天空勇者フライトナー第4話


天空勇者フライトナー

「大苦戦!謎の巨大ハエトリ草!」


 時刻は午前7時40分。
 カイトはぐーすか眠っている。
「むにゃ……もぅ食べられない……むにゃ……」
 とってもベタな寝言を言いながら熟睡中だ。
 ちなみに場所はいつもの休息室。
 テレビをつけっぱなしで眠っているのかニュースや音楽が流れたりしている。
 ふいに、ベッド横のテーブルに置かれた通信機から声が発せられる。
「こちら第1区パトロール隊! カイト! 事件だ!」
 しかし、なおも熟睡していて起きる様子はない。
「おい、カイト! 応答してくれ!!」
 相当危険な状態なのか、隊員はかなり焦っている様子だった。
 それでも、起きそうもない。が、突然寝返りをうつカイト。
「うぁ――!!」
 床が揺れるとともにとても大きな叫び声が部屋に響く。
 どうやらカイトがベッドから落ちたようだ。
「くぅー……いってぇ……」
 頭を打ったのか、とても痛そうに頭をさすっている。
「起きたな、カイト」
 そして、カイトの声を聞いて安心したのか、今度は少し落ち着きを取り戻した様子で隊員が話している。
 カイトのほうもようやくそれに気付き通信機を手に取る。
 まだまだ寝ぼけているが。
「あ、あぁ今起きた。でなんだ?」
 非常に眠たそうだ。隊長としての威厳が全くない。
 まあ、もとよりなかったかもしれないのだが。
「それが、突然、巨大生物が街に現れたんだ」
 それを聞きカイトはフライトナー初めての出動を思い出していた。
 初めての実戦にしては上出来だった、と。
「あぁそれで、どこに向かえばいい?」
 眼はまだぱっちりはしていないがだいぶ眠気はおさまったようだ。
「第1区だ、至急応援、頼んだぞ!」
「了解」
 これにて通信終了。


 通信再開。
「フライヤー! スカイライナーズ! 第1区画へ急行だ!!」
 ジャンボライトナーに乗り込むカイトが通信する。
『了解!』
 フライヤーが天井ハッチから、スカイライナーズは側面ハッチから出動。
 それぞれを見届けたあとカイトがスロットルに手をかける。
 それと同時に前面のシャッターが大きく開く。
「ライトナーズ! 発進!!」
 スロットルを一気に上げ、飛び去っていく。

『ぐぉー』
 現場に到着したカイトの耳に聞こえてきたのはなんとも気の抜けたような怪獣の叫び声。
 怪獣とはいうが、実態は大きくて、鋭い歯が並んだ口がある食虫植物のようだ。
 茎からは巨大なツル・葉が生え、まるで手のように動き街を破壊している。
 パトロール隊はすでに壊滅状態。もはや手遅れだ。
 その周りには、先着していたフライヤー・スカイライナーズがボロボロになっているのが見えた。

「チェンジ! 喰らえっフライヤーズガトリング!!」
 すぐさま変形し、空中で弾を撃ち込むフライヤー。
 命中したが、ダメージは少ない。
 その少しの刺激に即座に反応し、超速でツルがフライヤーに向かって伸びていく。
「うあぁ!」
 フライヤーは反応しきれず捕まってしまう。
 そのツルはフライヤーに巻き付き、どんどん締め付けらる。
 フライヤーの各所から火花が散っている。
「くそっ、チェンジ!フォレッド!!」
「チェンジ!サーディ!!」
 ライナーズも、変形し果敢に挑む。
「今助ける! ライナーズライフル! てぇい!!」
「やあぁ!」
 フライヤーに絡むツルに向かい2つの砲身から発射される、2本のビーム。
 しかし、そのツルはそれさえも跳ね返してしまう。
「なにっ! ビーム兵器も効かないだとっ!」
「なんて硬いツルなんだ! ライナーズミサイルしかない!」
 しかし、巨大植物の反撃のほうが早かった。
 スカイライナーズに向かってツルが伸ばされる。
「捕まってたまるか!」
「たぁっ!」
 かろうじて避けたがすぐ引き返してきたツルに弾かれ、飛ばされてしまう。
「がはぁっ!」
「うわぁ!」
 2人は地面に叩きつけられる。
「くっ……なんて反応スピードだ……こっちはオーバヒートしそうなのにさ!」
 悔しそうに叫ぶサーディ。
 フライヤーのピンチに何もできないスカイライナーズ。
 上から見下ろすカイト。フライヤーがあの状態じゃ合体もろくにできない。
「くそっ、このままじゃフライヤーが壊れてしまう! こうなったら、特急合体だ! スカイライナーズ!!」
 その叫びに応じ、顔を合わせてうなずくフォレッドとサーディ。
「了解! フォ――シィ!!」
 フォレッドがそう叫ぶとどこからともなくフォーシィが2人の後方にが現れる。
 フォーシィは到着すると、同時に底面バーニアをふかし飛び上がる。
「行くぞ! サーディ!!」
「あぁ! そうこなくっちゃ!!」

 フォレッドとサーディは一度列車形態へ変形し前部と後部に分離する。
 右側がサーディの後部、左側がフォレッドの後部で下半身を構成する。
 その上にコアに変形したフォーシィが合体。
 さらに残りのフォレッドとサーディの前部分が肩に当たる部分に合体する。
 そして、腕が伸びてくるのと同時に頭部がせり出し、眼が緑色に光る。

「特急合体! スカイライナー!!」
 合体後すぐさまライフルを構えフライヤーに絡まるツルを狙い打つ。
「スカイライフル! ショット!!」
 それは2人のそれぞれのライフルを遥かに超越する光を放ち、ツルを打ち抜いた。
 途端にツルの力は抜け、フライヤーから落ちる。
 瞬時に新たなツルが伸ばされるが2度も同じ失敗を繰り返す奴ではない。
 さくっと避けるフライヤー。
「助かった!スカイライナー! カイト、損傷はしているが、合体はできるはずだ」
 ところどころに塗装の剥げや装甲の欠落が見られるが、動作に支障はないぐらいだった。
「フライヤー……よし! 天空合体だ!」
 そう言ってカイトは操縦桿のボタンを押す。それと同時にライトナーズが変形を始める。

 ジェットライトナー1は右脚へ、ジェットライトナー2が左脚へ。ジャンボライトナーは左右の腕と翼へ。
 そして、コアに変形したフライヤーとともに合体。上部に頭部が現れ、赤く眼が光る。

「天空合体! フライトナー!!」
 空中で合体、そのままその場でジェットエンジンを回転させ、巨大ハエトリ草の頭部にあたる部分に突撃する。
「はあぁぁぁぁ!! 揚力刀! 空中居合斬り!!」
 敵の頭部に到達するとともに揚力刀を抜き去り一撃を加える。
 命中、頭部も本体から刈り取られた。
 しかし悲鳴ひとつあげないというのは何とも気持ちが悪い。
「カイト……これは一体……」
「再生した!? そんな馬鹿な!!」
 カイトは驚愕の表情をして口をパクパクしていた。
 なんと、頭部が再び生えてきたのだ。それも一瞬のうちに。
「キシャーッ!!」
 再生が完了した瞬間にその口は襲いかかってきた。
 巨大なハエトリ草にとってフライトナーはハエも同然な大きさしかない。
 捕まれば終わりだろう。
「くっ、エンジンフル回転!!」
 そう叫びスロットルを上げるカイト。ぐんっと急上昇するフライトナー。
 その瞬間にフライトナーの足元を巨大な頭部が通り過ぎた。
 しかし、再生したところなので動きが鈍いようだ。
 それを見抜いたカイトは即座に反撃を開始する。
「よし! 今だフライヤー! 根を狙って竜巻斬りだ!!」
「了解!」
 残り3本の揚力刀を取り出し、十字刀を作り出す。
 そして、それの中心を右手に持ち、回転させる。
 ゴォゴォと風を切る音が辺りに響く。
 さらに回転数を上げる。
 周りの空気を巻き上げ、巨大な竜巻を引き起こすフライトナー。
「揚力刀……竜巻斬りぃ!!」
 そう叫び揚力刀を巨大な根っこに投げつける。
 竜巻によりさらに切れ味を増した揚力刀。
「シャーッ!!」
 見事にそれを斬り裂き、巨大ハエトリ草は断末魔とともにみるみるうちに枯れていった。
「やったぜ! フライトナー!」
 フライトナーが振り返る。
 そこでスカイライナーがフライトナーに向かって親指を突き出していた。

「それにしてもこんな巨大なハエトリ草……一体誰が……」
 フライヤーがぽつりと言う。
 ここまで巨大に育つはずがないし、誰かが作り出したほかないのだ。
「あぁ……一度調べてみる必要があるな」
 そう言ってフライヤーから降りて巨大ハエトリ草の皮を採取するカイト。
「さぁ、帰還しよう」
 カイトはジャンボライトナーに乗り込み操縦桿を握る。
 こうして、街の平和は守られたのであった。

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