拡張ボード / ECSSユニット


ECSSユニットCMF-78

ECSSユニットこそが、JST-135を異次元のHFトランシーバーたらしめるオプションの一つである。 なにしろJRCは、(主にSSB/CWの送受信に使われるはずの)HFトランシーバーに、AMの同期検波法の一種であるECSSを本格的な回路構成で内蔵させられるのである。実験的かつ不可解だ。

後にも先にも、ECSSが内蔵されたアマチュア無線機は存在しないと思う(JRCの受信機には内蔵されたのもあるが、後継機JST-245には装備されていない)。

ECSSユニットのイネーブル

本ユニットを含む多くのオプションユニットは挿入するだけでは認識・動作しないため、ユーザー定義で設定してやる必要がある。

  1. 「MEMO」+「FUNC/HAM」スイッチを押すとユーザ定義モードに入る。
  2. テンキーで「2」「4」と入力して定義番号を「24」とし、「ENT/kHz」ボタンを押すと、「24」(CMF-78 ECSS UNIT)の設定が可能となる
  3. メインダイアルを回して「0」から「1」(enable)に変更し、「ENT/kHz」ボタンを押して確定。
  4. 「MEMO」+「FUNC/HAM」スイッチをもう一度押して通常操作に戻る。

使い方。

  1. AMモードで放送波を受信する
  2. 「MEMO」+「7」を押すと、表示部に「AM」と「USB」が同時に点灯する。この時に上側波帯のみをPSNで受信している状態になる。
  3. 再度「MEMO」+「7」を押すと、今度は表示部に「AM」と「LSB」が点灯する。同様に下側波帯を受信している。
  4. 更に「MEMO」+「7」を押すとECSS機能が切れる。表示部が「AM」のみとなり、通常のAM検波となる。

回路構成。

ECSSとは、Exalted Carrier Selectable Sidebandの略だそうだ。 基本的にはAM受信において片方の側波帯から受けている混信から逃れるための手法である。

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2nd IF(455kHz)でAM用フィルター(ワイド/mid/ナロー)を通したAM信号を片サイドバンドずつ取り出して復調するという代物。3rd IF(98kHz)のAMの変調信号からキャリア(CW)を作り出す、位相を±45°ずらしてミキサーで同じ周波数とミックスさせたのち、それぞれをLPFに通し、それを加減算器に入れて、USBとLSBを同時に吐く。 これはAF PSNそのものであり、AFで非常に広帯域な復調信号が得られる。これはAF-PSNの回路構成そのものなのである。

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なので多少は難があるが、SSBを復調できる。

復調対象の局に対して十分なロックがかかるSSB信号であれば、AF PSNの高音質でSSBを受信するなんてこともできる。

そのため、お遊びで、F1=F2として、

  • 受信: AMモード+ECSS LSB (F1)
  • 送信: LSBモード (F2) のたすき掛けなんて交信もできなくもない。

ECSSでSSBを受信するときの注意

  • SSBは搬送波がないので、安定かつ強力な局が聞こえているケースでもない限り、ロックが外れ、復調信号が容易に失われる。
  • 周波数ステップがAMのそのままなので、SSBの受信には粗すぎる。1kHzステップにしている方は適宜変更して欲しい。
  • BWCやPBSなどといった混信除去は効かず、AGCもAM用の動作となる。 まあ、おあそびですね。

ECSS機能のメリット・デメリット。

メリット・・・?

本オプションの重要性:?

これは必要だろうか。HFを運用するほとんどのアマチュア無線家にとって答はノーだろう。普通のHF機として使う限りはほぼ要らないと思います。

JST-135をAM放送(中波放送・短波放送)の本格的な受信に使用するのであれば有用かもしれない。

余談。

  • 発売当時の定価は28,600円。BWCユニットほどじゃないにしろ、やっぱり高っ!
  • CMF-78は、JST-135の後継ラインアップである通信型受信機NRD-535の純正オプションでもある。
  • AM受信にはこんなにまでも凝った芸ができる135だが、送信は搬送波を加えた単側波帯の平衡変調=実質A3H(H3E)である。無改造では、高音質なAM送信を目指すのには向かないだろう。