天空勇者フライトナー第6話


『空宙合体!エアバスター!』


フライヤーズ格納庫。
「ふう、これでよし、と」
修理用のスポットに固定されたスカイライナー。
スカイライナーは戦闘で内部回路が焼けてフォレッドの超AIとの接続が一時的に切断されているため、修理中だ。
その胸部、フォーシィの客室からカイトが出てくる。
そこから伸びるワイヤーを伝って地上へ。
「いいぞ。起動してくれ」
コンピュータに待機する整備員に指示する。
数秒後、モーター音とともに目に光を灯すスカイライナー。
「ライナーズ、フォレッド参上! ……ん?」
起動早々ハテナだらけのフォレッドもといスカイライナー。
合体状態で起動したために混乱しているようだ。
「悪いなフォレッド。合体解除プログラムは、お前にしかインストールされていないから合体を解けなかったんだ」
カイトが説明するとスカイライナーは納得したようにうなずいた。
「そうか。ところでフライヤーは……」
思い出したようにカイトに問いかけるスカイライナー。
「……フライヤーは今も修理中。機体は無事だが、AIがどうしても直せない。完全に死んではいなかったんだが」
カイトは答えた。
そこでスカイライナーはこう返した。バックアップを使えば、と。
カイトは首を振った。
真っ先に試したが、結果は接続失敗。
機体側から拒否された。
おそらく、原因はAH-1。
僅かに残る自我から取り替えを拒否している。
機械がこうなるとは考えにくいが心を持つ超AIなら……。
「つまり、AH-1自身でないとフライヤーは動かせないということだ」
もしくはマニュアルだ。
と、突然カイトのポケットから呼び出し音が鳴る。
「カイト、ちょっと頼みたい」
こんな時でも緊急事態は待っちゃくれない、か……。
カイトは通信ボタンを押した。
「どうした?」
「第二区、ロボットが暴れてると通報があった」
暴れロボット……おそらくはフォグ・ラインだ。
カイトは了解とだけ返し、通信を切った。
「ということだ。俺はアイツらの調整が終わり次第合流する」
「了解。カイト、無理はするなよ」
「あぁ、解ってるさ」
「それじゃ行ってくるぜ」
カイトはカタパルトにより加速するスカイライナーを見送ると、スカイライナー用とは反対のスポットへと走っていった。


第二区画。
「……いたって平和な街じゃねぇか」
スカイライナーが愚痴をこぼした。
一応、警戒はしているのかライフルはしっかり構えている。
辺りを見回してもみるが、石ころ一つ見当たらない。
「ガセか」

「その通り。私は暴れてなどいない」

「そうか。何っ!?」
背後から聞こえた声にスカイライナーが振り向くと……。
「ハハハッ! まったく単純だな。初めからこうしておけば良かったのだ。通報したのは私だよ」
そこには見慣れた黒い機体。
そう、ブラックナイトメアである。
「フォグ・ライン……貴様……」
ブラックナイトメアの姿を見るやいなやライフルを構えるスカイライナー。
「慌てるな、生憎私はフライトナーにしか興味はない」
軽く流すフォグ・ライン。
「だが、お前しかいないのなら……戦う価値はない。無意味な通報になったかな」
その言葉にスカイライナーは怒りを覚えた。
同時に、冷静さを失った。
「戦う価値はない、か。その言葉、後悔させてやるよ!!」
ライフルを構え、乱射し始めるスカイライナー。
ブラックナイトメアは軽々とその弾をかわしていく。
「まったく、フライヤーズは単純だな。あっさりと私の煽りに乗ってくれるとは」
降り注ぐ弾幕の中、背中から漆黒の大剣を引き抜くブラックナイトメア。
この動作中は動きが止まるためビシビシと弾は当たる。
が、ブラックナイトメアには初代から続く、ビームを弾く装甲が装備されている。
結局、スカイライナーの攻撃は無駄に終わった。
「終わりか。ならば次は私の番だ!!」
フォグ・ラインはブーストペダルを踏み込んだ。
ブラックナイトメア背部のブースターに火が点き、瞬時に時速は300km/hを超えた。
猛スピードでスカイライナーに突っ込むブラックナイトメア。辺りには巻き上げられた砂ぼこりが立ち込める。
スカイライナーはあっけにとられ、ただ呆然と立ち尽くしている。
ブラックナイトメアが大剣を振り上げる。そして……。
「これで終りだ!」
一気に降り下ろされる。
金属の弾ける音。
その衝撃に吹き飛ぶ砂ぼこり。
「何!?」
声を発したのはフォグ・ラインだ。
己の目には信じがたい光景が映った。
晴れた視界に現れたのは、
「世話かけさせやがって」
自らの背丈ほどの長さの、旅客機主翼を模した大剣"ウィングスラッシャー"で漆黒の刃(やいば)を受け止めるロボット。
胸には旅客機のノーズ部分が見受けられる。
さらにその刃をはね除け、大剣を構え直しブラックナイトメアと向き合う。
「あまりいじめてやるなよ」
ブラックナイトメアの背後。
胸にスペースシャトルのノーズ。
大型な、シャトルとプロペラントタンクを模した大口径ビームライフル"バーンシューター"を構えたロボット。
そして、上空。
現れたのは、フライヤー。AH-1は非起動。
「ふぅ、なんとか間に合ったな」
言ったのはカイトだ。
「カイト、やっと来たか……助かった。で、こいつらは?」
スカイライナーの疑問に応えるようにカイトが続けて言った。
「説明しよう! フライヤーズ新メンバー、ナローバスターとシャトルバスター! 二人合わせて」
『バスターズ!』
いつの間にか2体のロボットはブラックナイトメアの前でポーズを取っていた。

「闇の力のロボットめ」

「とっとと研究所に帰りやがれ!」

ここですかさずツッコミを入れるカイト。
「パクリはダメだー!!」
『え?』
「え? じゃなくて」

「くそっ……私はバカにされているのか!! いいだろう、本気モードだ!」
漆黒の剣を振り回すブラックナイトメア。
だが当たらない。
それもそのはず。ブラックナイトメアに比べ、バスターズ単体ロボは随分と小さいのだ。
ひょいっと避けられてしまう。
「えぇい! ちょこまかと鬱陶しい奴等だ!!」
バスターズの連携に翻弄され、どんどん冷静さを失うフォグ・ライン。
剣の振りも次第に大振りになっていく。
やがて、
「しまった! 抜けない……! 情けない!!」
ハイパワーで振るった刃が地面に深々と突き刺さる。
カイトはそれを見逃さなかった。
「(しめた!)今だ! 天空合体! 空宙合体!」
『了解!』

バスターズが飛び上がりそれぞれビークルモードに変形。
背中合わせに並ぶと、ノーズが折れ曲がり肩部となる。
それぞれの主翼が分離、ナローの主翼が背部、シャトルの翼が胸部に合体。
テールが反転し脚に変形。
肩部から腕が伸び、先から拳をつき出す。
背面にウィングスラッシャー、腰にバーンシューターを接続。
最上部、頭部がせりだし目が黄色く点灯する。

「空宙合体! エアバスター!!」
そして、
「天空合体! フライトナー!!」
エアバスター、フライトナーが地面に降り立つ。
同時にカイトが口を開いた。
「フライヤーズの熱き魂が!」
間髪入れずエアバスターが続ける!
「卑怯な根性を打ち砕く!」
そして、スカイライナーが突っ込む!!
「結局パクリじゃねぇか!! てか3対1って俺たちの方が卑怯だ!」

「やはり私はバカにされているのか!!! ……しかし抜けないものだな……」
焦るフォグ・ライン。
ブラックナイトメアの剣にはデザイン上、返しがついているため抜けにくいのである。
「行け! エアバスター!!」
カイトが命令を出す。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
ウィングスラッシャーを引き抜き突撃するエアバスター。
「ウィング……スラッシュ!!」
エアバスターはブラックナイトメアを叩き斬った。
脱出ポッドが飛び出し、ブラックナイトメアは爆発とともに大破した。
「フライヤーズ……丸腰相手に……卑怯者ぉぉ!!」
フォグ・ラインは地平線の彼方へと消えていった。

こうして、今日も街の平和は守られたのであった。

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