平衡、非平衡


熱力学入門


非平衡から平衡に

我思う、故に宇宙は平衡に達していない!

先ほどの系で二つの箱を薄い膜で仕切り、片方に気体分子を集めておき膜を突然破るとどうなるでしょうか?

その瞬間は気体分子は箱の半分にかたっまています。
この瞬間の状態は(箱一杯に広がった)許されている状態のほんの一部にしか過ぎません。
つまり膜が破れた瞬間は系に許された状態をほとんど使っていません。

気体は絶えず動き衝突を繰り返しているので、使われない状態をそのままに放っとくことができるはずがありません。 
これを実現すべく気体は広がって一様な分布になるでしょう。 系はやがて 最も現れる状態 に落ち着きます。

このような過程を非平衡から平衡に移るといいます。平衡な状態とは最も状態数が大きい状態です。 非平衡から平衡に移る過程を 緩和(relaxation) といいます。

粒子が移動したり、熱が移動したりして状態数を増やすことが許されているなら
それは非平衡な状態であり、移動して平衡に至る。
なぜなら許されている状態は皆等しいチャンスを持ちしかも許されているから

逆も真なりです。状態数が大きな系から小さな系に自然に移れるはずがありません。
仕事をすればその系のエントロピーを小さくはできるでしょうが、仕事をした系のエントロピーは 増えていなければなりません。
結局、全体の系ではエントロピーが増えています。

これが熱力学第2法則です。

エントロピーは増大する。

非平衡から平衡に達するときには必ず 流れ が生じます。

流れは平衡に達するまで続き、その間にエントロピーを増大させます。

非平衡あるところに流れがあり、我々はそれを利用して何かしらの仕事をさせています。 発電やエンジン等は高温と低温の差を利用しています。その差(非平衡度)が大きいほど仕事が 取り出せることが想像できます。

宇宙全体のエントロピーがそのままにとどまっているような変化を可逆過程といいます。 この時は、宇宙全体のエントロピーを増やさずに逆に戻せるチャンスがあるからです。 実際には不可逆過程ばかりですから宇宙のエントロピーは残念ながら増える一方です。 宇宙が平衡に達したらエントロピーはもはや増えません。 つまり私がここに存在し活動している限り、宇宙は平衡に達していません。 平衡に達すると流れがなくなり、最も現れる配置の周りをゆらいでいるだけなのですから。

では、接触している二つの系の平衡の条件とは何でしょうか?


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