勇者飛翔ファルブレイク第五話


562 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:43:18 ID:1dSisMPP
第五話、行きます・・・
バン!
ブレイバーズの地下基地の一室から、乾いた銃声が響く。
バン!バン!
銃声は2発、3発と鳴り続いて消えた。
「・・・ふう・・・」
その部屋で銃を握っていた男、藤野は銃を下ろし、ゴーグルを外した。
「やっぱちゃんと継続していないと腕も落ちるんだな・・・」
そう言って藤野は手に持った銃・・・否、エアガンと、10発放った内6発的に命中したゴムの模擬弾を見て苦笑した。

第五話 咆哮!ソウトーガ

「お疲れさん、大将」
藤野が左手首に付けた通信機からセイバーヘッドの声が聞こえた。
ブレイバーズの隊員、正確に言うと超AI搭載のロボをパートナーに持つ者に与えられた通信機、ブレイアームズだ。
一見すると長方形の箱だが、その内部構造は麻生グループが電子コンテンツにおいて開発した様々な電子技術がフィードバックされており、あらゆる状況下での隊員と基地、
そしてパートナーとなるロボットとの通信を可能とする代物である。
そして最大の特徴の一つに、このブレイアームズはブレイバーズのロボの視覚、聴覚と直結している事が挙げられる。これにより、パートナーの身に起きた事態をロボはリアルタイム
で分かり、迅速な対応が可能になっている。いわばこのブレイアームズは、ロボにとってはそれ自体がもう一つの目とも言える存在なのだ。
「今日はいつもよりも冴えない感じだな」
そんな訳で、藤野の今の射撃訓練の様子をリアルタイムで見ていたセイバーヘッドが言う。
「まあな、最近チトサボり気味だったしな・・・」
藤野は肩を鳴らす。
ブレイバーズの基地には、藤野が今いる射撃訓練場の他にも隊員用の訓練施設がいくつか設けられている。
藤野はここの射撃訓練を気に入っていてよく入り浸っていたが、最近は怪ロボットの事後処理に追われる事が多く顔を出せずにいたのだ。そこへ
「お疲れ様です。藤野さん」
後ろのドアが開き、カップを二つ手に持った洋子が入って来た。
「どうぞ」
笑顔でそのカップの片方を差し出す洋子。
「おう、気がきくな」
そのカップを藤野は受け取った。
「よっ、姉さん。相変わらずのべっぴんだねえ」
洋子を見たセイバーヘッドが微妙にへらへら笑ったかの様に言う。
「ほめても何も出ないわよ、セイバーヘッド?」
「ハハハッ、オレっちはそんな見返りは期待しねえよ」
セイバーヘッドをあしらった後、洋子は藤野が座っているベンチに座った。
「お前も休憩か?」
「ええ、予想以上に目を通さないといけない資料が多くて・・・」
そう言うと洋子は背伸びをした。
「藤野さんはいいですよね。あんな沢山のデータと睨めっこしなくていいんですから・・・」
「馬鹿言え、オレだってこないだまではそのデータと戦ってたんだぞ」
少しムッとした様に藤野が言い返す。
「それよりアイツはどうした?」
「アイツって、相馬クンの事ですか?」
「そうそう、ちゃんと仕事する様に言ってあんのか?」
藤野の問いかけに、少し考える洋子。
「相馬クンなら確か、隊長と手合せしていると思いますけど・・・」


563 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:44:46 ID:1dSisMPP
「くっ!くっ!」
目の前の武藤に向かって、シンヤはひたすら拳を突き出していた。
「どうしました相馬君、あまり当たっていませんよ」
当の武藤は苦笑しながらその拳をかわしている。
二人が今戦っているのは訓練施設の一つである挌技上である。中学、高校にある柔道部や剣道部が練習に使う施設と似たような物と捉えてもらいたい。
「まだ・・・まだまだ!」
シンヤは更に力を込めて拳を繰り出した。が、
「・・・少し力が入りすぎですね・・・」
そう言った武藤が一瞬無表情になる。そして次の瞬間、
「なっ!?」
目の前にいた武藤が一瞬でいなくなって、シンヤは動揺した。が、
「ここですよ」
背後から武藤の声が聞こえた。どうやら隙を突いて一瞬で背後に回り込んだらしい。
「しまっ・・・」
シンヤは後ろを振り向こうとした。が、
「がっ・・・!?」
次の瞬間、シンヤは声が出せなくなり、そのまま地面に倒れ伏した。
先程武藤が放った肘鉄が背後に直撃したのだ。
「そ、相馬!」
その様子に驚いたのか通信機からブレイクが声を出す。
「ぐっ・・・ごほっ・・・げほっ・・・」
声を出せずにひたすらむせ返るシンヤ。
「すいません!相馬君、大丈夫ですか!?」
その様子に武藤が心配そうな顔で駆け寄って来た。
「ゴホッ・・・ゲホッ・・・な、なんとか・・・」
少し調子が戻ったのか、シンヤは苦笑して答えた。
「私も少しやり過ぎた様ですね・・・少し休憩にしましょうか・・・」

事の発端は先日になる。
「相馬君、後で私の手合わせをしてもらえませんか?」
パソコンに向かってデータの処理を行ってるシンヤに武藤が話しかける。
「手合せ・・・ですか?」
「ええ、恥ずかしながら私は体を鍛えるのが趣味でしてね・・・最近思う様に時間が取れずに体が少し鈍ってる様な気がするので調子を取り戻す為にも
ウォーミングアップの為に久しぶりに体を動かしたいと思いまして・・・」
武藤は少し照れくさそうに説明した。
「へえ・・・」
シンヤは少し感心した様に話を聞いていた。体を鍛える事自体はシンヤも嫌いではない。
「君は体力面に関しては中々優れていると聞いています。少し手合せしてもらいたいのですが・・・」
「・・・」
武藤の話にシンヤは少し考え込む。が、
「構いませんよ。オレなんかで良ければ、いくらでも相手になりますよ」
シンヤは笑って快諾した。


564 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:45:31 ID:1dSisMPP
「いやはや、隊長はやっぱり凄いです・・・」
シンヤは苦笑しながら目の前のカップに入ったお茶を口に含んだ。
あの後シンヤと武藤は射撃訓練を終えた藤野と洋子のペアと合流して食堂に集まっていた。
「ったく情けねえなあ。二日続けてボロ負けなんて鍛え方が足りねえんじゃねえの?」
昨日、今日のシンヤの戦績を知った藤野はいつもの様に嫌味な口調で言う。シンヤも少し顔を逸らしただけで特に反応は無かったが。慣れだろうか。
シンヤと武藤が手合せしたのは昨日と今日の二回だったが、いずれもシンヤは武藤に負かされていた。
体力が続く限りひたすら攻め続けたシンヤだったが、武藤に攻撃を当てる事が中々出来ず、隙を突かれて敗北していた。
「けどそういう藤野さんも一回隊長と手合せして白目剥いて倒れちゃった事ありましたよねー」
少し小悪魔っぽい声で洋子が口を挟む。
「・・・うるせえな・・・」
嫌な思い出を掘り返されたのか、藤野は再度ムッとする。さっきとは逆にシンヤが笑いを堪えてこっちを見ている。
「まあまあ二人とも、最初の内は誰しも慣れていないのは当然ですよ」
二人をなだめる様に武藤が苦笑する。
「けど相馬君、君の腕前も悪くはありませんよ」
「えっ?本当ですか?」
武藤の意外な一言にシンヤは少し驚いた。
「ええ、体力面での問題は全く無いどころか平均以上でしょうし、一撃一撃の重さや動きも決して悪くはありません。むしろあまり長引き過ぎると私の方が危なかったくらいですよ。
ただ・・・」
そう言うと武藤は一度言葉を切った。
「力加減の配分がちゃんと出来ていないというか・・・あまりに目の前の敵を倒そうとするあまりについつい力が入り過ぎて、結果的に様々な隙が生まれていますね。ここら辺は早めに
直しておかないと、後々大変な思いをする事になりますよ」
「な、なるほど・・・」
シンヤは思わず感心して聞き入っていた。これが藤野だったら一ミリも誉めようとせずひたすら嫌味を並べた言葉になっていただろう。ホント、言葉は言う人によってこうも印象が変わる
んだなとシンヤはつくづく思った
「なんか文句あんのか?相馬」
そんなシンヤの心を読み取ったかは知らないが、藤野が無表情で話に入って来た。そこへ、
「皆、すまないが格納庫まで来てくれないか?」
通信機に乃木坂からの連絡が入る。
「ファルブレイクとトライセイバーの新しい武器が完成したんだ。一度見に来てくれ」

「で、要望通りの物は造れたのか?」
腕組をしながら、荒木は村上に対して問う。
「お前さんは少し理想が高すぎるぞ・・・まあいいか、お望み通りの仕様に仕上げてやったぞ」
そう言うと村上は倉庫の照明を点けた。
「おお・・・」
照らし出された維新機士の姿を見て感嘆の声を上げる荒木。
その姿は細身な下半身に対して上半身と腕部が極端に大きい特異な姿だった。それでも異形だらけだったこれまでの維新機士よりは幾分かオーソドックスな姿である。
「維新機士、雷鳴だ。要望通りにスピードとパワーを最大限に引き上げられる構造になっている。無人機だから出来る荒技だな」
村上は淡々と話す。
「ククク・・・素晴らしい、この力を持ってすれば、あの憎たらしいブレイバーズと無礼極まりないオカマを黙らせる事が出来る・・・」
オカマとは言うまでもなく小坂の事である。荒木は彼の事は生理的にも人間的にも嫌いだった。
「やはり小賢しい戦法など必要ない!戦闘に必要なのは圧倒的な力!敵をねじ伏せる力!全てを打ち砕く力!それだけだ!フハハハハハ!!」
「・・・」
やはりコイツはバカだなと、村上は内心思った。


565 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:47:18 ID:1dSisMPP

「この二つが、ファルブレイクとトライセイバー用の新たなる装備、ファルシールドとセイバーショットだ」
自信ありげに、乃木坂は壁に立掛けられた目の前の二つの新装備を紹介した。
一つは三角形の巨大な板、もう一つはショットガンの様な形状の巨大な銃だった。
「まずはファルシールドから説明させてもらう。これはその名の通り、ファルブレイク用の盾なんだが、ただの盾じゃないぞ」
そう言うと乃木坂はファルシールドの先端を指差した。
見るとそれは鳥の嘴の様な形状のパーツが長く伸びている特異な形状だった。
「あの尖ったのは・・・」
その形状にシンヤは少し首をかしげた。
「気になるだろう?実はこのファルシールドは盾だけじゃなくて突撃槍としての機能も持っていてな。内部にブースターが四基搭載されていて、これ単体でも結構な出力を誇るんだ。更にあの尖ったパーツは
ファルソードの数倍の強度を誇る超鋼角ユニットになっている。これを腕に装備してファルブレイクの機動力と合わせて相手に突撃すれば、それだけでも結構なダメージを相手に与えられる訳だ。
「へえ・・・」
詳しくは分からないが、とにかく新しい武器が手に入ったというのは理解できた。
「そしてもう一つ・・・トライセイバー用の武器、セイバーショットだ」
乃木坂はもう一つの装備を見た。
「博士、これもガトリング砲と同じで空気を圧縮して放つ武器ですか?」
「鋭いな。その通り、このセイバーショットもガトリング砲同様に圧縮した空気を弾丸にして放つ。威力に関してはガトリング砲よりも遙かに高い。が、」
言い終えると乃木坂は言葉を切る。
「残念だがこの二つの武器にはそれぞれ弱点があってだな。ファルシールドは突撃による威力は高いがその威力ゆえに直進以外の攻撃が難しく柔軟性に関してはファルソードに比べるとどうしても劣ってしまう。
また、セイバーショットは弾数制限こそないがガトリング砲の様な連射は当然出来ない上に、一発一発の間隔も大きい。つまりこの二つは威力に関しては申し分ないと思うがそうそう使える代物では無いという事だな・・・」
「・・・つまり、今までの戦い方と上手く組み合わせないと性能を発揮できないって事ですね・・・」
「まあ、そういう事だな・・・」
武藤の問いに、乃木坂は苦笑しながら答えた。
「・・・だそうだ、相馬。お前、力加減の配分が出来ない様な不器用ぶりなんだから、使う時は気をつけろよ」
「大丈夫ですよ」
やはり、この人が言うとどんな言葉でも嫌味に変わるんだなあとシンヤは思った。ある種の才能なんだろうか。
「まあまあ、そう難しく考えるな。ファルシールドは無理に攻撃に使わなくても盾としても十分使えるし、セイバーショットもそこまで扱いは難しくないはずだから大丈夫だ。なあに、自分に見合った戦い方をすればいいのさ」
そう言って乃木坂は二人をなだめた。
「さて・・・ファルブレイクとセイバーヘッドの話はここまでにして・・・武藤隊長」
少し改まった顔で、乃木坂は武藤を見た。
「・・・ビーストブラザーズの事ですか・・・」
武藤も少し険しい顔になる。
「・・・博士、ビーストブラザーズの事ってのは・・・」
上田に二回同じ事を聞いて両方ともはぐらかされた藤野にとっても気になる話だった。
「・・・丁度いい機会だな。君達にも少し話しておくか・・・」
そう言うと乃木坂は改めてシンヤと藤野を見やった。
「ビーストブラザーズの独自の機能、それはズバリ合体機能だ」
「合体・・・って事は、あの二体が合体出来るって事ですか?」
シンヤが言う。
「まあ、そう言う事だな・・・」
「へえ、超AIを持ったロボ同士も合体出来るんですか?」
意外そうな顔をして藤野が訪ねる。合体機能自体はブレイクもセイバーヘッドも持っているが、どちらも相手はサポートメカ、自我を持たないロボットである。
「ああ。機能自体は既に確立されているから問題ない。だが、合体によって上田博士も思いもよらなかった事態が発生してしまってな・・・」
乃木坂は苦笑した。
「思いもよらない事態ってのは・・・」
シンヤがそう言おうとした時、警報が響いた。
「・・・なんでいつもこういうタイミングで鳴るんだろうねえこの警報は・・・」


566 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:48:04 ID:1dSisMPP

「儀偽儀偽義・・・まっさつ・・・まっさつ・・・」
維新機士、雷鳴は街を手当たり次第に破壊する。そこへ、
「待てい!」
その攻撃を阻止する為に、ブレイク、セイバーヘッド、ビーストブラザーズが駆け付けた。
「ククク・・・来たなブレイバーズ・・・」
その様子をビルの上から見ていた荒木はニヤリと笑う。
「今まで我々に辛酸を舐めさせ続けた罪を、ここで償わせてやる!行け!雷鳴よ!」

「ウイングフォーメーション!」
「セイバーフォーメーション!」
ブレイクとセイバーヘッドは即座にそれぞれのサポートメカと合体した。
「飛翔合体!ファルブレイク!」
「緊急合体!トライセイバー!」
二体のロボが力強く名乗りを上げた。
「行くぞ!ファルソード!」
ファルブレイクは背中に装備したファルソードを引き抜いた。
「でやあぁぁぁっ!!」
ファルソードを手に斬りかかるファルブレイク。
切っ先は雷鳴の肩口、直後に、鉄と鉄同士がぶつかり合う鈍い音が響いた。が、
「なに・・・!?」
ファルブレイクは驚愕した。敵の装甲を斬り付けたものの、相手には全く効いていない。
「儀偽義!!」
そこに、雷鳴の右パンチが襲いかかる
「ぐあぁぁっ!!」
ファルブレイクは虫の様に呆気なく吹っ飛ばされた。
「ファルブレイク!野郎!」
トライセイバーはガトリング砲を構えた。直後に弾丸が発射される。
「儀偽義!!」
だが、雷鳴はその弾丸をいずれも軽快にかわしてゆく。
「儀偽威!!」
雷鳴はブースターを展開し、瞬時に跳躍して来た。
「真正面から向かって来るのか、いい度胸だ!」
拳を構えて雷鳴に向かって行くトライセイバー。正面から殴りに行くつもりだ。
「おらあぁぁっ!!」
叫びながら拳を振り上げる。が、
「なっ!?」
目の前に迫った所で、雷鳴は姿を消した。
「トライセイバー!後ろだ!」
藤野が叫んだ。が、
「儀偽威!!」
雷鳴の拳が振り下ろされたのはその直後だった。
「があああっ!!」
拳が後頭部に直撃し、セイバーヘッドは地面に向かって転落して行った。


567 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:49:46 ID:1dSisMPP

「やはり、今回は中々の強敵の様ですね・・・」
少し離れた場所で様子を見ていた武藤が言う。
「二人とも、大丈夫ですか?」
ブレイアームズに通信を入れる武藤。
「ええ、なんとか・・・」
「こっちも、大丈夫です・・・」
「そうですか・・・良かった・・・」
少し苦しそうだが、二人とも健在らしく、武藤は胸を撫で下ろした。
「パンチジャガー、視覚伝動システムを!」
「了解!」
パンチジャガーが視覚連動システムを作動させ、同時に武藤は上部から下がって来たゴーグルを装着した。
「・・・成程・・・」
敵の内部構造を読み取った武藤はゴーグルを取り外し、ブレイアームズに向かって叫んだ。
「二人とも!私達が相手を撹乱します!その隙に二人は敵に少しでも多くのダメージを与えて下さい!」
「りょ、了解!」
その声に少し驚きつつも、シンヤと武藤は返事をした。
「よし、パンチジャガー、キックチーター、合体です!」
「了解!」
同時に、ビーストブラザーズは空中へ跳躍した。
「ブラザーフォーメション!」
掛け声とともに、ビーストブラザーズはロボモードの頭部と腕部を収納、同時に背中に折り畳まれていたアームが伸びて拳がせり出し、胸のプレートが起き上がり、パンチジャガーが人の左半身、キックチーターが右半身の様
な姿になる。
その二つが合わさって人の様な姿を成した。起き上った胸部プレートは一つになり頭部に当たる部分を形成した。
そしてパンチジャガーから分離したパーツが胸部に合体、同時に、頭部に青い光が宿った。
「双獣合体!ソウトーガ(双頭牙)!」
ビーストブラザーズが合体したロボ、ソウトーガは名乗りを上げた。

「あれが、ビーストブラザーズが合体した姿か・・・」
驚くシンヤと藤野。が、
「へっへーん♪みんなー!おいら達のカッコいい合体、ちゃんと見ててくれたー?」
「・・・へ?」
予想外のあっけからんとした声が聞こえて、二人は呆然となった。
「もー!しっかり見てくれないと怒るからねー!ねえあんちゃん?」
「ええ、そうですね・・・」
あんちゃんというのは武藤の事なんだろうが、呼ばれた本人は少し照れくさそうだった。
「これが、合体時に発生する問題でな・・・」
乃木坂からの通信が入る。
「合体時にはパンチジャガーとキックチーターの人格が統合されて一つの人格が誕生するシステムになっていたんだが・・・まさかこんなやんちゃ坊主が出来上がるとは思いもよらなんだ・・・」
乃木坂は苦笑していた。
「そういう訳で二人とも、手筈の通りお願いします」
「りょ、了解!」
少し呆気に取られていた二人も戦闘態勢を取った。
「行きますよ!ブレイバーズ、アタック!」
掛け声と共に、三体のロボは一斉に跳躍した


568 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:50:42 ID:1dSisMPP
「ソウトーボウ(双頭棒)!」
ソウトーガは背中に収納されていた二本の棒を取り出し、合体させた。棒状の武器、ソウトーボウである。
「この戦い、オイラ達がいただきだもんねー!」
軽快な動きで雷鳴に向かって行くソウトーガ。
「儀偽威!!」
雷鳴はソウトーガに向けて拳を振り落とす。
「セイッ!」
だが、ソウトーガは余裕で拳をかわした。全長はファルブレイクやトライセイバーの半分程度しかないが、その分機動力はかなり高い。
「どこ見てんだよー♪おしりペーンぺーン♪」
尻を叩きながら挑発するソウトーガ。
「具儀威居!!」
怒りながら拳を振りまわす雷鳴。だがそのどれもかわされて当たりはしない。
「オレ達を忘れるなよっ!」
トライセイバーがガトリング砲を構える。
「おらおらおらっ!!」
ガトリング砲から一斉に玉が発射された。
「儀偽義!」
弾丸をかわしながら今度は標的を変えたのか、雷鳴はトライセイバーに襲い掛かって来た。
「さっきみたいには行かねえぜ!!」
拳を振り上げながら突進して行くトライセイバー。
「うおぉぉっ!!」
距離があと少し間で縮まった。が、
「儀偽威!」
雷鳴は先程と同じ様に、再びトライセイバーの背部に回り込んだ。が、
「ファルソード!」
すぐさま上空からファルブレイクが斬りかかる。
「儀偽威!?」
これには雷鳴も反応出来なかった。そして、
「儀偽屋唖!!?」
頭部に一撃を喰らった雷鳴は一瞬よろめいた。
「トライセイバー!」
「おうよ!」
待ってましたとばかりに、トライセイバーは雷鳴の腹部にパンチを叩き込んだ。
「具絵得柄!!」
その衝撃で雷鳴は後方に吹っ飛んだ。

「具儀偽義魏・・・」
怒りにも似た呻き声と共に、雷鳴が起き上がる。が、
ミシッ・・・
普通では聞き取れない程小さな音と共に、雷鳴の脚部関節がわずかに軋む。
「やはり・・・」
だが、武藤はそれを聞き逃さなかった。
「藤野君!敵は上半身の重量とダメージで脚部が壊れかかっています!動きを止めるチャンスです!」
「了解!」
武藤の指示と共に、トライセイバーはセイバーショット構えた。
「儀偽儀偽義!!」
叫び声と共に、再び雷鳴が突進して来る。
「派手に行くぜえ!!」
そう言うとトライセイバーは照準を定め、トリガーを引いた。


569 名前: 勇者飛翔 [sage] 投稿日: 2008/10/19(日) 14:52:17 ID:1dSisMPP

「儀屋唖亜!!」
セイバーショットによって右足を破壊された雷鳴は、叫び声と同時に姿勢を崩した。
「相馬君!今です!」
「了解!行くぞブレイク!」
「おう!」
左手にファルシールドを装備したファルブレイクは、次の瞬間背部のブースターを展開し、一気に雷鳴に突進する。狙うのはトライセイバーが与えた傷口唯一つだ。
「儀偽義魏!?」
雷鳴はかわそうとするが、脚部を破壊されて逃げる術は無かった。
「行くぞおぉっ!!ジェットスマッシュ!!」
鳥の嘴の如くファルシールドを構えたファルブレイクが迫る。そして、
「儀儀偽義魏!?」
雷鳴は叫び声を上げた。トライセイバーの一撃によってへこんだ装甲がどんどん湾曲し、傷口を広げて行く。そして
「偽夜唖亜亞!!」
雷鳴の断末魔の叫びが響く。ついに装甲が決壊し、ファルシールド、否、ファルブレイクの腕部が雷鳴の腹部を貫いたのだ。
「ぬんっ!」
腹部を引っこ抜き、後方に跳躍するファルブレイク。直後に雷鳴は爆散した。

「ぐううぅっ!!またしても我が維新機士をおぉぉっ!!」
荒木は歯軋りをしながら悔しがった。
「覚えていろ!!次こそは必ず!!」

「やったやったー♪オイラ達の大勝利だもんねー♪」
戦いが終わって、ソウトーガは子供みたいに(実際子供だが)はしゃぎ回った。
「こらこらソウトーガ。あまりはしゃぎ回ってはいけませんよ」
「えー別にいーじゃーん」
そんなソウトーガをたしなめる武藤。その姿は父親と子供の様である。
「まさか、あんな元気なロボットが誕生するとはなあ・・・」
ファルブレイクは少し苦笑する。
「ま、面白そうだしいいんじゃねえの?」
トライセイバーが言う。
何はともあれ、力強い味方になってくれるのは間違いないだろう・・・多分。

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