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出題内容 †
今年も前年度同様、予め問題をプールしておき、ここから6題（診断書・検案書問題が2題、法医学一般から3題、医薬品安全性学から1題）出題する予定である。なお、医薬品安全性学3回の講義をすべて出席したものはこの問題の解答を免除する(20点加算）。それ以外の学生は医薬品安全性学からの問題1題を必ず解答すること。更に出席0-1回の学生はさらない追加の課題を与える。これに関しては、当該学生番号などを含め、後日アナウンスする。
原則再試を行わない（病欠などによる追試はあれば行う）。全問プール制であるため、普通に勉強していれば十分合格レベルの解答が可能なはずだからである。従って、特別な理由がない限り、点数の極端に悪いもの、追加課題をパスした学生は留年希望と解釈する。
配点は1問20点。但し死亡診断書・検案書作成問題は1問10点
死亡診断書・死体検案書作成問題（ここから2題） †
授業中に渡した課題事例の中から死亡診断書あるいは死亡検案書を書いてもらう。
法医学一般問題（ここから3題） †
早期死体現象および晩期死体現象にはどのようなものがあるか箇条書きに挙げよ。更に、早期死体現象で挙げた項目の中で、任意に2つを選び、簡単に説明せよ。 †
早期死体現象とは
人が死亡した後にまもなく（数十分〜数時間）で出現し、数日で消えるもの。
- 乾燥
- 角膜の乾燥→混濁、白濁（半日以上経過）
- 皮膚、粘膜→赤色、紫色
外気に当たっている箇所、皮膚の薄い箇所、死亡時若干濡れている箇所で起こりやすい
例：口唇、舌、陰嚢
- 普通の皮膚（露出部）も日焼けのように赤黒く見える
- 水中の場合乾燥は免れるが、やがて蛋白の変性が生じて混濁する
- 死斑
- 赤血球が重力により体の下位の血管内に集積する
- 赤紫色〜暗赤紫色
- 体に接している部分では血管が潰れるため死斑が生じない
- 30分から2時間で出現する（貧血の人は遅い）
- 8時間から12時間で最大の色調になり、死斑が"固定"される
（最初の頃は移動・指圧退色*1が、時間が経つにつれ、粘性・密度が増加するため)
- 例外：嬰児〜乳児
24時間以内の急死の場合、体の上位にも"死斑"が出現することがある
仰向けにしていても腹部が赤くなる(医療裁判で俯せにしたか否かが争われることがある)
- 死斑の出現が早い → 窒息状態で毛細血管が拡張
- 死斑の出現が遅い → 血色素の不足
- 皮膚の点状出血：心停止まで時間がかかった場合、死斑に伴って死後に生じることがある
- 鮮紅色の場合
- 死後硬直
ATPの供給停止によりアクチンとミオシンが不可逆的に結合
→筋の硬直
→関節が死亡した体位のまま固まって動かなくなる
- 出現：1時間前後から徐々に硬くなり、半日〜1日で最高潮になる
- 死亡前にATP量が少ないとき（筋肉を激しく使用しているとき）は死後硬直の出現が早い(硬直性硬直)*4
- 2日〜3日後には筋肉の腐敗により緩解する
- 死体冷却
- 深部体温(ex直腸温)を測定する
- 1日以内なら有効
- 逆Ｓ状カーブ(上に凸→下に凸)
- 個人差、環境差による誤差が非常に大きかったが、2004年にボタン式の温度計で持続的に冷却カーブを描けるようになり改善の兆しが見られる
晩期死体現象
- 自己融解
- 無菌的に自らの酵素で自己消化される
膵臓は一見出血したように見える
- 腐敗
- 細菌による変化
- 肉眼的所見は死後1日〜数日
- (腐敗)変色
- 腫大、膨満(顔、陰嚢で顕著)
- 腐敗血管網 皮静脈が黒くなる
- (腐敗)水疱 黒い水疱
- 変色 腸の周囲、特に下腹部(←大腸)に出現し、全身に広がる
緑〜青藍色 溶血が加わると赤褐色に
- 巨人様観 前進に腐敗膨満が広がる
特殊な死体現象
- 死蝋化
- 白くチーズ状になる
- 非常に湿潤な環境下（水中、湿った土の中）で生じる
- ある種の細菌によって脂肪組織が変性
- ミイラ化
- 非常に乾燥した環境
- もともと脱水状態、低栄養の人がなりやすい
- 完全なミイラ化は稀
頸部圧迫は死に至る機序を考える上で、鼻口部閉塞・気道閉塞など他の窒息と区別されることが多い。それはなぜか。また頸部圧迫にはどのような種類があるのか、定義を含めてそれぞれの違いを述べよ。 †
- 頸部圧迫の分類
- 縊頸 紐または紐状の物で自分の体重を利用する
- 絞頸 紐または紐状の物で自分の体重を利用しない
- 扼頸 紐以外（手や足など）
- メカニズム
- 脳栄養血管の閉塞
頸静脈の閉塞を伴うので、頭部や顔面に血液が溜まる
→鬱血、多数の縊血点(絞頸では必発。縊頸、扼頸でも生じることがある)
- 気道閉塞
気管の閉塞よりも舌根部の挙上によるものが大きい
- 迷走神経反射（経動脈洞反射）
溢血点とはなにか。また溢血点所見の持つ法医学的意義を述べよ（出現場所・個数など）。 †
縊血点とは
- 結膜、口腔粘膜、心外膜、（皮膚）に生じる点状出血
- 機序：鬱血 → 血管内圧上昇 → 血管破裂、出血
法医学的意義
- 結膜の縊血点は鬱血性休止の徴候である
- 口腔粘膜の縊血点は頸部圧迫以外では稀
- 頸部圧迫では多数の縊血点が出現することが多い
- ’’多数の’’縊血点が結膜、口腔粘膜、顔面皮膚に出現した時は頸部圧迫を疑う
逡巡創について述べよ。 †
- ためらい傷。
- 自殺の際に躊躇ったことにより浅く切ってしまった可能性が挙げられる
- 手首、頸部は切創、胸部は刺創が見られる。
- 新しい傷と古傷の混在
- （手首の場合）浅く、複数条が並行して走る
- wrist cutterをもつひとが必ずしも自殺願望を持つわけではない
法医学領域で用いられるDNA多型にはいくつかあるが、現在の主流は核DNA多型の中のSTR多型、及びミトコンドリア多型である。それぞれどのようなものか簡単に説明せよ。 †
- STR(short tanden repeat)多型
- 反復単位が2bp〜6bpのものが数十回程度反復している反復配列。
- ゲノム上に数千以上存在し、PCRによって検出する
- 例えば父親が16-20反復(相同染色体のそれぞれの反復の個数)、母親が20-23反復持っていた場合、子は16-18、16-23、20-19、20-23のいずれかになる
- ミトコンドリア多型
- 母性遺伝であるため母子鑑定や同胞鑑定に有効
- ミトコンドリアのD-roopの配列を調べる
Munchausen syndrome by proxyについて、特に小児虐待との関連から述べよ。 †
Munchansen syndromeとは
小児の両親または養育者によって作り上げられた虚偽の疾患
特徴
- 子供は医療機関にかかることになる。通常は継続的(短期間では数日から数週間、長期間では数ヶ月から数年)であり、しばしば複数の機関に受診する
- 加害者はその病気の成因を知らないと言い張る
- 急性の徴候・症状は加害者が子供から離れた時には生じない
- 言葉だけの訴えの時もあれば、症状を伴うこともある
- 本当の疾患児（特に慢性疾患を持つ子）に与えるべき薬物や治療を故意に止めることも含まれる
小児虐待との関連
- 子供の詐病を作るために小児虐待を行う事がある
（例えば、痙攣・嘔吐の訴えを作り出すために種々の薬物を使用したり、鼻口部圧迫を行う）
- これまで作り話のみの虚偽の病を訴えていた母親が、その後も身体的な虚偽の病を作らないまま推移するとは限らない。今日子供が安全だからといって明日は分からない
傷害事件に関連する患者の対応について法医学的な注意点を述べよ。 †
- 診療録に記録をしっかりと残す
- 図や写真を用いる(しっかり診療録に貼り付けることを忘れずに)
- 犯罪が疑われる場合
- 刑事訴訟法に239条(「誰でも刑事告発できる」)に基づき告発しても良い
- 刑法134条(医者の守秘義務)に基づき黙っていても良い。
但し、家庭内の事件などの理由で患者に届出を拒否された場合はそれに従い、その旨を診療録に記載しておく
- 常識的な判断で
- 児童虐待が疑われた場合は、養育者が否定しても幼児の保護を優先させる（児童相談所や保健所へ）
死亡診断書としたい検案書との違いを述べよ（どのようなときに死亡診断書もしくは死体検案書を発行するのか、を中心に述べよ） †
- 死亡診断書
- 診療中の患者がその疾病で死亡した場合
- 診察しその死に立ち会った医師が発行（受診後24時間以内）
- 死体検案書
原則として上記以外
- 診療中の患者以外の死亡
- 診療中であっても診療に関わる疾病以外の死亡
- 病院時到着時に死亡した患者が蘇生に反応せず死亡診断された場合はどちらでも良い
但し、死体検案書は死亡時刻・場所を推定して書かねばならないので死亡診断書が好まれる
法医学的に異状死とはどのようなものを言うのか説明せよ。 †
確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体
＝明らかな病死以外全て
＝死因不明、交通事故、墜落・転落、溺死、自殺、術中死……
医薬品安全性学からの問題（ここから1題：2回以下の出席者は必ず解答すること） †
- 医薬品（薬物）の関係する医療事故の中で、発生理由の異なる2例の事例を挙げ、それぞれ1)発生理由、2)考えられる防止策について説明しなさい。
- 医療施設において必要とされる医薬品管理とは何か、また、適正な医薬品管理の医療過誤防止への貢献についてそれぞれ簡単に説明しなさい。
- 医薬品相互作用とは何か、発生要因を2つに大別しそれぞれ簡単に説明しなさい。さらに、注意すべき相互作用例を2例以上挙げそれぞれの理由について述べなさい。
注意 †
試験まで十分な準備期間があるはずであり、文章の稚拙さや誤字がひどければそこそこの減点の対象とする。ところで、こういったプール制をとると、先輩から引き継いだ”模範解答”集を丸暗記する一群がいる。しかしそういった”模範解答”集には必ずといっていいほど大きな誤解や誤りがあり、結果的に大きな減点となることが少なくない。少なくとも一回は自分なりに吟味・確認してみること。
なお、試験前の解答のポイント（解答そのものではない！）に関し、私を含めて教室員に聞きにくる場合は、これを妨げない。
試験問題
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3年生
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6年生
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