと見えないようなのです。
最近、舞ちゃんや柄楠君も一瞬とはいえ、かぁ爺達が見えなくなったと言っていました。
印具堂の二人は力を既に失い、舞ちゃんと柄楠君も力を失いつつあるのです。
みんな、大人への階段を昇り始めているのです。
私も近いうちに昇り始め力を失うでしょう。
その時かぁ爺達とはもう会えないと思うと切ないものを感じました。
今、私だけがはっきり見えているのは、恐らく死期が近いから、なのかな?
そして、ライブまであと数時間、天の岩戸の伝承をなぞり世界中の子供達と妖の反撃が始まるのです。

[学園祭当日:夜(堀越学園)]
いよいよ学園祭のメインイベントであるライブが、体育館を舞台に始まろうとしてました。
出場クラスは3チームで、私達はなんと最後なのです。
前の2チームもやはり出場するだけあってレベルが高く、私は本当に大丈夫なのか心配になっていました。
(私達のライブが成功しないと、天の岩戸の儀式が失敗という事になるから、気を引き締めないとね。)
構成は前述の通りなのですが、各衣装は結局以下ののようになりました。
・三田舞  :初音ミク
・修善寺歩 :メイド服
・柄楠狩刃 :海パンのみ
・閻魔ふたつ:ミニスカ着物
・空寝遊  :?(そういえば確認していなかったわね)
私、看護婦とかそんな偏ったものだけは嫌でしたので、強引にメイド服にしてもらったのよね。
最後の学園でのイベントなので、申し訳ないのですけど…。
盛大に女の子やりますね♪
(さて、明美から借りた髪留めをつけたし、指輪もしたし、化粧も薄めに、これでよしっと。)
私の衣装は、巷で流行のメイド服らしく、紫と緑がメインのフリルがいっぱいでちょっとスカートが短め(膝見えてるし)。
私は露出が多いのは好きではないので、膝まであるタイツで生足は回避済。
(でも、これ太ももはスカートとの間でちょっと見えてるのよね…。確か「絶対領域」とかいったかしら?)
病気のせいとはいえ、足の綺麗さは女の子には負けないのよね。
こんな事に自信が持てる私はもう末期ね…。
そんな自分に苦笑している間に本番が迫ってきたのです。

石原君のいらない配慮で、最後の締めとなっているらしく、メンバーが順番に登場というまるで主役な演出まで用意されていました。
順番は、「空寝遊>閻魔ふたつ>柄楠狩刃>修善寺歩>三田舞」だそうです。
遊ちゃん,閻魔さんと順番にまず登場、盛大な歓声が巻き起こります。
(遊ちゃんも閻魔さんも以前から人気が結構高いって聞いてたけど本当だったのね。)
私達のクラスって女の子のレベルが他のクラスより群を抜いて高かったらしいです。
続いて柄楠君が登場、別な意味で盛大な歓声がどっと沸き起こります。
(まぁ、完全にネタよね、あれ…。)
品のないパフォーマンスを繰り出して主に男子の人気を集めています。
そして、ついに私の出番。
(さて楽しみますか♪)
登場すると、遊ちゃんや閻魔さんの時より大きい歓声が沸き起こります。
私はどっち(性別)に見られているのかな?と思っていたのですが、石原君曰く「殆んどの人は女子だと思ってる。」だそうです。
声変わりもしていなく、しかも背が低い事もあって、声も女子と同じですものね…^^;
精一杯の笑顔で歓声に答えます。
気になったのは、男子の歓声も大きかったのですけど、それ以上に女子の方が大きかった事です。
女子の間では既に私が男だって事が広まりつつあるらしく、逆に人気があるとかなんとか。
確かにこの年で女装して見分けがつかない男なんてそういませんものね。
我に変えると不思議な気持ちです。
そして、舞ちゃんの登場。
妖に合わせた衣装で主役である事を盛大にアピールしていました。
主役という順番という事もあり、歓声は最も上がっていました。
(こういう時ってちょっと嫉妬した方がいいのかな?)
私は一体何を考えているのでしょうね…w

メンバが揃ったところで曲「真夜中と子供達」を熱唱開始。
見ているクラスの皆から後で聞いたのですけど、私は舞ちゃんに劣らず可愛かったよ、と嬉しい言葉を頂きました。
ですが、主役である舞ちゃんや私より際立って目立ったのは、柄楠君だったのです。
あの品のないパフォーマンスに加えて演奏が凄い上手かったのです。
(柄楠君、こんな才能もあったのね…。)
そして、その時歌声や歓声とは違う、羽音のような音が聞こえてきたのです。
妖怪蝗が柄楠君の演奏に惹かれて来たのです。
その虫たちは柄楠君の目の前に集まり、人の形を模りその姿を現したのです。
生徒達の中では、見える人と見えない人がいるらしく、見える人達には何か演出と思ったのでしょう、更なる歓声を上げていました。
私は既にこの体育館全体が月匣に包まれている事に気づいていました。
これがシンシアさんが言っていた太陽の神「アポロン」の成れの果ての姿、私達は皆の前でこれと戦う事になりそうです。
外の夜空をふと横目に見ると、流れ星が空に舞い上がるような光の筋が見えたのです。
妖怪蝗がこちらにひきつけられた事により、バックベアードが取り憑く衛星が露になったのを合図に、ピーターパンが率いる妖と子供達が攻勢に出たのです。
作戦が開始された事を意味します。
(メイド服と初音ミクな衣装のアイドル(?)が、夜空に舞い上がる星達を背に唄いながら激しく舞うのね、確かに最高の演出ね。)
柄楠君は、そのアポロンの姿にギターを叩きつけ、学園祭という名の宴における最大の演出の幕を開けたのです。

舞ちゃんの拳と柄楠君の剣技は、妖怪蝗を一掃する勢いで振るわれます。
その中で本体であろう白い妖怪蝗が姿を現し、他の妖怪蝗に紛れながら私達を魔法で攻撃してきます。
数がいるだけに一つ一つの魔法の威力はそれほどではないにしても、十分な脅威です。
ですが、私が相手だったことを後悔するのね。
探索魔法で一瞬で見破り、本体に隠れる隙を与えません。
あとは舞ちゃんと柄楠君の攻撃で押し切り、私の魔法でアポロンは葬られたのです。
一応、調伏という扱いにはなるようですけど「周囲を明るくする能力」ってどんな場面で使えるのかしら?
(そういえば、私ってメイド服で手には杖(ホワイトロッド)で魔法詠唱したのよね。どこの魔法少女?^^;)
今にして思えば、何か違う世界の妖気を漂わせる方々に絶賛されるような格好と演出をしてたのね、私。
学園祭が終ってから後ろに視線を感じるようになった理由は、言うまでもありませんでした。

アポロンとの戦いを唄と共に終え、生徒達には最高の演出と成り得たようで、盛り上がりは最高潮を迎えたのです。
ステージを下りた私達を石原先生が出迎えてくれました。
その目には嬉し涙を浮かべて。
三年生が始まった当初、舞ちゃんは妄想語を連発、柄楠君は勉強する気配すらなく、私は女装姿で、先生は三人を一番心配だったそうです。
それがこんなにもやる気を見せて学園祭に望む姿を見て嬉しかったそうです。

そんな二人と先生のやり取りをちょっと遠めに私は見ていました。
舞ちゃんは、既に将来の夢を現実的な思いで探している。
柄楠君は、芽衣ちゃんと同じ大学を目指すべく勉強を始めている。
それに比べて私は…。
(愛する者を失い、夢も絶たれ、この先長く生きられるかもわからない、二人とは対称的ね、私…。)
明美の死を受け入れて普段の生活での女装を止めたとはいえ、不治の病と闘うため大学への進学を諦めざるを得なくなっている。
将来の夢だった神主への道は、六葉社も手術台に当てるため売られる事が決まった事により絶たれている。
両親の想いだけでは足りないとは思ってはいないの。
だけど、最後の戦いを終えた時、私には何が残っているのかな?
成長した二人の姿に嬉しさを感じつつも、物悲しさと嫉妬めいた気持ちが私の中で湧き上がっていました。

そんな気持ちを紛らわそうと視線を夜空に向けた時、私は驚愕の景色を目にするのです。

第拾参話「奴はそこにいる」

第拾参話は、いよいよ最終決戦となります。
私達は最後の力を振り絞って魔王「バックベアード」と正面から戦いを挑みます。
そして、この戦いを最後に力を失う事になります。
元凶にして最大の敵を前に、私達は最後の勇姿をご覧頂きたく。
※ ログ内の()は思った事、括弧なしが通常の内容。

[登場人物]
 PC       : 柄楠狩刃(PC1),三田舞(PC2), 修善寺歩(PC3)
 NPC(イノセント) : [中野の住人] 柄楠沙耶,柄楠の叔父,三田の父,修善寺の母,藤原一片
 NPC(ウィザード) : [その他  ] シンシア
 NPC(妖怪)    : [六葉社  ] カラス天狗「かぁ爺」, 化狐「おこんさん」, 化狸「たぬきち」, 河童「くぅ」, 鬼「青にぃ」, 化け猫「どら」
          [仲魔   ] 怪異「エリーさん」,妖怪「いつまで」怪異「B29」,屍鬼「ゾンビアーミーx7」,妖怪「泥田坊」
                 妖精「コロボックル」,魔王「クトゥルー 」,妖魔「疱瘡神」
          [フリー  ] 魔人「ピーターパン」,怪異「フック船長」
          [敵    ] 魔王「バックベアード」

[一日目:夜(堀越学園)]
学園祭の締めであるライブを終え、窓から夜空を見上げた私の目に信じられない光景が映っていました。
バックベアードを倒すために飛んでいたピーターパン率いる妖と子供達が、空から撃ってくる光によって次々と打ち落とされていったのです。
衛星に到達するまでの間にかなりの数が迎撃される事は、当初より想定していたことではありました。
しかし、その迎撃能力がこちらの予想を上回り、上空に展開していた味方はその全てが打ち落とされたのです。
学園周辺では、阿鼻叫喚の光景に変わり果てていました。
既に事切れた同じ年頃の少女だったはずの屍、既に原型を留めていない妖の一部など、その光の威力を物語る凄惨な状況だったのです。
私の様子に気づいた舞ちゃんや柄楠君も窓に近づき、その光景に驚いていました。
作戦は完全に失敗したのです。

そんな私達の前にシンシアさんが現れたのです。
作戦の失敗を告げるため、そして次の手を打つための相談をするために。
シンシアさん曰く、バックベアードは抵抗する者たちの迎撃を完了し、次のステップに移ろうとしている、と。
そのステップとは、「太陽を食らい世界から光を奪う事」だそうです。
そして、その言葉の意味をすぐに私達は知ることとなりました。
シンシアさんの携帯に何処かの組織からでしょう、連絡があり、
「上空の全ての人工衛星の起動が地球への落下コースに変更されている。」
との事でした。
その軌道は、大気圏で燃え尽きないようなルートを取っており、各衛星の落下地点は全て世界中の都市に向けられていたのです。
恐らく、バックベアードが操るグレムリンによるものでしょう。
この東京にも落下するように軌道が制御されている衛星があり、かつここには複数向けられているとの事でした。
このままでは、世界が滅びる事を意味します。
舞ちゃんも柄楠君、そして私も守りたい人達がいる、そんな事を絶対にさせないために、決意を改めて固めたのです。

今回の作戦により判明した事は以下の通りです。
・レーザーの威力は、並のウィザードであれば一撃で死亡する威力
・レーザーの発射間隔は、5分毎だった
・衛星は高度120Kmの地点を依然として飛行中
仮に時速20K(自転車で走るくらいの速度)で上昇したとしても6時間かかり、レーザーは60発撃たれる計算となります。
(飛行魔法で飛ぶと上記くらいの速度のため、今回の作戦での飛行手段は、結果として速度不足だった事がわかります)
同じ手段で衛星に向かおうとすると、かなりの数のレーザーを防ぐ必要があり、流石に柄楠君でも無理があります。
どうやら別な手段を考えた方がよさそうです。

舞ちゃんも同意見だったらしく、別な手がないか藤原さんに電話したところ、藤原さんは既に手を打っていたのです。
自衛隊にいる柄楠君の叔父さんと知り合いらしく、高度110Kmまで上昇可能な試作機を準備しているとの事。
(なんだか藤原さんと柄楠君の叔父さんがかっこいいわね。これがいい大人っていうのかしら?)
試作機は二人乗りのため、柄楠君の叔父さんが操縦、藤原さんがサポートのため助手席に乗るため私達が乗る空間はないそうです。
そこで、試作機で最大高度まで上昇、鳥居のマークを機体につけておこんさんの力で転送できないか?と舞ちゃんは提案してきました。
おこんさんは、何とかなると言ってくれています。
私達が上空に上がる時はそれを使おうという事になりましたけど、残り10Kmをどうするか?が問題でした。

その時、いい頃合にフック船長が現れたのです。
なんでも作戦に失敗したピーターパンを笑おうと思って来たらしいのですが…。
舞ちゃんと柄楠君は、フック船長を脅して船に乗せて上記作戦に参加するよう迫ります。
フック船長は意外にも快く承諾してくれました。
子供は嫌いだが私達は嫌いではない、だそうです。
(彼らから見ても、もう私達は大人に見えているのかな?)
そんな実感もなく自信もない私でしたが、協力してくれる事に素直に感謝を述べ作戦の詰めに戻ります。
上空120Kmといえば既に空気はないで、そこは月匣を身にまとって戦うようシンシアさんより助言を頂き、問題は解決。
ただ、流石にレーザーを一発は受ける事になるので、そこは柄楠君に船首で防いで頂きましょう。
かぁ爺達も自分の船を用意して支援に向かうと行きこんでいましたが、速度は40K出ないそうです。
恐らく上昇中に決着がついているでしょうね。
気持ちだけで十分です、ありがとうね。

作戦が決まり、あとは準備のみ。
そこで藤原さんが私達にこう言ったのです。
「作戦の失敗によってバックベアードと戦えるのは君達三人しかいない。世界の命運を君達に託す、頼んだぞ。」
そんな大きな事を託されるような勇者では、私はないのですけどね^^;
不謹慎ながら、舞ちゃんにとっては最高のステージが用意されちゃっているわね。
これでバックベアードを倒せば、本物の勇者って事だけど…。
わかっているのです、舞ちゃんはもう中ニ病を卒業しているって。

私にとってすれば、明美の仇さえ取れればそれでいい、そのはずだったの。
でも、何故かな?
本来なら私から明美を奪った憎悪と復讐の炎が私の中に燃え広がる事を想定していたのですけど…。
その気持ちがないとは言いません、バックベアードは確かに憎いです。
あの魔王さえいなければ、明美は死なずに済み、今も一緒に暮らしていたはずなのですから。
ですけど、いざ対峙してみて気づいたのですけど、我を忘れるほど湧き上がってはこないのです。
それ以上に思う事は、
「お父さんとお母さん、そしてお婆ちゃん。クラスのみんな、私の周りにいる人たちを守りたい。」
という事。
復讐の炎を抑え、今生きている、私を想ってくれている人達を守りたいと思ってる自分がいるのです。
(明美、仇はちゃんと取るよ。だから、守りたい人を守るために一緒に戦って。)
私は想いを指輪に託し、夜空に禍禍しく輝く魔王を見上げていました。
「最後にして最も厳しい戦いになるであろう、大切な人達に挨拶をしてきなさい。」
シンシアさんがそう言い、私達三人を街に送り出してくれたのです。

[一日目:夜(各自)]
私達三人は、状況をお互い察してか無言でそれぞれの場所に向かっていきました。

柄楠君は、自宅に戻り沙耶ちゃんに適当に挨拶してすぐに戻ってきたようです。
こういう時は湿っぽくではなく、あっさりと事を進めるのが彼らしいですね。
ご両親は、旅行があと一週間ほど延びるらしく、今はイースター島に向かっているそうです。
旅行から帰ってきたら、息子の顔つきが変わってしてさぞかしびっくりするでしょうね。
だって、今の彼はご両親,沙耶ちゃん、そして芽衣ちゃんを守るために覚悟を決めているのかな?
いい男の顔になっていましたよ。

舞ちゃんも自宅に戻って、ご両親に挨拶していたようです。
素直にこれから起こること、自分がしようとしている事を全て話したそうです。
またいつもの中ニ病?と半信半疑だったみたいですけど、今までとは明らかに違う覚悟を決めた舞ちゃんにかなり戸惑ったでしょうね。
何かできる事はないか?との問いに、舞ちゃんは
「藤原さんとの交際を認めてほしい。」
と言ったそうです。
流石にお父さんは腰を抜かしたようですけど、逆にお母さんがしっかりしていたようで大事には至りませんでした。
舞ちゃん、藤原さんに気があったのね…。
確かに最初は頼りなさそうな印象でしたけど、今は惹かれる気持ちはわかるかな。
ここぞって時にちゃんとできる男の人ってやっぱりかっこいいわよね。

さて、私ですけど、みんなと同じように自宅である六葉社に戻りました。
家にはお母さんしかおらず、お父さんは出かけたままでした。
そこで初めて聞いたのです。
お父さんは六葉社を売らず、別な方法で手術代を工面している事を。
(何よ、いつも勝手に決めて…。六葉社がなくなる方がまだ諦めがついたのに。これじゃ、ちゃんと生きて帰らないといけないじゃない。)
涙が出そうになるくらいに嬉しかったの。
多分、私が目指していた夢の事は知っていたでしょう、だから…。
私はお母さんに今まで言えなかった気持ちと、お父さんに宜しくを伝えてほしいとだけ残して、涙が零れる前に早々に家を出たのです。
「今までごめんね、そしてありがとう。」
本当はお父さんに直接言いたかったのですけど、しょうがないよね、私のために今も戦っているのですものね。
だから、私も行って来る。
そして、必ず帰ってくるから、朝御飯用意しておいてね。

玄関に向かう途中、明美の部屋の前を通った時、写真に一言言おうかとも思ったのですけど思い留まりました。
明美はもう私と一緒にいるから、今も傍にいるから。
指輪をつけている左手を右手で握り締め、みんながいる郊外の広場に向かったのです。

[一日目:夜(都心郊外)]
私が指定された場所に着いたときは、もう舞ちゃんも柄楠君も先に着いていました。
戦う準備を済ませ、フック船長の船に乗り込みます。
私は、シンシアさんにさだめさんの事を宜しくと伝え、船に乗りました。
藤原さんと柄楠君の叔父さんが乗る試作機は、航空自衛隊の基地である入間から出撃する予定です。
ここからでも打ち上がるのはわかるため、それを合図に私達の戦いが始まるのです。
しかし、どうしたのかな?
ここに来て、私は妙に咳き込んでいたのです。
私は嫌な予感がしつつも、発作がこれ以上悪化しない事を祈りつつ、薬を飲んで合図を待ったのです。
そして、轟音と共に夜空に舞い上がる光が見えたのです。

[一日目:深夜(東京都上空)]
藤原さんと柄楠君の叔父さんが乗る試作機は、成層圏まで飛行可能というだけあって僅か十数秒でバックベアードのいる地点近くまで近づいていました。
そして藤原さんからの合図が入り、その瞬間おこんさんの転送術により、海賊船が成層圏まで転送されます。
僅か10Km地点という事もあって、禍禍しく輝く衛星ははっきりと視認できました。
アメリカが開発した軍事衛星に取り付き、衛星に装備されていたレーザー砲を撃っていたのです。
そして、その砲身が私達に向けられたのですが、柄楠君が船首に立ち、その光を弾き返しました。
妖と戦っていた当初、柄楠君は攻撃重視だったのに、幾多の戦いを潜り抜けて鉄壁の盾としての力を手に入れていたのです。
その背中が頼もしく見え、芽衣ちゃんは早くからこの事に気づいていたのかな?とふと思いました。

バックベアードと戦闘可能距離にまで接近した時、バックベアードは私達に語りかけてきたのです。
私達の力を称賛し、配下となる見返りに一部の人間を助けてやろう、と。
明美の命を奪った輩の声なぞ誰かが聞くものですか。
その存在の大きさに圧倒され、憎悪に我を忘れかけたましたが、何とか耐えて私は構えを取りました。
最後の戦いが幕を開けたのです。

バックベアードは、対物理,対魔法の障壁を持つ触手によって無敵の力を誇る構造である事は、シンシアさんより聞いていました。
そのため、まず対物理側の触手を潰し一時的に障壁を解除、そこを舞ちゃんが攻撃に終始する陣形で挑みます。
相手は強力なレーザーと腕力を持っているため、そこは柄楠君が受け止め、私が回復と付与魔法で支援して耐える形となります。
バックベアードは触手で舞ちゃんや私を絡め取って柄楠君が守りきれない距離に投げ捨て、そこにレーザーを掃射するなどこちらの陣形を崩しにかかってきます。
そんな中、私達三人共に追い討ちとなる出来事が起こったのです。
ウィザードの力を失い始めていたのです。
時折、バックベアードの姿が見えなくなり、周囲に展開している月匣が弱まり、フック船長の海賊船が見えなくなったのです。
更に私は、病気がここに来て悪化、発作が始まったのです。
(出発前から普段より体が重かったけど、こんな時に…。)
魔法を使う度に体中に痛みは走り、咳が堪えきれず、口を押さえる手の隙間から血が零れ落ちていました。
そして、舞ちゃんや柄楠君より明らかに早い速度で、月匣の力が弱くなっているのがわかりました。
バックベアードがそれを見逃すはずもなく、私に攻撃を集中してきます。
柄楠君がそれを防ぎ耐え凌ぎます。
私は、舞ちゃんや柄楠君と違い、後衛での支援に特化した三人の中で唯一の術師系のウィザードです。
バックベアードの攻撃を一撃でも受ければ即死なのです。
既に視界は霞み、足場である海賊船の感触が既に消えかかり、二人より明らかに高度が落ちていました。
(こんなところで、まだ勝負すらついていないのに…。)
不甲斐ない自分を呪いつつ、必死に体中の痛みに耐えるのが背一杯でした。
そこにふわりと背中から何か柔らかいものが支えてくれる感触がしたのです。
その感触が明美のものだとすぐわかり、私の体を支えてくれているように感じたのです。
(そうだね、まだ諦めちゃいけないよね。ありがと、世話をかけっぱなしで、やっぱり私は明美がいないと駄目ね。)
高度が低いながらもようやく安定し、体の痛みも引き、二人の支援に集中します。
そして、舞ちゃんの渾身の一撃がバックベアードに決まり、衛星ごと四散。
何も言葉を残す事なく、大気圏に堕ちて燃え尽きていったのです。

決着はついた。
そう思ったその時、私達が乗っていたはずの海賊船が消え、私達を包む月匣も消え、完全に私達は力を失ったのです。
ここは成層圏ですので、当然人間は生きていけません。
ゆっくりと重力にひかれ、大気圏に堕ちていったのです。
でも、ここが宇宙なら即時に生身の人間は死ぬんじゃないかな?と思ったのですけど、微かに海賊船の感触が残っていたのです。
最後の力なのでしょう、私達は海賊船に揺られ大気圏を下りていきました。
そして、その横で目にしたのは軌道を変更されていた衛星が、次々と大気圏で燃え尽きるルートに変わって燃え尽きていったのです。
操られていたグレムリンの術が解けたので、軌道を変更して退避したのでしょう。
彼らにとっても世界が滅びては困るのです、いたずらする機械がなくなってしまいますからね。

私達の乗った海賊船は、太平洋に着水してそのまま沈没して消滅しました。
先ほどの戦いで大破していたらしく、私達を無事に地球に下ろすのが手一杯だったのでしょう。
(フック船長、ありがとね。)
沈む海賊船の中、漂流する大きめの木の破片が浮いていたので、舞ちゃんと柄楠君は即座に泳いで木片につかまります。
以前もご説明した通り、私は泳げません。
木片の大きさと損傷状況から三人は厳しいと判断した私は、二人だけでも生きて、と伝えたました。
そうしたら、舞ちゃんは断固としてそれを拒否すると言って、泳いで私を捕まえて木片まで連行されました。
ここで三人共倒れは最悪のシナリオよ?と言ったのですが、聞いてくれません。

そして数時間、漂流する私達は助けを呼ぼうにも術はなく、木片は少しずつ痛み始めていました。
絶望的な状況の中、突如声が聞こえてきたのです。
藤原さんでした。
しかし、周囲を見渡しても月明かりのみでは視界も限界があり、海しか見えません。
空からかな、とも思ったのですが飛んでいるものは見つからず、気休めの目印にでも、と私はおこんさんとの契約で持っていた鳥居のシールを木片に貼ったのです。
そしたら藤原さんが目の前にいきなり転送されてきたのです。
きっとおこんさんが鳥居間での転送術で私達のところに飛ばしたのでしょう。
その手には救命ボートを持っており、肩には一瞬だけでしたが、いつまでの姿た見えたのです。
いつまでの能力で私達に問いかけていたのです。
藤原さんは妖は見えないはずなので、言われるままに藤原さんはかぁ爺達の指示に従ったのでしょう。
私達は、救命ボートに乗り移って海上自衛隊の救助まで、みんなの助けに感謝していたのです。
海上自衛隊の救助ヘリが数時間後に私達を助けに到着、そのヘリには柄楠君の叔父さんが乗っていました。
(今回はお世話になりっぱなしね。)
恐らく藤原さんと事前に段取りをつけ、すぐに動けるようにしていたのでしょうね。

救命ボートからヘリに吊り上げられているとき、海の向こうのから眩しい光が差し込んできました。
夜が明けたのです。
その輝きは、世界の闇を払うかのように美しく見え、私達の勝利を表現しているかのようでした。
私達は、太陽を守り、世界中に衛星が堕ちるという危機を阻止したのです。
ですが、それと同時にウィザードとしての力を失い、普通の人間に戻った事を意味していたのです。

第拾四話「エピローグ」

第拾四話は、力を失ってから卒業式前日までの後日談となります。
本来は第拾参話の最後の部分なのですけど、折角なので話を分けてみました。
それほど多い内容ではないので、お付き合いくださいませ。
※ ログ内の()は思った事、括弧なしが通常の内容。

[登場人物]
 PC       : 柄楠狩刃(PC1),三田舞(PC2), 修善寺歩(PC3)
 NPC(イノセント) : [堀越学園 ] 石原弘三,加々見芽衣,空寝遊
          [印具堂  ] 閻魔ふたつ,犬神明

[学園祭後]
最後の学園生活でのイベントである学園祭、そして最後の戦いとなったバックベアードとの決着を終え、私達は本当の意味で日常に戻りました。
柄楠君は、その後芽衣ちゃんと同じ大学を目指すべく、順調に勉強を進め見事合格を果たしたそうです。
舞ちゃんは、学園祭での華々しい演出に一時話題になったそうです。
その後、大学受験に備えて勉強していたらしく、志望校に合格したそうです。
一方私は、舞ちゃんと同じく学園祭での噂の一人となり、本当に性別が伝わる事はなく、一部の妖気漂う人達の怖い程熱烈な視線の対象とされました。
学校に通っている間、何か後ろに視線を感じる日々を送る事になったのです。
(男子の制服着てるのですから普通に気づくはずなのですけど、噂では「女子が男装している」という風に流れていたわね…。)
人の思いとはこうも歪むものなのね、私が言うのもどうかと思いますけど。
しかし、普通の学園生活はそう長くは続かず、度重なる妖との戦いで私の体は完全に磨耗し、病状が危機的に悪化。
学園祭から一ヶ月経たぬうちに私は入院せざるをえなくなったのです。
以前から決まっていて言いそびれたのですが、手術の日程は来年の春に決まり、その準備の関係で卒業式前日に渡米する事になっていたのです。
私だけ卒業式をみんなと迎える事が出来なくなったのです。
そのことを舞ちゃんと柄楠君に伝えたところ、クラスだけの卒業式を前日にやろう、と舞ちゃんが言い出したのです。
その時に芽衣ちゃんも呼ぶとの事でした。
私のためにそんな事までしなくていいよ、と言ったのですが…。
おまえのためじゃない、私の自己満足のためだ、と言って聞いてくれません。
でも、ありがとね。
私は素直にその言葉が嬉しかったです。
そして、私はみんなが学園で受験勉強に勤しむ中、一人病院での闘病生活が始まったのです。

でね、後から気づいたのですけど、舞ちゃんも柄楠君もバックベアードとの戦い直前くらいからかな。
今までの付き合いの中で、初めて私の事を「歩」って名前で呼んでくれたね。
でもどうして今頃なのかしら、長い付き合いなのに…。

[卒業式前日]
受験勉強を終え、その結果で一喜一憂する空気が残る中、クラスのみんなが学校前に集まっていました。
遊ちゃんは受験に失敗し、就職するそうです。
閻魔さんは本当にファッションデザイナーを目指すらしく、専門学校へ進むみたい。
他の人はどうだったのかな、そこまで聞く余裕はありませんでした。
そこに芽衣ちゃんも到着、柄楠君は嬉しさの余り、周囲の目を気にせず抱きついたそうです。~ みんなから冷やかしながらも祝福する声に、芽衣ちゃんは恥ずかしながらも嬉しそうだったみたい。

そこにようやく私が到着しました。
私は既に自分で歩く事が出来ず、車椅子で先生に押してもらっていたのです。
芽衣ちゃんとは久しぶりの再会ね、私が髪を切ったのみてびっくりしてました。
(ショートカットも似合うでしょ?)
本当は元気な姿で再会したかったのですけど、こればっかりわね。
そして、先生が私に
「勉強は続けるように、みんなより遅れてでもいい、大学受験を諦めるな。」
と言われました。
はい、必ず帰ってきて受験しようと思っています。
(みんなよりどれくらい遅れるか、わからないけど…。)

皆で取った集合写真、見たときほんの一瞬だけ、気のせいかもしれません。
みんなの後ろに、かぁ爺達や今まで調伏してきた妖達が写っていたように見えました。
(みんなも来てくれていたのね…。)
この時に気づいたのです。
いっぱい残っているじゃない、こんなにも私の事を想ってくれている人がいたんだって事に。
力を失っても、両親がいて、仲間がいて、クラスのみんながいて、言葉を交わす事はもうできないけど妖達もいる事を。
その想いに答えるためにも、たとえ短くても背一杯生きよう。
それが私と明美が犯してきた罪の償いへの答えじゃないのかな。
(明美、今までよりずっと大変な事が待っているから、一緒に頑張ろう。)

学園前に咲く桜の花が綺麗に舞う青空を見上げて、暖かい声に包まれながら、そう私は誓ったのです。

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