初めに


熱力学入門


初めに

熱学の入門書はたくさんあり、厳密なものから読み物的なものまで様々です。
いまさらここで書くような物ではないのかも知れません。
とは言え、毎年入学してくる学生が電磁気学と共に苦手としていることは確かです。

熱力学は難しい学問ですが、基本的な考え方が難しい訳ではありません。
むしろ、小学生でも納得できるごく当たり前のことから出発します。
そして、その当たり前のことを突き通すと熱力学という体系ができあがります。

たとえば、相対論は ”どこでも、いつでも同じ物理法則が成り立っていなければならない” から始まります。
この前提はだれもが納得できる簡単なものです。もっともその後はフォローできませんが。 疑問点はすべてこの当たり前のことに戻って考えなおす必要があります。

まず、前提から始めましょう。

どんな状態も(許されている限り)平等に観測されるチャンスを持っている。

温度がゼロでない限り、粒子は絶えず動いていて瞬間瞬間の状態を観察すればいろんな状態をとっています。 平等というのはその状態が観測される確率がその状態の組み合わせ方に比例することを指します。

コインを100コ投げてみましょう。
それがすべて表である場合も禁止されている訳ではないので他の場合と同じように等しくチャンスをもっています。

残念ながらこの ”状態” の組み合わせは1つしかありません。
次に99個が表で残りが裏である”状態”の組み合わせ方は100です。
この時、この状態は縮退していると言います。その縮退数は100です。
すべて表の状態は99個が表で残りが裏である状態に比べると百分の1しか確率がありません。

こうして見るとすべて表の状態が観測される機会は滅多にないでしょう。
チャンスは平等でも縮退数が少ないのです。

各々の状態が実現される確率は(許されている限り)その状態の縮退数に比例する

気体分子の配置やエネルギーの分配のされかたはどんなに極端な場合だろうと等しいチャンスを持ちます。
例え、気体粒子がすべて部屋の片隅に集まっていようが一個の粒子がすべてのエネルギーを持っていようが それが許されている限り、他と同じく等しいチャンスを持っています。

そのようなことが実際に観測されないのはその状態の縮退数が他の場合に比べて低いからです。

次に疑似理想気体を考えてみましょう。


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