TS-440Sの改造 / IFフィルターの増設・取替


1st IF (45.05MHz) フィルター (ルーフィングフィルター)

アップコンバージョン・スーパーヘテロダインの無線機でルーフィングフィルターの帯域を狭めると受信性能が激変するため、FT-1000MPなどにおいてルーフィングフィルターの交換が流行したことがある。
このリグでは45.05MHzに広いMCFが入っているだけなのでルーフィングフィルターの帯域は広い模様。もし交換しようとするならば、かなりコストが掛かるものと思われる。今更そこまでする程の価値はないリグだろう。

2nd IF (8.83MHz) フィルター (クリスタルフィルター)

ここではSSBフィルターの挿入に関する記述にとどめる。
フィルターの選択については、TS-440Sオプションガイドのフィルターの項をご参照頂きたい。

SSB用8.83MHzフィルターの追加(YK-88S)

あまり議論されてきていない点だが、SSB運用する上では、内蔵する効果はとても大きいと思う。選択度が向上し、7MHzなどの混み合ったバンドで運用が快適となる。 また、前述のIF SHIFTに8.83MHzのフィルター特性が加わり、IF SHIFTの切れが別物となる。

ただしYK-88Sを単体で手に入れると高価である。
このフィルターはオプションというイメージが強いかもしれないが、実はケンウッドが出した1980年代の多くのSSB機がYK-88Sを内蔵していたので、当時の8.83MHzにIFを持つ他のリグ(のジャンク・基板)から移植するのが実は安価に入手する方法かもしれない。
TS-120S, TS-130S, 530Sはシングルコンバージョン、TS-830S, TS-430Sはダブルコンバージョンと周波数構成は異なるものの、ともにSSBフィルターとしてYK-88Sをデフォルトで内蔵しているはず。あまり知られていないがTS-770, TS-780などの固定オールモード機もYK-88Sを内蔵しているようだ。筆者は全機種について確認していないが、それぞれ引っこ抜いてTS-440Sに挿せるらしい。一方で、YK-88S1/S2を内蔵しキャリア発振を調整(できるのか?)という方法もある。

また奥の手として、入手性が悪いため中古価格がかなり高価なCWフィルター(YK-88C/YK-88CN)の代わりに、CWモードでYK-88Sを挿して使う手がある。
CWモードにおいて、SELECTIVITYツマミでYK-88Sを選択しIFシフトを併用することで、CWフィルターには及ばないものの帯域を幾らか上下に向かって狭め、混信を低減することは可能。これは、YK-88S無しでは8.83MHz IFのスカート特性が悪いため困難な芸当ではある。予想外に使える小技。

3nd IF (455kHz) フィルター (セラミックフィルター)

SSB用455kHzのフィルターの変更

実質的にTS-440の送受信音を決めているのが、Murata CFJ455K14というSSB用途のフィルターである。オプションのSSBフィルターがなければこのフィルターでしか選択度を稼げないためなのか、狭帯域(2.2kHz/-6dB)のフィルターを用いており、そのためSSBの送受信音が良く言えば通信機らしいソリッドな、悪く言えば硬くて疲れやすい音になってしまっている。
今ではCFJ455シリーズの新品には滅多にお目にかかれないが、もし手に入れることができるか、あるいは他の455kHzにIFを持ち同等のセラミックフィルターを使用したSSBリグがあるなら交換してみる価値は十分にあるだろう*1
筆者は試していない。

また、もし手元に455kHzのクリスタルフィルターがあるのであれば、セラミックフィルターの代わりに配線し、音色の変化を見てみるのも一興である*2


AM用455kHzのフィルターの変更

オリジナルで内蔵されているAM用のフィルター(村田製作所 CFU455IT; ±2kHz/-6dB, ±7.5kHz/-40dB)は、SWLを行うにも少々狭帯域で音が硬いので、455kHzの広めのフィルターを何種類か買ってきて、自分の主に聞く周波数(BCLかSWLか)での混信の度合いと音質のトレードオフを考えて選択するのが正解だろう*3

オリジナルフィルターを取り外してみると分かるが、フィルターを挿す場所には本来のフィルター用の穴に加え、余計に穴が開いている。
これは、村田製作所の小型・3端子タイプ(CFUシリーズ)のフィルターの他、同社の小型・5端子タイプ(CFWシリーズ)も挿せるようになっているためである。-6dBで同じ通過帯域幅の場合、3素子よりも5素子の方がシェープファクターが良好になり、クリスタルフィルターほどではないにしても-40dB(or -60dB)での通過幅が狭まる。このあたりの兼ね合いで受信音の向上と混信の抑制が期待できるので、各人が入手できる範囲でトライアンドエラーを行ってみるとよいだろう。

管理者はいろいろ試したが、CFW455G(±4.5kHz/-6dB, ±10kHz/-40dB)がお気に入りである。


*1 CFJ455K13など
*2 インピーダンスマッチングはさておき、ではあるが。
*3 BCL用途なら音質を良くするために帯域は広め、SWL用途なら上下の混信を防ぐために狭くなど。