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 哲学者としてのウィルソンをどのように評価するのか?これはかなり困難な問題である。アウトサイダー・サークルでは、ウィルソンはサルトル?実存主義を批判し、フッサール?の現象学やホワイトヘッド?の思想からウィルソンは独自の可能性を切り開こうと苦闘している。彼の関心が基本的に哲学的なものであることは認めざるを得ない。しかし、その後、マスローを発見してから、彼はむしろ心理学的なアプローチで問題を追求していきました。彼は実存的な問題を心理学的に追求してきた、というのが妥当な評価である。
 彼の立場を哲学的に構築するには、かなりの努力が必要である。「X機能?」、「セント・ネオット・マージン?」、「ロボット?」など、彼独自の概念を作り出しているが、これを認識論や現象学にどのように移植するのか、われわれは考えなくてはならない。また、文学作品や心理学的な事例、あるいは犯罪の記録などを手掛かりに、彼は自分の思想を表現しているため、フッサール現象学やサルトルの哲学と比較するまでには、大きな間隙を埋めなくてはならない。
 しかし、彼の問題意識の重要性は哲学的にも無視できない、という強い印象があるのも事実である。どーすればいいのか、これはウィルソンがわれわれに与えてくれるもっとも重要な課題である。
 基本的には、ウィルソンの哲学は初期のアウトサイダー・サークルとマスロー発見以降の楽観的進化主義?とでも呼ばれるものの二つに分けることができるだろう。

アウトサイダー・サークルの哲学

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 26歳のデビュー以来、文学、宗教、歴史学、哲学、社会学、ファンタジー小説、心理学など、CWの幅広い知識を駆使したアウトサイダー・サークルの着実な歩みは多くの読者を魅了してきた。その後、オカルティズムへの関心を強めるようになったウィルソンとは、かなり違う真摯な研究態度を感じる人もいる。
 一連の著作はアウトサイダー問題を提示して、それに対する解決策を模索する作業だった。CWの予想では、アウトサイダーたちの陥った危機的状態から抜け出す道は確かにあるはずで、神秘主義思想、文学的想像力、フッサール現象学といったものの中にその糸口を見出そうとしてきた。意識の能動性を強調して、それを持続することによって、アウトサイダー問題を克服できるという見通しだった。

楽観的進化主義の哲学

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 マスローの心理学との批判的取り組みの中で、CWはマスローの思想に意識の能動性という考えを加えることで、楽観的進化主義の立場を形成できると考えた。
 当時流行していたロジャー・スペイリーの左右分離脳の研究をCW流に解釈して、アウトサイダー問題を解決するための課題として、ロボット?のように機械的作業に向かう左脳と芸術的で直観的な右脳の働きをどのように調和させるのか、という形に定式化した。CWがその後にアウトサイダーの問題はすでに解決されている、としばしば語っているのは、二つの心の調和に関する問題を解決したことを指している。
 CWはその後の大脳生理学の発展を取り入れていないことから非難されることがあるが、CWは自分の見解を主張するための手段として左右分離脳の研究を利用したに過ぎない。マスロー心理学の成果を取り入れた左右分離脳解釈は、必ずしも大脳生理学のアイデアを単純に剽窃したものというわけではない。
 この時期のCWの代表的著作は『至高体験』と『フランケンシュタインの城?』であり、小説では、マスローをマークスという思想家として登場させた『賢者の石』として作品化されている。