BD間の法律関係及びCD間の法律関係
A:甲土地の引渡等債務 B:代金支払債務
両者は牽連関係
∴ Bは同時履行の抗弁権あり(533),Dにも主張できる(468条2項)
AB間の甲土地の売買契約に基づき,Aは甲土地の所有権移転義務を,Bは代金支払義務を負い,両債務は対価関係に立つため,AがBに対して代金支払請求をしても,特に上記契約においてBの代金支払義務を先履行する旨の約定を交わしていない限り,所有権移転登記と引き換えでなければ支払わないとして拒むことができる(533条1項,2項)。
Dは,AのBに対する代金債権を譲り受け,AからBに対しその旨の通知がなされているので,債権者であるとしてBに対して代金の支払いを求めることができる(467条1項)。
Dの上記請求に対して,Bは,Aに対して主張できた事由を主張することができる(468条2項)。すなわち,AB間の売買契約において,Bが先に履行する旨の特約をしていない限り,AがBに所有権移転登記をするのと引き換えでなければ,Dに対しても,代金を支払わないとして拒むことができる。
Cの保証債務は,AB間の売買契約とは別個の,AC間における保証契約に基づくものであるが,保証債務は主たる債務とその運命を共にするから,AのBに対する代金債権がDに移転すれば,AのCに対する保証債権も同じくDに移転する。
保証債務の付従性から,主たる債務者に対して生じた事由は,保証人に対しても効力を及ぼすから,主たる債務者Bに対して対抗要件を具備したDは,保証人であるCに対しても,保証債務の履行を求めることができる。
上記Dの請求に対し,保証人であるCは,主たる債務者Bが,前記1に記載の同時履行の抗弁権を行使し得る場合に,これを援用できるか問題となるが,保証債務は主たる債務を担保するための従たる債務に過ぎず,主たる債務以上の義務を負うものではないから,これを認めるべきである。したがって,Cは,Bが前記1に記載の同時履行の抗弁権を有する場合には,Dの請求に対して,Bへの所有権移転登記と引き換えでなければ支払わないとして拒むことができる。
なお,Cは,連帯保証人であるから,催告の抗弁(452条)及び検索の抗弁(453条)は主張できない(454条)。
AのBに対する登記請求権についての説明
とにかく分量が多い。判例の説明に終始すべき!
1 登記共同申請の原則について
Bから土地を購入したAは,Bから所有権移転登記を受ける必要がある。仮にBが第三者にも上記土地を譲渡していた場合には対抗要件としての登記が必要であるし(177),B自身が金融機関から借財をするために土地上に抵当権を設定したり,土地をさらに転売する際にも登記が必要だからである。
AがBから所有権移転登記を受ける場合を含め,不動産登記法上,登記の申請をするには,原則として登記権利者と登記義務者の共同でする必要があるとされている(登記共同申請の原則)。本問でいえば,登記権利者はA,登記義務者はBであり,AとBが共同で所有権移転登記の申請をしなければならない。これは,Bを登記申請人に加えることによって,登記にできる限り真実の物権変動の過程を反映させることが期待されているからである。
2 登記請求権の意義
上記のとおり,AがBから所有権移転登記を受けるには,Bの協力が必要であるが,Bの協力が得られない場合には,Bに対して所有権移転登記をせよという権利を,Aのために法的に認める必要がある。登記を受けられないとなると,前記1のとおりの不便がAに生じるからである。そこで,実体法に明文はないが,判例によって,登記がなされないことによって不便を受ける者から,登記をしない者に対して,登記を申請せよ,あるいは登記の共同申請をせよと請求する権利,すなわち,登記請求権が認められている。
3 登記請求権の種類
判例上は,以下の3つの登記請求権が併存するものとされている。
(1) 物権的請求権的登記請求権
登記請求権を物権の効力として認めるものである。本問でいえば,土地の所有権を取得したAが,無権利者となったBに対して,所有権に基づく明渡請求としての所有権移転登記請求権である。
(2) 物権変動的登記請求権
できる限り登記には真実の権利関係を反映させる必要があるという不動産登記法上の要請から,物権変動の事実そのものから認められる権利である。本問でいえば,所有権がBからAに移転したという事実をもって,AはBに対して所有権移転登記を求めることができる。
(3) 債権的登記請求権
契約当事者に登記をする旨の特約がある場合に,その特約に基づいて登記請求権が認められるとするものである。本問でいえば,不動産の売買契約をなせば,所有権移転登記の申請をすることも合意したものと解されるから,同契約に基づき,AはBに対して,所有権移転登記を求めることができる。
4 各登記請求権の優先関係
判例上は,上記3つの登記請求権は併存するものとされている。本問でいえば,Aは,所有権に基づく明渡請求としての登記請求権,所有権移転という事実そのものから認められる登記請求権,売買契約に基づく登記請求権のいずれを主張してもよい。