高齢化問題


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■日本の高齢化問題の神話
 日本の高齢化問題は、現代の偉大な神話の1つである。この神話、あるいは嘘の中味は、日本の人口が高齢化するとともに、若年で、あるいは高齢で働けない人口と比較した労働人口の割合が減少するというものである。この神話を盾に、政府は、年金その他の社会福祉の削減や、消費税増税、公共サービスの値上げ、海外からの安い労働力の輸入他、日本国民の生活水準を脅かす対応が必要であると主張する。

 しかし、下のデータは、これが「嘘」であることを暴いている。

効果的な神話や嘘の多くがそうであるように、この神話にも、ささやかな真実が含まれているため説得力を持つ。日本の人口自体は確かに高齢化している。表が示すように、日本の平均年齢は10年前と比べて10%、20年前と比べて20%、30年前と比べて30%、40年前と比べて40%、50年前と比べて60%増加している。別の言い方をすると、過去50年間、日本の平均年齢は10年ごとに約2歳ずつ増えている。

 しかし、高齢化問題で正しいのはこの部分しかない。高齢化を盾に社会福祉に打撃となる政策を認めさせようとする人々は、さらに次のように続ける。「高齢化は、労働人口の割合と比較して、幼少年齢か高齢で働けない人口の割合を増加させるため、より多くの非労働者をより少ない労働者で支えなければならなくする」と。これは以下の表の濃い黄色、および薄い黄色の列が示すとおり、まったくの嘘である。生産年齢である15歳から64歳までの人口が、幼少年齢人口、および老齢人口に対する割合は、過去50年間変わっておらず、増加傾向にもない。

 実際、過去50年間の人口統計上の変化から見て取れるのは、非生産人口を支えなければならない生産人口の負担が「減少」している点だけである。なぜなら完全に生産人口に依存しなければならない14歳以下の幼少年齢人口が、年金や貯蓄があり生産年齢人口への依存度が限定的と思われる老齢人口に比べて、減少しているからである。

 すなわち広く言われているプロパガンダとは逆に、非生産年齢人口が生産年齢人口に与える負担の割合は、増加ではなく、減少している。

 しかし、もっと重要なことは、過去50年間の、労働者の生産性の増加である。労働者の非労働者を支える負担が増えると主張する人々は、生産性の大幅な増加についてはまったく触れていない。

 下の表の水色の列は名目と実質の生産性の増加を示している。

・1995年以降、平均年齢は10%増加し、生産年齢人口は2%減少し、名目と実質の国民1人当たりの生産性は10%増加した。つまり、労働者の負担はまったく変化していない。

・1985年以降、平均年齢は20%増加し、生産年齢人口は1%減少し、名目の国民1人当たりの生産性は90%、実質の生産性は50%増加した。つまり、高齢化による減少分を補って余りある生産性の増加が見られたため、労働者の負担は減少している。

・1975年以降、平均年齢は30%増加し、生産年齢人口は1%減少し、名目の国民1人当たりの生産性は約5倍に、実質の生産性は2倍以上に増加した。つまり、高齢化による減少分を補って余りある大幅な生産性の増加が見られたため、労働者の負担は大幅に減少している。

・1965年以降、平均年齢は40%増加し、生産年齢人口は1%減少し、名目の生産性は19倍に、実質の生産性は約5倍増加した。つまり、高齢化による減少分よりもずっと多くの生産性増加が見られたため、労働者の負担は大幅に減少している。

 すなわち高齢化よりも生産性の増加割合がずっと大きいため、日本の生産年齢人口が非生産年齢人口を支えるための負担は大幅に減少し、楽になっている。

 事実、高齢化は労働者を助けているといえる。なぜならば、本来であれば、生産性が増加すれば労働者の必要性が減り、その分、失業の可能性が増えるからである。働かなければならない人を失業させる代わりに、生産性増加をより有効に使って、若年層にはより多くの準備期間を、高齢者にはより長い退職後の生活を、また働けない人へはより良い福祉を与えた方が良いはずだ。

 最後に、政府による高齢化予測については、ここでは考慮していない。なぜならば、それには生産性の増加が無視されており、また予測は予測でしかないからである。。