目覚めの夜に


目覚めの夜に別れを告げて


 目が覚めたのは夜。窓から月の光が差し込んでいる。
 ここは屋根裏部屋? いつの間にかここに来て寝てしまっていたみたいだ。

 とりあえず、翼を広げて背伸び。真っ白な羽。マスターも誉めてくれる自慢の羽根だ。
「あっ、とりあえずなんか着ないと……」
 よく考えるとぼくはいま裸だ。一枚の布も羽織っていない(正確にはまだ毛布を被っているけど……)ようはすっぽんぽん。見なくても肌に当たる毛布の感触で分かる。え〜と、服は……。あった。鏡の前に畳んで置いてある。ぼくはとりあえずその服を着て何となく鏡の前に立った。
 ……、そこには見知らぬ女の子が立っていた。片目をつぶって見た。その少女も片目をつぶった。舌を出してみる。その少女も舌を出した。疑いようがない。
「これがぼく……?」
 もちろん、鏡の少女も呟いていた……

「えっと……」
 鏡に手を当て、“力”を込めてみる。鏡の像が歪む。良かった“力”は使えるようだ。鏡には一羽の白い梟と1人の少年が合わさるように写っていた。“過去見”の力で歪ませた像、つまりぼくの元の姿か映っていることになる。もちろん、片方はぼくの元の姿なのだけど。そしてもう一つの姿にもわずかに見覚えが会る。どういうことだろう?
 マスターに聞けば判るかな? それよりまた起きてるかな? 月の位置から考えてまだ寝ていないと思うけど……。

 屋根裏部屋の階段を下りるとリビングの明かりが着いていた。そこにマスターがいるのではと思いぼくはその部屋に足を向けた。部屋に入ると予想通りマスターがいた。いや、魔力の質こそマスターのものだけど姿形は全く違っていた。見た感じ今のぼくと同じぐらいの真っ黒な長髪をした少女だ。
「ほう、もう目覚めたのか。夜空くん」
“夜空”、どこか聞き覚えがある名前。でも、ぼくの名じゃない、はず。
「夜空? ぼくは、ぼくの名は“アウラ”のはずだけど……。君は?」
「アウラ……? 本当にアウラなのか?」
「そうだよ。で、君は?」
「あぁ、そうかこの姿では解かる訳ないな。私だよ。マスター・フィカルだ。もし“力”が使えるなら“過去見”で“視”てくれれば解かると思うが……。」
 そう言われて“過去見”の力を使い彼女を“視”た。すると彼女の立っている位置に痩せ身で長身の黒髪の男性像がタブって見えた。間違いないマスター・フィカルその人だ。
「本当みたいですね……。でも、何故その姿に?」
「そうだな……。とりあえず、座ってミルクでも飲みながら話そうか。」

「さて、何から話そうか……。そうだな、昨日の夜のことからかな。」
昨日の夜、それは多分ぼくがこの姿になる前、白梟だった時の記憶にある最後の夜のことだろう。
「そう、あの夜もアウラはいつもの様に夜の散歩に出かけていったな。そして、……その場にいた訳ではないから詳しくは解からないのだか……、君は何者かに襲われた。」
「夜遊びしてた高校生数人におもしろ半分エアガンかなにかで打たれたんです。白い翼が格好な的になってしまったようですね。」
「そのようだな。多分、当たりどころが悪かったんだろ。一瞬失神した君は道路にたたきつけられた。」
そうだ。そして……
「運悪く、そこへトラックが走ってきて……」
「ああ、だかそこに君を助けようとして一人の少年が飛び出した。そして両方死んだ……。」
「それって……」
ぼくは息を呑んだ。確かぼくが打たれたのは最悪の箇所……。そして弾が届く範囲の位置だといえそれなりの高度からの墜落。仮にトラックが来なくても死んでいたはず。だからその少年は助かる訳のない“ぼく”白梟アウラを助けようとして死亡。つまり……
「無駄死に……。」
「そうだ。」

 あれっ? でもぼくは姿形が変わってはいるけど生きてはいる。ということはもしかしてその少年を生贄にしてぼくを?
「マスター。では、何故ぼくは生きているんです? 答えに拠れば……」
「おちつけ、私がその少年を見殺しにしてアウラを復活させたと思っているなら思い違いだ。そんなことしたらお前に合わせる顔がない。」
「では、その子は生きているのですか?」
「ああ。まあ正確には彼、仰木夜空(あおぎよぞら)と言うんらしいのだか、彼としては死んだことになるが別の存在として転生したということになるが……。」
「そうですか……。」
「……。とりあえず、話を続けよう。虫の知らせと言うやつを感じて私は君を探し、見つけた。だかそのときにはおまえも彼も手遅れだった。お前の体は彼が守ってくれたお掛けで綺麗なままだったか、彼の体はぼろぼろで息を引き取る寸前だった。状況を見て私は何となく把握した。そしてお前を助けてくれた彼をどうしても助けたくなった。そこでお前の体と彼自身の体と魂でで“転生の秘術”を試して見ることにしたのだ。」
「それで、マスターはいまの体になられたのですね。」
「ああ」
 転生の秘術。死に逝く者に新たな生を与える禁断の秘術。この術を行使するには命を生み出すと言う術の特性上、術者は女性でなければならず、被術者は赤ん坊の姿で転生するためもとの年齢にまで即座に成長させるには術者の“歳”を分け与える必要がある。つまりマスターはその少年を助ける為に自らを女性化し、少年を成長させた分だけ若返ったと言うことになる。

「さて、何故いまアウラがここにいるかという話になるが……」
「はい。」
「……、言い難いことなんだが……、いまの君はアウラであってアウラでない。転生後の少年がアウラとしての知識・記憶に流されている状態にある。多分もう一度眠ったら……」
「アウラとしての記憶はなくなると……」
「ああ、現に今、君は人間として違和感なく行動しているはずだ。それにその口調も夜空くんのものがベースだろうね。根本が人間“仰木夜空”のものだという証拠だ。」
「そうですか……。では、ぼくはお礼をいうことは出来ないのですね。」
「……、そうなる。」
「……では、次にこの子が起きたら伝えて下さい。あなたの救った梟はとても感謝してた。 最後に見た人が心無い人間でなく、あなたのような人間でよかったと言っていたと。」
「ああ、約束しよう。」
「では、ぼくはそろそろ寝ますね。お休みなさい、そしてありがとうございます。」
「……、さよならは言わないんだな。」
「はい、例え“ぼく”が“ぼく”でなくなったとしても、“ぼく”が“ぼく”なのはかわりませんから……。」
「そう……、だな……。では、お休み。そしていままでありがとう……。」
「どういたしまして。これからもよろしく。」
 ぼくは少し微笑みながらそう返した。


《あと書きというかなんつうか》
 じつは06年5月に書いてそのまま蔵入りしてたもの。
 結構初期の作品なのでアラがあるとは思う。うん。
 まあ、折角なので掲載。



BBS

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