中村保男(1931-)は『アウトサイダー』、『賢者の石』、『フランケンシュタインの城?』など、多数のCWの著作の翻訳者。コリン・ウィルソンと同じ年の1931年生まれである。
東京大学英文科卒。翻訳家・評論家。福田恒存の紹介で、『アウトサイダー』で翻訳家としてデビューした。その後も、CWの著作の小説や評論など多数翻訳している。『アウトサイダー』がイギリスで出版されたすぐ翌年に日本で邦訳されたことの功績は大きい。彼の訳業がなければ、CWの著作が日本でこれまで浸透する事はなかったかもしれない。
彼の翻訳のあとがきでは、CWについての情報がさまざまに紹介されてきた。本屋での立ち読みで、あとがきの部分を読んでCWを知ったという人も多いはずだ。また、peak experienceの訳語として、由良君美?と四方田犬彦は「至高体験」を当てて『至高体験』として出版されているが、中村保男はこの言葉が出てくると「絶頂体験」を当てている。翻訳家としてのセンスの違いがこの辺に現れてくる。
翻訳のノウハウを紹介した『英和翻訳表現辞典』や『英和翻訳の原理・技法』などがある。この他、主要な翻訳書としては心理学者R・D・レインの『レインわが半生』(岩波書店)、ヴァン・ヴォクト?の『非Aの世界』、G・K・チェスタトンの『ブラウン神父の知恵』、フレドリック・ブラウン『まっ白な嘘』、J・G・バラード『結晶世界』、オルダス・ハックスレー?『永遠の哲学』などがある。翻訳書はとにかく多い。