波動関数とはなにかをイメージ的に理解する


量子力学超入門


原子核に電子はなぜ落ち込まないか

大抵の回答は ”エネルギーが飛び飛びの値しか取れないから” となっていますがわかるようでわかりません。 こんなんでイメージを掴める人がいるのでしょうか?

答えは当たり前ですが波動関数が何を表しているかにあります。

波動関数は位置と運動量を同時に表現する

粒子を特定するためにはそれが「どこにあるのか」と「運動量はいくらか」の二つを指定する必要があります。 古典力学ではこの二つはお互いに独立ですが量子力学で用いる波動関数はたったひとつの関数でありながらこの二つを同時に指し示します。

粒子の存在位置は良く知られているように波動関数の2乗で表されます。おおざっぱに言えば波長程度の大きさで粒子が存在,つまり、粒子は波長程度の大きさを持っているとイメージできます。

運動量はドプロイの式 p = h/λ からわかるように波長の逆数で関係づけられています。波長が長ければ運動量は小さく,波長が短ければ運動量は大きくなります。しかし、これで終わってしまっては何のイメージも浮かばないでしょう。粒子の大きさは同じとして波長を短くしたら波動関数(波束)の形はどうなるでしょうか。

波動関数の曲がり具合が増える事に気づくでしょう。要するにこの曲がり具合が運動量を示しています。 事実,運動量の演算子は -ih/2π∇ です。

波動関数は値で存在を、曲がり具合で運動量を表している。

さて、それでは電子が原子核に落ち込み波束が原子核付近に限定されたらどうなるでしょうか?

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電子は運動エネルギーとクーロンポテンシャルの和(つまり全エネルギー)が負であればあるほと安定です。普通に考えれば原子核付近に存在すればクーロンポテンシャルをもらうことができ安定なはずです。しかし、上図のように原子核付近に電子を限定すると波動関数の曲がり具合が増えて電子の運動量が大きく増加しなければなりません。するとクーロン力では電子を原子核付近に捕まえておくことができません。

相補性

我々が粒子の位置を正確に知ろうと思えば曲がり具合が増えて運動量を決める事ができません。 このような関係は一般に不確定性と呼ばれていますが、物理現象が不確定であるのではなく位置と運動量はお互いに相補的であるのです。

波動方程式

ここで波動方程式を見てみましょう。

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これは一般的な波の式

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とおおよそ変わるところがありません。波動方程式を時間と空間に分けると次式がでます。

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一番目の式は時間に関係しない定常な波動方程式です。一項目は波のこう配の2乗を質量で割ったものです。曲がり具合は運動量を表すのでこれは運動エネルギーに相当します。結局この式は運動エネルギーとポテンシャルの和が粒子のエネルギーであるということを主張しています。

2番目の式から波動関数は2πE/h で振動していることが分ります。一般に波動関数は定常の方ばかり見せられるので振動していることを忘れがちになるので注意して下さい。


主量子数のイメージを掴む