ここでは理解を深めるために、極端なケースを考えます。
より一般的な場合の反射を見てからここに来た方が理解しやすいかもしれません。
同軸線の負荷が短絡の場合を電源の出力インピーダンスがゼロの場合、同軸線の特性インピーダンスZ0 に等しい場合を見てみます。
電源の出力インピーダンスがゼロの場合、電圧源は電圧を維持しようとして電流を際限なく増加させようとします。
しかし、それは一瞬でおこることではありません。
上図はある時間におけるケーブルの中を走る電磁波の電圧(赤色系)、電流(青色系)のスナップショトです。
各場所で測定される電圧、電流は電磁波の重ね合わせた合計の値です。
スイッチを入れた瞬間、電源はケーブルの特性インピーダンスを感じるので電圧V0でV0/Z0 の電流をケーブルに流します。反射波が帰ってくるまでは電源にとって何の変化もないのでそのまま電磁波を流し続けます。
電磁波はケーブルを次々と充電していきながら(電場のエネルギーを蓄えながら)進んでいきます。
充電電流は変位電流です。この電流と真電流で電源から先端までをぐるっと電流は回っていて磁場を発生させます。
電場と同様に磁場のエネルギーを貯めながら電磁波は進んでいきます。
ポインティングベクトルはもちろん負荷へ向かっています。
負荷に到達しても電磁波が運ぶ電磁エネルギーが消費されないので反射します。
反射波が満たすべき条件は
です。
よって電圧が-V0、電流はV0/Z0 の反射波が返らなければなりません。
負荷での電圧は入射波と反射波の電圧を足すとゼロになり、
電流は 2V0/Z0 が流れます。
負荷で消費されるエネルギーは抵抗がゼロなのでゼロです。
入射波が運ぶエネルギーはそっくり反射波が返してしまうのでエネルギーは保存されています。
その反射波が電源に到達すると今度は電源は(定電圧源なので)電圧を V0 に保とうとして V0/Z0 + 2V0/Z0 の電流を流します。
こうして、往復する毎に電流は 2V0/Z0 分だけ階段状に増加します。
ケーブルが短い時に電流を観察しても往復時間が速すぎて階段は見えないかも知れません。
その時は、おおよそ電流の立ち上がり時間は下で示すようにケーブルのインダクタンスに比例します。
エネルギー輸送の観点から見ると電源は、
ケーブル線の長さをl、単位長さ当たりのインダクタンスをLとするとLlのインダクタンスに
磁場のエネルギーを貯めなければなりません。
往復時間は2l/√LC , 特性インピーダンス√L/C より電流の時間変化の平均は
となります。*1
ケーブルの特性インピーダンスに比べて負荷が無視できるような時はケーブルのLで電流立ち上がりが制限される。
高速回路では浮遊のLを小さくせよといわれますが、それは磁場のエネルギーを貯めるには時間がかかるからです。
この場合、図のように往復しただけで波が(電圧や電流に段差がない)立ちません。波がないということは 情報を伝える必要が無くなったということです。事実予定通りの電圧、電流になっています。 (負荷では到達した瞬間から変わらない!) このように電源側の出力インピーダンスをマッチさせると負荷からの反射を吸収することができます。
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