SS / ネギ / 2



335 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:23:31 ID:QZe4vBhb0
「うっ……んっ……んん……」
龍宮さんがくぐもった呻きを盛らしている。
水でじっとりと湿らせたような濁った響きだ。
ここが地下室で音が反響している、と云うこともあるだろうが、
全ての原因がそうだとは思えない。やっぱり、行為が行為だからか。僕は何冊かの本を広げ、
これから唱えようとする呪文の要点や手順をノートに書き込みながらぼんやりと考えていた。

「驚いたわ。龍宮さん、巫女の癖に処女じゃなかったのね」

明日菜さんが龍宮さんの耳元で囁いた。龍宮さんは四つんばいになって、
お尻を突き出すような格好だ。何も着用しておらず、浅黒い張りのある肌を露にしている。
玉のような汗が全身に浮かんでいた。腕には手錠がはめられていて、
自由は著しく制限されている。大きく開かれた足に拘束はないが、
たとえ逃げ出そうとしても魔法で力を奪ってあるからまともには歩けまい。

もっとも、今の龍宮さんは別のもので串刺しにされているから逃げられる心配はない。
腰は初老の男の手で後から抱えられていたし、
龍宮さんの中心に男自身が侵入して抉っていたから。
龍宮さんが呻いているのは、体内にある異物が前後に力強く動いて、
彼女に大きな精神的苦痛と肉体的快楽を与えているからだ。
粘膜と粘膜がこすれあい、胎内で分泌された粘液が混ざり合って卑猥な音をたてる。
時折男の先端が子宮をつくのか、唇を噛みしめて耐える龍宮さんがこらえきれずに甲高い悲鳴をあげた。

336 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:25:18 ID:QZe4vBhb0
「普段すました顔で気取っていましたけど、こんな声も出せるのですね。
 あなたの本性がこんなだと知ったら、クラスのみんなはどんな顔をするでしょうね」
「ほんと、笑っちゃうわ。
 巫女服着てたくせに処女じゃなくて、しかも新田なんかに犬みたいに犯されているのに、
 喜んで根元まで咥えこんじゃてるんだもの。これじゃあ、神様も怒るわよね。
 アンタのいる神社にお参りにいった連中はいい迷惑だわ」

明日菜さんが龍宮さんを鼻で笑っても、龍宮さんは何も云わなかった。
でも、眉は苦しげに歪み、ギリリと歯が鳴ったような気がしたから、
何も感じていないというわけではなさそうだ。追い討ちをかけるように、
新田先生がもう何回も龍宮さんの子宮に吐き出した体液がトロリと逆流し、
抽迭に伴って泡だった音をたてた。龍宮さんの頬が染まるのがわかった。
すかさずのどかさんが分厚い本を開き、龍宮さんの気持ちを読み取った。

「いろいろ考えているみたいですよ。
 えーと『ごめんなさい、ごめんなさい、○○』
 …って、あす…いえ、木乃香さん。この文字、なんて読むんでしょうか」

のどかさんは一瞬明日菜さんに聞こうとして、
明日菜さんの学業はちゃらんぽらんだったことを思い出したのか、
急に木乃香さんに本を見せた。木乃香さんは、デジカメで龍宮さんと
新田先生が繋がっているところを中心にシャッターを切っていたが、
のどかさんに声をかけられて「どれどれ」と本を覗きこんだ。
木乃香さんは、ネットに流すための動画ビデオや写真を撮り過ぎて
飽きていた様子だったから、のどかさんの開いた本を興味深々と云った様子で覗きこんだ。

337 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:27:16 ID:QZe4vBhb0
「うーん、この文字はうちにもわからんわ。ネギ君なら読めると思うえ」
「やめろ!!」

 それでは、と僕の方に来ようとしたのどかさんを、龍宮さんがびっくりするほど
大きな声を出して制した。地下室に幾重にも木霊して、のどかさんはもちろん、
明日菜さんや木乃香さん、そして僕も龍宮さんに注目した。

新田先生だけは、腰の動きを止めなかったけれど。

「お前達、いつまで…こんな無意味な行為を続けるつもりだ?」
「いつまで? そりゃ、新田のカルピスが空になるまでよ。
 ネギが魔法で理性を外したから、本能が満足するまでアンタを離さないと思うけど」
「つまり、受精したと新田先生が確信するまでです」
「よかったなぁ、龍宮はん。赤ちゃんが出来て」

祝福する木乃香さんに、龍宮さんは視線を向けた。気
の弱い人なら眼光だけで睨み殺せるかもしれない。
あの木乃香さんがたじろいだ程だ。

「こんなことで、私を貶めて楽しいか?
 私の『女』を弄んで満足か?」

338 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:28:08 ID:QZe4vBhb0
明日菜さんが何かを言いたそうだったが、珍しく口ごもった。
僕が魔法をかけて引っ張ってきたとはいえ、理性を外した中年男の
生命力剥き出しの行為に少々気圧されていたのかもしれない。
のどかさんと木乃香さんも、明日菜さんの怯みが伝染したのか、誰も答えない。
冷静に考えれば、龍宮さんは怒気を発しているが、
一方で相変わらず男に貫かれている状態だ。
そのことに思いやれば可笑しさがこみ上げてくると思うのだけれど。
いつまでも沈黙に支配されているのも面白くない。
仕方がないので、僕が答えることにした。

「いいえ。楽しくもないし、満足しているわけでもありませんよ」
「…ネギ君?」

木乃香さん達が意外そうに僕を見た。
龍宮さんは視線を木乃香さんから僕に移してきた。
睨まれた瞬間、猛烈なブリザードが吹きつけてきたような衝撃が走った。
凍てつく瞳が僕を見据えている。虚飾を破り、心の底に潜む闇を暴く魔眼だ。
最後の審判で、イエスの前に引き出された罪人の気分だ。

確かに怖いな、と僕は思う。
明日菜さんや木乃香さんでも、これに対抗するのは困難なはずだ。

339 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:29:20 ID:QZe4vBhb0
でも僕の心は躍らない。怯みもしない。
なぜなら僕の心の隙間は既に埋まっているから。
僕の真実は既に彼女の前で曝け出しているから。

やっぱり、僕は彼女でないと楽しめないんだな。

自分の性癖を確認して、そして彼女が手元にあることに、僕は満足を覚えた。
自然態度に出たのか、僕はくつくつと笑っていた。
龍宮さんがたじろいだように身を震わせた。ちょうど新田が呻いて、
龍宮さんの子宮に思いきり濁液を放ったからかもしれない。
どちらでも構わないが。

「龍宮さん」
 身体の奥底で吐き出された感触に顔をゆがめる龍宮さんに、
僕はこれからの計画を話した。そうするのが礼儀だと思ったからだ。

「新田先生に龍宮さんを犯させたのは、
 あなたに新田先生の子供を産んで欲しいからではありません。
 最近あなたの忠誠心に疑問が見られるようになったので、
 もっと忠実なボディーガードを木乃香さんの為につけてあげることになったんです」

「それがお前達の卑劣な行為とどんな関係がある」

340 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:30:57 ID:QZe4vBhb0
「話は最後まで聞きましょうね。
 まぁ、あなたに変わる新しいボディーガードさんを雇うわけですが、
 人間である必要はないんです。むしろ人間でない方が良い。
 人間は悩みます。躊躇します。コンディションの問題もある。何より心変わりします。
 龍宮さんのようにね。
 その点、人間以外の存在なら、契約を遵守する限り絶対服従です。
 だから僕は使い魔を作ろうと思います。
 おや、どうかしましたか? 顔が蒼いですよ?」
「中年親父のモノじゃ満足できないんじゃない?」

立直った明日菜さんが龍宮さんをからかうと、僕達は失笑を交えて笑った。
ニコリともしないのは、龍宮さんと理性を失った新田先生のつがいだけだ。

「まさか……」
「ええ。使い魔を龍宮さんの子宮で育てようと思います。
 龍宮さんはまだ若いから、10体ぐらいは育てられますね。
 とりあえず手当たり次第産ませてみましょうか」

342 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:33:26 ID:QZe4vBhb0
「い、いやあああああああああ!!!」

いままで大人しくしていた龍宮さんが急に暴れだした。
新田先生が龍宮さんの腰を捕まえていたというのに、拘束を破って逃げ出そうとする。
「明日菜、捕まえや!」と木乃香さんに叱咤され、馬鹿力の明日菜さんが慌てて飛びついた。
龍宮さんの動きを封じることに成功する。それでもなお龍宮さんは身をよじって
明日菜さんを跳ね飛ばそうとする。力を弱める魔法をかけておいてよかった。
明日菜さんでも、龍宮さんが本気になったら適わない。

「ネギ先生! なんでもする、なんでもするから、それだけはやめて!」
「大丈夫ですよ。さっきの言葉は冗談ですから、本気にしないでください」

 龍宮さんは勘違いしたのか、安堵の溜息をついた。
 教師として、生徒の間違いは訂正しなければならない。

「ああ、冗談と云ったのは『手あたり次第』という部分だけです。
 異形を孕ませると云っても、子宮を食い破って出てくるような
 やんちゃな奴を宿らせるつもりはない、と云うことですよ。
 ちゃんと産道を通って誕生するタイプを召喚するつもりです。
 あっ、でも僕はこの手の召喚魔法使うの初めてなので、
 失敗して暴れん坊タイプを宿らせてしまうかもしれませんが…。
 その時はあきらめてください」

343 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:36:48 ID:QZe4vBhb0
「近衛! ネギ先生を、ネギ先生を止めてくれ!!」
「いつから木乃香さんを呼び捨てに出来る立場になったんですか?
 木乃香さんはあなたの雇い主でしょう? 立場をわきまえないからこういうことになるんです」

 のどかさんが冷たく云うと、龍宮さんは脂汗をかきながら言葉遣いを訂正する。

「近衛様!! これから心を入れ換えてお仕えしますから、どうかお許しを!!」
「どうする、木乃香?」
「うーん」

木乃香さんは腕組みをして視線を虚空に浮かした。
龍宮さんは木乃香さんを、捨てられた子犬がすがるような瞳で見上げている。
しばらくして、木乃香さんは大きく頷くと、誰であろうと魅了するいつもの笑みを浮かべた。
そして龍宮さんの前に座りこむと、褐色の頬を伝う涙をすくいとった。

「うち、決めたわ」

 龍宮さんの表情が明るくなる。
 …僅か数秒の間だけ。

344 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:38:24 ID:QZe4vBhb0
「うち、色々と考えたんよ。
 でも、ネギ君のやり方以上にせっちゃんを喜ばす龍宮さんの壊し方、思いつかなったえ。
 そやから、うち、ネギ君に全部まかすわ。それに、うちの護衛も一緒に来てくれるやから、一石二鳥やねぇ。
 元気な子、孕んでや。あ、烏族の子を産んで貰うつぅのも面白そうやな」
「大きくなるまでには時間がかかりますよ」
「そやな」

ころころと木乃香さんが笑うと、龍宮さんは髪を振り乱して暴れだした。
明日菜さんでも止められそうにないので、僕が魔法をかけて眠らせることになってしまった。
ついでに新田先生にも眠ってもらって、背広を着せた上で仮眠室に魔法で送り返した。
もしこの地下室での出来事を覚えていたら「いい夢をみたな」と思うに違いない。
感謝して欲しいところだ。

「どうする? これから召喚するの?」
「まだです。理論はOKだと思うんですけれど、まだ細かい所に穴があって。
 なんといっても初めて唱える魔法ですから、準備は完璧にしておきたいんです。
 あと3日ぐらい待ってください。それまで龍宮さんには、確実に妊娠して貰うよう、
 色々な人の精を子宮に受けて貰います。
 宿した子に『魔』を憑依させた方が、母体の能力を受け継ぐケースが多いですからね」
「こんなとこにも確実を期すとは、流石ネギ君やな。
 気真面目で努力家や。惚れ惚れするわぁ」

 木乃香さんに褒められて悪い気はしない。
 なぜかのどかさんが嫌そうな表情を浮かべていたが、僕にはその理由がわからなかった。

345 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:39:23 ID:QZe4vBhb0
龍宮さんが逃げ出さないよう牢に閉じ込めて、僕達は地上へ出た。
すでに日はたっぷりと沈んで、麻帆良図書館は闇の中にひっそりと佇んでいる。
月光に照らされた本棚に囲まれていると、現実が幻想に侵食されていくような気がする。

僕は木乃香さん達と別れた。
魔法理論に不確かな所があったので、その部分を補強しようと思ったのだ。
木乃香さん達と別れて背を向いた時には、既に彼女等のことは忘れていた。
龍宮さんにかける召喚魔法のことも、脳の極一部で考えているに過ぎなかった。
僕の大部分は彼女と共にいた。僕は夜道を軽やかに歩いた。
心は興奮に弾んで、一種誇り高い気分さえ感じていた。

僕は、彼女をこの手に握っている。
彼女は僕のものになったんだ。
何をするのも自由なんだ。

昔の僕と今の僕の違いは、彼女の存在が傍にあるかだけだ。
それだけのことなのに、世界は総天然色を取り戻した。
今まで父さんの影の中にあって褪せていた風景が生き生きと輝きだした。
ほのぐらい星灯りさえ、宝石の輝きのように思えた。

346 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:43:55 ID:QZe4vBhb0
ふと思った。僕は何を願い、求めて生きてきたのだろう。
僕の前から去り行く父さんを追いかけて、ずっと走り続けてきた。
父さんに追いつくことは僕の人生をかけるに価するテーマだと思ってきた。
なのに、彼女を子供が弄んでいると、言い知れぬ満足感を得ることが出来る。
彼女が傍にいることで得られる感覚は、ずっと昔からこれを探してきたのだと云いたくなるほど、
僕にしっくりと定着していた。

しかし、それは何かが決定的にずれた満足感だった。

ジグソーパズルの最後のピースが無いのに近い感覚。
いや、それよりももっと切実だ。何かが決定的に狂っている。
いつのまにか、あれほど輝いていた夜空も色を失って元のモノクロの世界へ戻ってしまった。
僕はまたしても喪失感と父さんへの切迫感に捕らわれたが、どうしようもなく、
心を焦がす黒い感情に身を任せるしかなかった。

僕はエヴァンジェリンさんの家についた。
家の主は僕の手で捕らわれているので、当然の如く不在だ。
留守を護るべき茶々丸さんやチャチャゼロさんは、僕の手で既に葬った。
そしてエヴァンジェリンさんが戻ることもないだろう。この家は廃家だ。
事実、人が住まなくなった家特有の荒れた空気が漂っていた。

347 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:45:13 ID:QZe4vBhb0
僕は余人の接近を阻む魔法結界を抜けて、家の中に入った。
麻帆良学園で責任を持って管理していたエヴァンジェリンさんがいなくなったとことで
一悶着あったらしいが、事情を全て知る学園長がなんとかもみ消してくれたと聞く。
お祖父ちゃんに口利きしてくれた木乃香さんには感謝しなきゃ。

僕はエヴァンジェリンさんの書庫へ行った。
彼女は自分で「私は悪の魔法使いだ!」などと元気良く宣言しているぐらいだったから、
良識ある魔法図書館が第一級禁書するような魔法書が料理本の隣に
無造作に置かれていたりする。『闇の福音』の遺したものなど興味はないと云うのか、
書籍は彼女が整理したままに残されていた。僕は禁書をとって調べものをはじめた。
前にも読んだことがあるので、理解は容易い。
見落としていた点を中心にノートに書き取って行く。
作業が終わえて腕時計を見ると、日付は既に変わっていた。

「さて、帰るとしようかな」

禁書を本棚に戻して、僕は書庫を後にした。

348 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:46:39 ID:QZe4vBhb0
だが、僕の身体は玄関へ向かなかった。
何処をどう歩いたのか、僕はエヴァンジェリンさんの寝室にいた。
 
誰も使うことのないベッドを月光が虚しく照らし出している。
この家に来る途中でモノクロの世界に急に色が蘇えったように、白昼夢が僕を襲った。

僕がいて、エヴァンジェリンさんがいた。
カモ君も、茶々丸さんも、チャチャゼロさんも、いなくなった人達もみんな揃っていた。
彼らは…僕自身も含めて…幸せそうに笑っていた。

 わかっている。わかっているさ。
 僕は自分の意志で彼女達を壊した。
 彼女達だけじゃない。

 自分自身と…

 …未来をも壊したんだ。

いつしか、頬を熱いものが伝わっていた。
身体に力が入らない。自分がなぜここにいるのかもわからない。
抱えていた杖を落としたことにも気付かず、僕はいつまでも幻影を追い求めていた。
それが、僕に嫁せられた罰だと知っていたから……。

349 名前:135[sage] 投稿日:2005/08/22(月) 12:49:03 ID:QZe4vBhb0
今回はここまでです。
ネギ先生が、生徒達が虐めや酷い目にあっているのに
無関心だったり冷徹そのものである理由を書いてみました。

最後まで頑張ってみるつもりです。
ではでは