余韻


来生たかお大百科 >『avantage』←自作曲→『ひたすらに

※原則的に、来生たかおは“来生”に省略、来生えつこは“来生えつこ”と表記。

概要

2008年にリリースされた23枚目のオリジナルアルバムである。

来生は前作『avantage』が最後のアルバムになるかも知れないと思っていたが、関係者からアルバム制作の誘いがあり、実現した事を明かしている*1。ストックはあるものの、昔の楽曲と同じにならないように考慮しながら作るのが大変な為*2、全曲書き下ろしのアルバム制作に自信を持てなかった来生は、その旨を伝えたが、『30th Anniversary X’mas Concert Tour 2005 avantage アヴァンタージュ』で幼少時の愛唱歌である「雨に咲く花」をカヴァーした事から、他作曲家作品のカヴァーアルバムというアイディアが生まれた*3。また、どうせならばオリジナル曲も入れてはどうかという周辺の意見から、カヴァー曲とオリジナル曲で別々に1枚ずつ制作する案もあったが、最終的に7曲がオリジナル、6曲がカヴァーという構成に落ち着き、有名、無名に拘らず、あくまで来生がソングライターとして感銘を受けた楽曲や、幼少期から気に入っていた楽曲の中から、歌詞よりもメロディーの良さで厳選された*4。なお、オリジナル曲の方は同年の3月から5月に書き下ろされたものである*5

来生は自身の歌唱に関して、恥ずかしかったり、もっと上手く歌えたのではないかという気持ちになったりするので、自演曲を聴き返す事は余りないが、本アルバムのカヴァー曲は上手く歌えた気がすると述べている*6

編曲は矢倉銀(来生の編曲時のペンネーム)と渡辺俊幸で行われている。来生が偶々観ていたNHK総合『NHKスペシャル にっぽん家族の肖像』(2007)のテーマソングに感銘を受け、その作者である渡辺に自ら依頼したという。2008年4月5日に行われた打ち合わせが2人の初の対面で、その際の雑談において渡辺が、小津安二郎の映画をきちっと観た事がない旨を話すと、来生は偶々持っていた小津の代表作のDVDを4枚貸したという*7

ジャケットデザインは、小津映画から着想を得ており、小津の戦後モノクロ作品に多用された、麻の布地に手書きでタイトル等を記載するアートワークがモチーフになっている。

ブックレットには「ニューアルバムによせて」と題された来生自身による各カヴァー曲の解説が掲載されており、ブックレットの題字とイラスト(来生とその愛犬"マル")は来生えつこの直筆によるものである。写真は、ラジオブース内のショットや、東京は六本木のライヴレストラン「DUO duo MUSIC EXCHANGE」でのステージショットが使用されている。なお、バックバンド「スタートル」のメンバーである小田木隆明(現・RYUMEI)も写っている。また、オフィシャルサイトのURLが記載されている。

アルバムタイトルには、聴き終わった後に小津作品のような余韻が残るように、との思いが込められている。

ブックレットにプロデューサーは明記されておらず、エグゼクティブプロデューサーとして安西範康の名が記されている。

収録曲

トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間トラックタイトル作詞作曲編曲収録時間
1リフレイン来生えつこ来生たかお矢倉銀1:038今日でお別れなかにし礼宇井あきら渡辺俊幸5:00
2バルコニーへ来生えつこ来生たかお渡辺俊幸5:109あいつ平岡精二平岡精二矢倉銀4:09
3夏の迷宮来生えつこ来生たかお矢倉銀3:5210ギターをひこう水木かおる小林亜星矢倉銀3:29
4クレーター来生えつこ来生たかお渡辺俊幸4:4211雨に咲く花高橋掬太郎池田不二男矢倉銀3:38
5春の窓来生えつこ来生たかお矢倉銀4:3712平岡精二平岡精二矢倉銀4:08
6来生えつこ来生たかお渡辺俊幸4:2413二人の世界山田太一木下忠司渡辺俊幸5:52
7思い出時計来生えつこ来生たかお矢倉銀5:32

参加ミュージシャン*8

  • Piano:倉田信雄
  • Electric Guitar:古川望
  • Acoustic Guitar:田代耕一郎
  • Electric Bass:渡辺直樹
  • Drums:渡嘉敷祐一
  • Percussion:川瀬正人

※ブックレットには記載なし

参加スタッフ

  • レコーディングデータ
    • 2008.8.30 / 8.31 サウンドインスタジオ
    • レコーディング・エンジニア:田中信一
    • アシスタント・エンジニア:長谷川巧(サウンドインスタジオ)
    • 2008.8.27 / 9.6 一口坂スタジオ
    • レコーディング・エンジニア:高橋宏幸
    • アシスタント・エンジニア:原一(一口坂スタジオ)
  • マスタリング エンジニア:山本貴規(東京CDセンター)
  • マニュピレーター:小田木隆明
  • コーディネート:フェイスミュージック
  • デザイン・写真:三島浩
  • DTP:三島文夫
  • アーティスト マネージメント:小松裕二、遠藤直樹、島崎有紀
  • ディレクター:坂口公一(日本音声保存)
  • エグゼクティブ・プロデューサー:安西範康(エニー)
  • 協力:テン・イヤーズ、サウンドマン
  • Special thanks:渡辺俊幸、宮崎真哉、渡辺智加、源井和仁(ビコーズ)

録音

  • 2008.08.25*9
  • 2008.08.27-09.06/サウンドインスタジオ
  • 2008.08.30,31/一口坂スタジオ

初出

発売年月日メディア:規格品番発売元/レーベル備考
2008.12.10CD:ANOC-6151日本音声保存/ANY○制作:日本音声保存/TEN YEARS
○新星堂CD売上ランキングインディーズチャート(2008年12月17日付)第8位

パッケージの体裁

  • ジュエルケースにブックレットを挿入

帯のコピー

  • オリジナル7曲に加え、初めてカバー曲にも挑戦した贅沢なアルバム。来生たかおがこれぞ昭和の名曲と自らセレクトした6曲を厳選収録。


*1 来生たかお 35th Anniversary Concert Stand Alone 2010 Christmas Color』のMC
*2 来生たかおソロライブ Stand Alone 2008』のMC
*3 来生たかお 35th Anniversary Concert Stand Alone 2010 Christmas Color』のMC
*4 『Sound Estate』1月号 vol.8“ARTIST VOICE 3年ぶりのオリジナルアルバムは、聴き終えて“余韻”の残る傑作!”(2009)
*5 来生たかお コンサートツアー2009 余韻』のMC
*6 来生たかお Stand Alone 2022 Acoustic Tracks』(2022.06.18)のMC
*7 渡辺俊幸オフィシャルブログ『渡辺俊幸の音楽家日記』“来生たかおさん”(2008.04.05)
*8 渡辺俊幸オフィシャルブログ『渡辺俊幸の音楽家日記』“来生たかおさんのレコーディング”(2008.08.26)
*9 渡辺俊幸オフィシャルブログ『渡辺俊幸の音楽家日記』“来生たかおさんのレコーディング”(2008.08.26)