勇者飛翔ファルブレイク第四話


449 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 13:52:34 ID:NwBnfJu9
雑談の流れをぶった切って申し訳ありませんが、第4話行きます・・・

麻生グループの本社ビルから数メートル離れた地点にある、巨大な倉庫。
本社ビル地下にあるブレイバーズ基地に直結したこの倉庫は、ブレイバーズの物資の搬入や保管の為に建てられたものだった。
その倉庫へ、輸送機に変形したセイバーヘッドが着陸する。下部には巨大なコンテナが二つマウントされている。
「やれやれ、年寄りに長旅は疲れるわい・・・」
コックピットが開くと、中には藤野の他に禿頭の老人が乗り込んでいた。ブレイバーズの科学者の一人であり、超AIの開発者の一人でもある、上田省吾である。
「まあまあ博士、割と快適な旅だったろ?」
セイバーヘッドがいたずらっぽい声で言う。
「よく言うわい。調子に乗ってアクロバット飛行の真似事なんぞやりおって・・・藤野、お前もセイバーヘッドの相棒なんだからちゃんと躾をせんといかんぞ」
「わかってますって。博士」
苦笑しながら、藤野は上田の説教を聞き流した。

第四話 集結!ブレイバーズ

セイバーヘッドに少し遅れて、セイバージャイロが倉庫に着陸する。
「ふう、二週間と少し離れてただけなのに、この周辺もずいぶん懐かしく感じますね」
開いたコックピットから現れた男はそういうと少し背伸びをした。
30代後半に見える男は顔に少し皺が窺えるが、それでもまだ全体からにじみ出る雰囲気は衰えを感じさせていなかった。彼がブレイバーズの隊長、武藤黒である。
「長旅御苦労様です、武藤隊長に上田博士。藤野クン、二人の送迎ご苦労だったな」
到着した武藤たちを迎えるために、乃木坂が現れる。
「お前さんは相変わらずみたいで何よりだ、乃木坂」
コックピットから降りた上田は乃木坂に歩み寄り手を差し伸べた。
「博士もご健勝の様でなにより・・・育毛剤変えました?」
「余計なお世話じゃ」
二人は親しい友人の様に他愛の無い会話を交わした。
「そして武藤隊長、例のロボットの調整は・・・」
話を一端打ち切り、乃木坂は武藤の方を見た。
「ええ、お陰様で無事完成しましたよ」
そう言うと武藤は軽く笑みを浮かべた。
「丁度いい機会じゃ、新型ブレイバーズのお披露目会とでも行かないか?」
上田がそう言ってセイバーヘッドが運んで来たコンテナの方を見た。既に二つのコンテナはセイバーヘッドから取り外されて地下基地への搬入準備が進められている。
「それよりも、先に済ませておきたい用事があるのですが・・・」
武藤は乃木坂を見た。
「・・・新入隊員のことですね?」
「ええ・・・」

「藤野さん、そろそろ戻って来る頃ですかね」
目の前に積み重ねられた資料に目を通しながらシンヤは呟く。
「そうね。昼過ぎには終わるなんて言ってたから、そろそろ帰って来るんじゃない?」
同じく資料の整理に明け暮れていた洋子が答える。
「どうせなら後2、3日行ったままだと嬉しいんですけどね」
シンヤは苦笑した。が、
「だれが行ったままだと嬉しいだって?」
ドアが開く音と共に、妙に温かい声が背中から聞こえた。無表情になって振り返ると、そこには藤野が同じく無表情で立っていた。
「・・・オカエリナサイフジノサン、オシゴトゴクロウサマデス」
超がつく程の棒読みでシンヤは言う。
「(噂をすればなんとやらってことね・・・)」
笑いを堪えながら、耳元で洋子が言う。性格だけじゃなくて現れるタイミングまで嫌な人だ。
「・・・まあいいや、それより相馬、お前に紹介したい人がいる」
「はい?」
予想外の言葉にシンヤは意表を突かれた。
「オレ達の隊長だよ。武藤隊長、入ってください」
そう言うと藤野はその場を横にどいた。
そしてその後ろから、30代後半の男、武藤が姿を現した。
「はじめまして、相馬シンヤ君。私がブレイバーズの隊長、武藤黒です」


450 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 13:55:32 ID:NwBnfJu9
「これで破壊された維新機士は6体目だな・・・」
池崎は無表情で言う。
「も、申し訳ございません!首領!」
荒木はひたすら頭を下げて池崎に詫びていた。
「・・・まあいい、下がれ・・・」
そう言って池崎はほくそ笑んだ
「例のブレイバーズという連中が我々の障害となる存在である事は十分に分かった。今後は維新と並ぶ重要課題の一つとして考えて行動しろ・・・」
「は、はい・・・」
冷汗を垂らしながら荒木は答えた。そこへ、
「んっふうん、相変わらず頼りないわねえ、荒木さんは」
ゾクっと来る様な声が聞こえて来た。
「・・・貴様は・・・」
荒木は声の主を見て顔をしかめた。
「んっふうん、そんな露骨に嫌な顔しなくてもいいんじゃな〜い?アタシ達一応維新夜天党の仲間なんだし〜」
不気味な女言葉で声の主、小坂は続ける。顔だけ見れば中々の美形であるこの男は、しかしそのなよなよとした態度と微妙におかしな女言葉を使う、要するにオカマであった。
「んっふうん、首領、次の作戦はあたくしにやらせていただけませんか〜?」
「お、おい貴様!首領に向かって何という失礼な言葉遣いを・・・!」
池崎に対してもその不気味な姿勢を崩そうとしない小坂に、荒木は思わず慌てふためいた。
「・・・まあいい、とりあえず話は聞かせてもらうぞ・・・」
池崎はその顔に冷酷な笑みを浮かべた。

「隊長!お戻りになられたんですね!」
洋子が駆け寄って来る。
「長らく留守にして申し訳ありませんでしたね、平野さん」
柔和な笑みで武藤は答えた。
「隊長ってことは・・・あなたが・・・」
「この隊で一番偉い人って事だ。分かるか?」
あたふたするシンヤに横から藤野が口を挟む。
「まあ、藤野君の言うとおり、ふつつか者ながらブレイバーズの隊長をやらせてもらっています」
そう言うと武藤は手を差し出した。
「大分遅れてしまって申し訳ありませんが、ブレイバーズ隊長として相馬君、君を歓迎します。今後ともよろしくお願いしますね」
そして再度笑みを浮かべた。
「・・・こちらこそ、よろしくお願いします、武藤隊長」
シンヤはハッキリとした声で返し、差し出された手を握り返した。

「で、そのテロリストとやらについての明確な情報はあるのかの?」
麻生グループ本社ビルの社長室に招かれた上田は、テーブルを挟んで対峙した麻生に尋ねた。
「いえ、それが・・・様々な線を当たってみましたが、これまで奴らは破壊活動を繰り返すばかりで、
何が目的なのかは未だにハッキリしていません・・・」
「・・・そうか・・・それじゃ答えようが無いのう・・・」
麻生の返答に上田は考え込む。
「そして博士、他にも気になる事があるのですが・・・」
その間に乃木坂が割って入る。
「奴らがこれまでの破壊活動に使用してきたロボット、あんな物を作るにはかなりの技術力が要されるハズですが、一テロリストにそこまでの事が可能でしょうか・・・?」
「・・・それについてもまだ回答は出来んな・・・いかんせん情報が少なすぎる。現時点で敵の目的が分からん限り議論を重ねるのは無駄が多い。
もう少し明確な情報を見つけてこなければな・・・」
「そうですね・・・今後も可能な限り情報収集に力を注ぎます・・・」
麻生、乃木坂両名は深々と頭を下げた。
「うむ、それよりビーストブラザーズの運び込みは完了したのか?ワシは早くあいつらを動かしてやりたくてウズウズしてるんじゃが・・・」


451 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 13:57:32 ID:NwBnfJu9
「んっふうん、この平和ボケしまくった雰囲気、相変わらず反吐が出るわ〜」
ビルの上から街の光景を見降ろしていたはそう言った。
「やっぱりこの国に必要なのは、平和よりも殺戮と破壊の嵐よね〜」
そう言うと小坂は手に持ったピンポン玉程度の大きさの鉄球が複数集まって形成されたボーリングの玉程度の大きさの鉄球を掲げた。
「んっふうん、さあ行っちゃいなさい、維新機士、無常ちゃん!」
そしてその鉄球を思い切り街に向かってブン投げた。

「えーあはい、いや分かってるんですけどどうしても・・・いやそこをどうにか・・・」
サラリーマンと思しき男が駐車場に停めた車の中で、電話の話し相手に向かって必死に懇願していた。恐らく商談か何かだろう。
「お願いしますそこをどうにか・・・せめて明日まで・・・クソッ!切りやがった!」
どうやら商談は失敗に終わったらしい。男はイライラしながら携帯を畳んでポケットに入れた。
「こっちがちょっと譲って出た位で付け上がりやがって!ざけんじゃねーよ!」
そう言って男は車を発進させようとした。が、
「・・・?なんで動かねーんだよ?」
エンジンを動かそうとしたが、車はピクリとも反応しなかった。
「ざけんじゃねーよこの役立たず!こんな時に故障とかお前までオレの事馬鹿にしてんのか!」
そう言ってむしゃくしゃした男はハンドルを思いきり殴った。
その直後、男の人生は終了した。

小坂が投げた黒い鉄球は空中で静止すると四方に飛び散り、同時に駐車場に止められた車を皮切りに、辺りの車が次々と爆発して行く。
人が乗っている、乗っていない関わらず次々と車は爆発していったが、何故かどれも炎上はしていなかった。
そして四散した車の部品は、磁石に引き付けられるかの如く黒い鉄球に向かって集まって行き、歪な人の形を成してゆく。
「具儀偽義魏・・・まっさつ、まっさつ・・・」
そして鉄球を核に維新機士、無常が12体出現した。
「んっふうん、無常ちゃ〜ん、とことん派手に暴れちゃいなさ〜い」

「これが新たなブレイバーズのロボットですか・・・?」
目の前の2体のロボットを見上げたシンヤが言う。
見せたい物がある、と乃木坂に言われてシンヤ達は格納庫に呼び出されたが、そこには今日輸送されて来た2体のロボットが佇んでいた。
「ええ、私の相棒、パンチジャガーとキックチーター、通称ビーストブラザーズです。先日ようやく完成したので、今日この基地に運ばれて来ました」
武藤が答えた。
2体のロボットは基本的に外見上は頭部と細部が異なる位でそこまで違いは見受けられないが、カラーリングはそれぞれ黄色と赤で塗られており、
派手な印象を受けた。
「この2体にはちょっと独自の機能が搭載されいていな」
そこへ、上田が現れた。
「お前さんと会うのは初めてじゃな、相馬シンヤ。ワシは上田省吾、ブレイバーズの技術者をやっておる」
「え、あ・・・はじめまして、相馬シンヤです・・・」
シンヤは頭を下げてお辞儀をする。
「上田博士は私と同じくブレイバーズ設立時からのメンバーでな。セイバーヘッドの開発にも関わっている」
「へえ・・・」
少し感心するシンヤ。
「それよりも博士、この2体に搭載されてる独自の機能ってのは・・・」
興味深げに藤野が尋ねた。
「ああ、それはだな・・・」
そう言おうとした瞬間、警報が響いた。


452 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 14:00:21 ID:NwBnfJu9
「エリア067で原因不明の自動車の爆発が連続で発生!同時に怪ロボットが破壊活動を開始して既に死者が数名発生しています!」
洋子が甲高い声で叫ぶ。
「こんなタイミングで敵さんが来るとはな・・・」
警報によって話を聞きそびれた藤野は少し不機嫌そうだった。
「・・・博士、ビーストブラザーズの整備は後どれ位で完了しますか?」
武藤は上田に尋ねた。
「・・・早く見積もっても30分はかかるな・・・」
「そうですか・・・分かりました・・・」
返答を聞いた武藤はシンヤと藤野の方を見る。
「聞いての通りです。申し訳ありませんが、私は30分間の間出撃する事は出来ません。二人とも、その間に戦えますか?」
武藤の問いに、2人は少し意外な顔をした。が、
「何言ってるんですか隊長。オレはブレイバーズですよ。30分位どうって事ありませんよ」
「オレだって、その位の間はどうにか持ち堪える事位出来ますよ」
「寝言は寝て言えよ」
「起きてますよ」
最後はまた罵詈雑言になったが、2人は答えた。
「だから隊長は、ちゃんと新しい仲間を完成させてから来て下さい」
そう言ってシンヤはニッと笑った。
「・・・ありがとうございます・・・司令!ブレイバーズ出動の許可を!」
そう言って武藤は麻生の方を振り返る。
「うむ、ブレイバーズ、出動!」

「新しい隊員の歓迎会が出来ないのは少し残念だな・・・」
「それは少し違うと思うが・・・」
ブレイクの不満に対して突っ込みを入れるシンヤ。
「オレっちもだぜ。新米と酒を飲みながら色々語り明かすつもりだったのによ」
「お前はそもそも酒なんか飲めんだろ」
藤野もセイバーヘッドと似た様な話をしていた。
「まあいいさ。さっさと切り上げて歓迎会の続きと行こうぜ」
そう言うと藤野とシンヤはそれぞれ操縦桿を握った。

「儀偽義・・・まっさつ・・まっさつ・・・」
維新機士、無常は手当たり次第に街を破壊して行く。12体の異形の姿に人々は恐怖し逃げ回った。そこへ、
「そこまでだ!怪ロボットども!」
ブレイクとセイバーチームが到着した。
「チェンジ!」
掛け声と共に、それぞれのロボがビークルモードから変形する。
「大将、今回はやけに数が多いぜ!」
辺りを見回したセイバーヘッドが言う。
「ひいふうみい・・・12体か・・・結構多いな・・・」
藤野は少し考えた。
「相馬、お前は4体倒せ!残りはオレ達が片付ける!」
「了解!」
答えると同時に、ブレイクとセイバーチームは跳躍した。


453 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 14:02:10 ID:NwBnfJu9
「喰らえ!ホイルスラッシャー!」
ブレイクはとりあえず手始めに目の前にいた無常に向かってホイルスラッシャーを発射した。
2対のホイルスラッシャーは左右にカーブを描き無常に向けて飛んで行く。
「儀偽夜唖!」
そしていとも簡単に、無常は三枚下ろしされた。
「?なんだ?こいつ凄く脆いぞ?」
「ああ・・・」
その様子にシンヤもブレイクも思わず拍子抜けする。
「まあいいや、後は3体・・・」
そう言おうとした直後。
「な・・・!?」
シンヤは言葉を失った。
切り裂かれた無常の残骸が痙攣したかのように震えだしたかと思うと、残骸が中に浮かび上がり、直後にはパーツ同士が再び歪な人の形を成す様に結合していた。
「どうなってるんだ・・・!?」
ブレイクもその光景に驚愕する。
「まっさつ、まっさつ・・・ぶれいばーず、まっさつ・・・」

「具儀屋唖亜!?」
セイバージャイロに切り裂かれ、そしてセイバードリルに貫かれ、2体の無常が砕け散る。
「おらおらおら!」
そしてセイバーヘッドのガトリング砲が、3体を粉砕した。
「これで5体か・・・」
「大将、ちょっと呆気無さ過ぎねえか?」
流石にここまであっさり破壊される敵をセイバーヘッドも不審に思った。
「確かにな・・・だが下手に手間かけさせられるよりはさっさと倒せた方が・・・」
藤野は直後にシンヤと同じく言葉を失った。
破壊した筈の無常がブレイクが切り捨てた物と同じ様に痙攣を起こし、再び元の歪な人型に戻ったのだ。
「藤野さん!こいつらいきなり再生し出して・・・」
通信機からシンヤの声が聞こえる。
「わかってる!どうなってやがるんだ?」
藤野は混乱した。
「まっさつ・・・儀偽夜唖亜!!」
そして直後に、再生した6体の無常が一斉に跳躍して襲い掛かった。

「んっふうん、無駄よ無駄。アタシの可愛い無常ちゃんはコアを破壊されない限りは何回破壊されてもすぐに復活しちゃうのよぉん」
ビルの上から無常に苦戦するブレイバーズを小坂は鼻で笑った。
「ま、倒す方法は無いには無い訳じゃないけど、多分無理ね〜んっふうん」


454 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 14:03:24 ID:NwBnfJu9
「ぐあぁぁっ!」
無常の突撃を喰らい、ブレイクは吹っ飛んだ。
「がっ!・・・大丈夫か、ブレイク・・・」
「あっ、ああ・・・」
立ち上がるブレイク。
「おらあぁぁっ!!」
一方セイバーヘッドは無常に思いっきりパンチを喰らわせたが、すぐに再生してしまう。
「くっ・・・なんて奴らだ・・・」
藤野も焦っていた。
正直無常単体は全く問題にならないレベルの力だ。装甲も非常に脆く、その点では大した脅威にならないだろう。
しかし、倒しても倒してもすぐに復活してしまう上に12体もいるのは本当にタチが悪い。既に何回破壊したか分からない位で、文字通りキリが無かった。
「儀偽義・・・儀偽義・・・」
疲弊していたブレイバーズに構う事無く、無常は攻撃を続けようとする。
「おいおい、流石にヤバいんじゃねえの?」
「ですね・・・」
シンヤと藤野の表情にも冷汗が浮かび始めていた。が、
「グオォォォォッ!!」
突然獣の叫び声の様な声が響く。
「・・・お前、今何か叫んだか?」
「いえ・・・」
困惑するシンヤと藤野。が、次の瞬間。
「儀屋唖亜亞阿!?」
突然目の前の無常が胴体を貫かれた。
「遅れてすみません!2人とも、大丈夫ですか!?」
無常を貫いた影、豹の様な姿をしたロボットから武藤の声が聞こえた。
「その声・・・まさか、隊長ですか!?」
シンヤは驚いて声を上げる。
「ええ、そうですよ。ようやくビーストブラザーズの整備が完了しました。
「て事はもう1体も・・・」
藤野がそう言おうとしたその時、
「具儀屋唖亜亞!!」
背後から無常がセイバーヘッドに向かって飛びかかろうとした。が、
「具下絵得柄江!?」
突然何者かの体当たりを喰らって、無常は大きく横に吹っ飛んだ。
「グオォォォッ!!」
地面に着地した体当たりを浴びせた張本人、チーターの様な姿をしたロボットが唸る・
「ひょっとしてあれが・・・」
「ええ、その通りです。私が乗っているパンチジャガーとキックチーター、この2体がビーストブラザーズです」
武藤は2体の獣型のロボットを紹介した。
「ビーストブラザーズ、ロボットモードに変形です」
「了解!チェンジ!」
武藤の声に応じる様に、パンチジャガーとキックチーターは立ち上がり、人型へと姿を変えた。
「はじめまして皆さん!ビーストブラザーズのパンチジャガーです!よろしくお願いします!」
「同じくキックチーターです!今後ともよろしくお願いします!」
2体のロボット、ビーストブラザーズは自己紹介とともに敬礼する。
「新しい、仲間か・・・」
「・・・へっ、頼もしいじゃねえか!」
ブレイクとセイバーヘッドは嬉しそうな声で言った。

「んん〜?何なのよアレ〜?聞いてないわよ〜ん?」
突然現れたビーストブラザーズを見て小坂は嫌な顔をした。
「まあいいわ、何体増えようとアタシの無常ちゃんの敵じゃないわ!さあ無常ちゃん!あのイケてない奴らを捻り潰しちゃいなさ〜い!」


455 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 14:05:27 ID:NwBnfJu9
「2人とも、あまり焦ってはいけませんよ」
冷静な声で2人に言う武藤。
「・・・分かってます・・・けど敵が・・・」
「とりあえずはこれを見て下さい」
シンヤの言葉を遮るかのように、ブレイクとセイバーヘッドのコックピットにパンチジャガーから送られて来た画像が映し出される。
「これは・・・」
それは無常の内部構造が映し出された物だった。だが構造と言っても、それらしい物は心臓に当たる部分にある黒い鉄球のみで、後は骨格らしき物もなにもない。
「この構造はここいる全てのロボットに共通しています恐らく、奴らはこの黒い鉄球を核に爆発した車の残骸を吸収、結合して形成されているのでしょう。しかも
このコアを破壊しない限り、おそらくこいつらは何度も再生してしまうのです・・・」
「そんな・・・」
自分達が気付かなかった場所に弱点があった事に、シンヤ達はショックを受けた。
「更に私の考えが正しければ・・・キックチーター!聴覚伝道システムを!」
「了解!」
武藤はもう1体の相棒に対してそう叫ぶと、コックピット上部から下がって来たイヤホンを装着する。
視聴覚伝動システム、ビーストブラザーズに搭載された特殊機能の名称の一つである。武藤の視覚と聴覚、パンチジャガーの視覚、キックチーターの聴覚を共有する
事で、肉眼では確認出来ない物体の内部構造や普通では聞き取れない様な音も拾う事が出来るというシステムである。
「・・・やはり私の想像通りか・・・」
しばらくの間聴覚伝道システムを使用していた武藤は、数分経ってイヤホンを取り外した。
「2人とも、あの12体の内、本物となるのは1体のみ、あとは全てダミーです!」
「ええっ!?」
またしても予想外の返答にシンヤ達は驚かされた。
「奴らのコアの駆動音を聴き比べてみたのですが、1体だけ不自然な程速いスピードで駆動する物が確認出来ました。恐らくそれが駆動することによって生まれる
エネルギーを他のコアが受け取る事によって、奴らは駆動しているのでしょう」
「って事は・・・その1体を叩き潰す事が出来れば・・・」
「奴らを倒す事が出来るハズです」
そう言うと武藤はパンチジャガーとキックチーターをビーストモードに変形させた。
「私が本体を叩きます!2人は援護をお願いします!ビーストブラザーズ!アタック!」
「了解!グオォォォッ!!」
雄叫びと共に2体の猛獣が疾走する。
「よし・・・ブレイク!」
「セイバーヘッド、行くぞ!」
ブレイクとセイバーチームも後ろに続いた。
「儀偽儀偽義!!」
行く手を阻もうと無常がわらわらと立ちはだかる。
「邪魔すんじゃねえ!!」
セイバーヘッドのガトリング砲が、無常の群れを妨害する。
「・・・」
そして無言で飛び掛かったセイバージャイロの一閃とセイバードリルの一撃が、無常を粉砕する。今度はコアも完全に破壊されていた。
「儀屋唖亜亞!!」
断末魔と共に、コアを破壊された3体の無常の残骸が転がる。だがもう再生する事はない。
「ホイルスラッシャー!」
同じタイミングでブレイクも他の無常に対して攻撃を仕掛けた。
「儀屋唖唖亜!」
2体の無常が切り裂かれたが、こちらもコアを切り裂いた為、復活する事はなかった。
「隊長!早く!」


456 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/05(日) 14:06:18 ID:NwBnfJu9
「標的、確認・・・!」
本体と思われる無常の周りには6体の無常が護衛の如く立ちはだかっている。
「儀偽儀偽義!!」
その内3体が本体目掛けて疾走するパンチジャガーに飛び掛かる。が、
「チーターファング!」
ロボモードに変形したキックチーターが横からその3体目掛けてキックを浴びせる。
「儀屋唖亜唖!!」
3体の無常はまとめて吹っ飛んだ。
「隊長!兄さん!今です!」
着地したキックチーターが叫ぶ。
「よし!パンチジャガー、行きますよ!」
「了解!ジャガーファング!」
パンチジャガーは両腕に収納されていたカギヅメの様な武器を展開した。
「具儀屋唖亜亞!!」
本体を含め残りの無常が一斉にパンチジャガーに飛び掛かる。
「うおぉぉっ!!」
パンチジャガーは腕を大きく振り上げた。そして、
「儀屋唖亜亞!!」
ジャガーファングによって、3体の無常が一瞬で切り裂かれた。コアは破壊されていないが、時間としては十分だった。
「行くぞ!!」
そう言うとパンチジャガーは瞬時に跳躍する。
「儀偽義!?」
そして空中にいた無常の本体に肉薄した。
「うおぉぉっ!!」
パンチジャガーは再び腕を振り上げた。そして、
「儀屋唖亜亞!!」
振り下ろされた腕によってコアもろとも真っ二つにされた無常は、直後に爆散した。


「きいぃぃぃ!!何なのよアイツら!アタシの可愛い無常ちゃんを破壊するなんて〜!!」
小坂は手に持ったハンカチを噛んで悔しがった。
「くうぅぅっ!!覚えてなさいよ!!」

武藤の言葉通り、コアを破壊されていなかった6体の無常も本体が破壊されると同時に活動を停止し、鉄屑と化した。
「いやー、今回は隊長がいなければホント危なかったですわあ」
基地に帰還し、コックピットから降りた藤野は苦笑しながら言う。
「オレも・・・正直あんな弱点があるなんて全然分かりませんでした・・・」
シンヤは少しうなだれた。
「いえ、今回は君達の後方での援護のお陰で、私は目標を破壊する事が出来ました。これは私一人の力ではなく、君達の協力あってこそですよ」
再度武藤は柔和な笑みを浮かべた。そこへ、
「御苦労じゃったな、お前さん達」
上田と乃木坂が現れた。
「まあ相馬よ。まだ若いんだからとりあえずそんな深刻に考えなさんな。何、実際にやってみて経験を積まなきゃ実力なんて物は身に付かないんだからな・・・」
「上田博士・・・」
シンヤはその言葉に少し励まされた。
「ワシは明日帰るが、ビーストブラザーズの面倒は頼んだぞ。乃木坂」
「分かってますよ」
乃木坂はニッと笑った。
「そう言えば博士、ビーストブラザーズの独自の機能ってのは・・・」
思い出した様に藤野が尋ねた。
「ん、あれか・・・んー・・・」
上田は少し考え込む。が、
「ま、その内分かるじゃろ、見てのお楽しみじゃ」
その返答に藤野は思わずずっこけた。
(未だこの国をどんな悪が狙ってるのかは計り知れん。だけどお前さん達ならこの国の為に全力で戦ってくれるじゃろう。頑張るんじゃぞ、ブレイバーズ・・・)

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