来生たかお大百科 >『浅い夢』←自作曲→『By My Side』
※原則的に、来生たかおは“来生”に省略、来生えつこは“来生えつこ”と表記。
1977年にリリースされた2枚目のオリジナルアルバムである。
アマチュア時代に書き溜めた楽曲を収録している為、来生にはベストセレクションというニュアンスがあったという*1。収録曲の中には、本アルバムの制作以前からステージで披露されているものもある。
アルバムタイトルは、姉弟の初提供曲「酔いどれポルカ」が誤って「酔いどれ天使のポルカ」とクレジットされてしまい、来生がカヴァーをする際に改めて考え出されたものだったが、来生の活動がまだジグザグの状態だった為に決まったという*2。
ファーストアルバム『浅い夢』の不振を払拭するべく、海外録音という話題性と共に周囲の期待も高かったが、結局セールスは12000枚に留まった(来生自身は約9000枚と語っている*3)。
レコーディングは、アメリカのロサンゼルスで行われた。元々、同じレコード会社所属のフライング・キティ・バンドが同地でレコーディングをする計画があり、そのついでに来生のアルバムも録ってしまおうというプロデューサーの多賀英典の意向で実現したものだった*4。なお、井上陽水に「来生が売れたら多賀さんは天才だ」とからかわれた事もきっかけになったと述べている*5。来生えつこは、まだ2枚目のアルバムなのに海外でレコーディングをする事態に、本当に訳の分からない世界だと感じ、どうなる事やらと思ったという*6。
因みに、スタッフは都合により先に同地に行ってしまった為、飛行機嫌いで国内線にすら乗った事がなかった来生は余計に嫌だったという*7。
現地では、フライング・キティ・バンドのアルバム『5・4・3・2・1・0』の全作曲及び編曲、そして本アルバムの全編曲に多忙を極めた星勝から小椋佳の歌詞にメロディーを付けるように依頼され、宿泊先のモーテルで急遽曲作りに勤しんだ*8。宿泊したモーテルとその食事は質素だったという*9。
来生は、約3週間の滞在日程はほぼレコーディングに費やされ、余り現地を探訪する事は出来なかったが、乾いた空気が肌に当たる感触が懐かしいと回顧している*10。なお、この時に購入した鞄を暫く愛用していた*11。
スタジオミュージシャンとして、デヴィッド・フォスター、ジェイ・グレイドン、ジム・ケルトナー等が参加しており、ブックレットに写真付きで紹介されている。なお、収録曲の中には日本国内でレコーディングをしたもの(部分)もあり、上田正樹等の日本人ミュージシャンも参加している。
レコーディングの1曲目は「
「甘い退屈」にハーモニカの演奏で参加した八木のぶおは、スタジオミュージシャンとしてはまだ駆け出しの頃で、また、元々星が所属していたザ・モップスが大好きだった事もあり、プレッシャーが大きく、強く印象に残ったレコーディングとして挙げている*14。ロサンゼルスで録音された音源にハーモニカを被せたが、妥協を許さない星に同じテイクを何度も演らされ、ダビングが何十回にも及んだ為、演っている時は逃げ出したいくらいだったが、ものを作る姿勢の凄さを感じたという*15。また、後日サンプル盤を貰い、外国人ミュージシャンの中に、数少ない日本人の1人として自分の名前を見た時は、何とも言えない満足感があったと語っている*16。
同じく「甘い退屈」に手拍子(Clap)で参加している磯田守人はキティレコードの社員(後にカメラマンに転職)で、宣伝部で来生や高中正義、RCサクセション等を担当していた。売れていなかった来生を同じ週にFM東京の複数の番組にブッキングしてしまい、フリーディレクターや編成部からクレームが来たが、来生がブレイクしてからは掌を返され、出演交渉をされたという*17。
当時、ステージで来生のバックを務めていたドラマーの平野肇は、本アルバムのレコーディングにジム・ケルトナーが参加すると聞き、サインを頼んだ所、来生はケルトナーが使用していたサイン入りのドラムヘッドを持って帰国してくれたという*18。
次作のオリジナルアルバム『By My Side』に収録されている「片隅にひとり」は当初、本アルバムに収録される予定でレコーディングされていた*19。但し、この時にドラムを担当したとされるスティーブ・ガッド(Steve Gadd)の名は、本アルバムに記載がない。
来生えつこは、ジャケット写真に関して、弟らしくない格好をさせられていて、この頃の来生が「キティのエノケン(榎本健一)」と言われていた事を明かしている*20。また、本アルバムがリリースされた頃から、南佳孝等、他のアーティストとの仕事が増え始めたという*21。
LPの帯では、前作のオリジナルアルバム『浅い夢』が写真入りで宣伝されている。
トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | トラック | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 収録時間 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
LP/CT | CD | LP | CT | LP/CT | CD | LP | CT | |||||||||
SideA-1 | 1 | つれない夕暮 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 4:45 | 19:45 | SideB-1 | 6 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:51 | 21:13 | ||
SideA-2 | 2 | 甘い食卓 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:44 | SideB-2 | 7 | 甘い退屈 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:10 | |||
SideA-3 | 3 | 天気雨 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:05 | SideB-3 | 8 | うらぶれて | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 4:33 | |||
SideA-4 | 4 | 灼けた夏 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 4:18 | SideB-4 | 9 | マダムとの散歩 | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:02 | |||
SideA-5 | 5 | ジグザグ(酔いどれ天使) | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:53 | SideB-5 | 10 | コンデンスミルク | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:18 | |||
SideB-6 | 11 | 挿話(エピソード) | 来生えつこ | 来生たかお | 星勝 | 3:19 |
※タイトル表記=SideB-1:長雨(ながあめ)/6(ジャケット・盤面):長雨―ながあめ―
リリース | メディア:規格品番 | レコード会社/レーベル | 備考 |
---|---|---|---|
1977.10.21 | LP:MKF-1019 | ポリドール/キティレコード | ○LPの帯は2種類(初出時と『夢の途中』発売時) |
CT:CKG-1018 | |||
1983 | CT:38CS-9022 | キティレコード | ○『DOUBLE PACK SERIES ジグザグ Sparkle』のA面に収録 |
1986.07.25 | CD:H33K-20044 | キティレコード | ○歌手デビュー10周年に際し、CD化 ○ジャケットデザインはLP版をアレンジ ○シール仕様の帯に「CDオリジナル・セレクション」「10th anniversary -since 1976-」の記載 |
1991.04.25 | CD:KTCR-1045 | キティレコード | ○ジャケットは1986年版CDと同様 |
1995.07.21 | CD:KTCR-1557 | キティエンタープライズ/キティレコード | ○歌手デビュー20周年に際し、高城賢によるデジタルリマスター ○帯に「20th anniversary」の記載 ○Q盤CD選書シリーズの1枚 |
2007.03.21 | CD:UPCY-6355 | ユニバーサルミュージック | ○21枚組CD-BOX『来生たかお大全集』に1995年版を収録 ○帯なし |
2013.06.19 | CD:PROT-1065 | Tower To The People | ○タワーレコード限定 ○新たにデジタルリマスター ○制作:ユニバーサルミュージック |
2018.12.19 | CD:UPCY-9870 | ユニバーサルミュージック | ○限定 ○ボーナストラックに「灼けた夏」(シングル・ヴァージョン)「マダムとの散歩」(シングル・ヴァージョン)を収録 ○紙ジャケット仕様 ○デジタルリマスター ○SHM-CD |
帯 | ジャケット | ケースの側面部 | ||
---|---|---|---|---|
LP | ジグザグ | ジグザグ | ジグザグ | |
CT | ※帯がないので該当なし | ジグザグ | ジグザグ | |
CD | 1986年版 | ジグザグ ZIGZAG | ジグザグ | ジグザグ |
1991年版 | ジグザグ | ジグザグ | ジグザグ | |
1995年版 | ジグザグ | ジグザグ | ジグザグ | |
2007年版 | ※帯がないので該当なし | ジグザグ | ジグザグ | |
2013年版 | ジグザグ | ジグザグ | ジグザグ | |
2018年版 | ジグザグ(復刻LP版) ジグザグ +2(新版) | ジグザグ | ジグザグ |