インダクション加速器02


インダクション加速器


図の a) は一般的な静電型のイオン源です。これを何個も直列にスタックすると端の電圧はどんどん上がって、 しまいには絶縁破壊を起こしてしまいます。

inducStatic2.png

そこでスタックできるように b) のように短絡すると、今度は膨大なリーケージ電流が流れてしまいます。

c) のようにコアを入れて インダクタンスを増やしてあげるとこの電流を減らすことができます。

これがインダクション加速器の原理です。このことから次のことがわかります。

  • 負荷電流がコアをまわることはない。
  • 加速ギャップにはクーロン電場がかかっている。それは図の a) の電場と全く同じものである。コアが新たな加速場を導入することはない。
  • コアを入れる唯一の目的はリーケージ電流を減らすことだけである。
  • 外側の観察者にとって、パルス電圧が印可されている間でもインジェクターの両側ともグランド電位である。 にも関わらず、粒子は qV の運動エネルギーを得る。

だいぶ見方が変わったでしょうか?

では次に等価回路を考えてみましょう。

理想トランスモデルを使って電流路を考察する。

下の図を見れば等価回路は一目両全ですね。ただ、並列に C が入るとは思いますが。

この等価回路は1:1の結合定数が1の時、即ち漏洩磁束がないトランスと全く同じです。 これで、漏洩磁束を考える必要がないことがわかったでしょうか?

inducEq.png

さて、次はスタックした時に負荷電流がどう流れるのかを考察します。その前に理想トランスを仮定して負過電流を予想して見ましょう。

理想トランスは漏洩磁束がなくかつコアが無限大の透磁率を持つ即ちリーケージ電流が流れないトランスのことです。負過電流を考えるときはこのような仮定をしても本質的に変わらないと思われます。

下図のb) では*1 1次電流(緑の線)が作る磁束を打ち消すように2次電流(橙の線)が流れます。コアを囲む電流は結局打ち消しあって結局 c) のようになります。

current1.png

それではスタックしたときはどうなるのでしょうか?

参考:Humphries Jr., Principles of Charged Particle Acceleration


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*1 上図と電流の向きが反対であることに注意してください。