SSの部屋 / eveaoさん作


第一話

第一話:「セッションハウス」
とある街の郊外にある小さなバー。
看板には「セッションハウス」と書いてある。

キィ…。
ドアを開けて一人の女性がその店に入っていった。

「やあ、ようこそ、セッションハウスへ。
この演奏はサービスだから、まず聴いて落ち着いて欲しい。
この演奏を聴いたとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「音による感動」みたいなものを感じてくれたと思う。
あまり生の音と触れ合う機会のない世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そうおもってこの店を開いたんだ。
さあ、注文を聞こうか。」

マスターが何時もどおりの決まり文句を言っている。
この店は例え初めての客でも、常連の客に対してでも挨拶を変えたりはしない。
それがこの店の良さだと思っている。

「マスター、弾かせてもらうよー。」
「おや、久しぶりだね。今日もよろしくね。」

マスターと一言言葉を交わし、ピアノの前に座る。
まずは、手鳴らしとばかりにいつものようにたらこを奏で始める。
「腕は落ちてないようだね、これで一息入れてくれ。」
マスターからテキーラを受け取り喉を潤す。

彼女の名前はじぽ。 ここセッションハウスの常連であり、キーボードの奏者だ。
主旋律を弾き、セッションを引っ張るリーダー的存在でもある。

「マスターちわっす!」 「おー、じぽたんじゃないですか!」
「じぽたんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!」 「じぽたんだ!」
どんどん客も集まってきたようだ。

やはりここの店は初めての人間でも気軽に接することができ、色々な人に演奏を聞いてもらえるからすばらしいと思う。
「お、じぽたんがいるー。俺もまぜてまぜてー。」
一人の男が店に入るやいなや、コートを脱ぎベースを持つ。
「帽子たんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!。じゃあEveryDay☆SunDay行こうか!」
「ちょwwww、いきなりですかwwwwwwww」
「おっけー、行くよー!」

客の一人がリクエストし、それに帽子たんと呼ばれた男が反応し承諾する。
彼の名前は帽子、ギター・ベース・ボーカルなど状況に応じてやるものを変えている。
彼もまたセッションハウスの住人である。

いつものメロディーを弾き始める。
『「今日も夜から元気におはようさ〜ん。仕事も学校も…」』
そして帽子が歌いだす、客の中にも何人か一緒に歌っている人がいるようだ。

「ちょwww、じぽたんそれプロトタイプwwww、プロトタイプ展開違うからわかんねーっすよ!」
途中で抗議がはいる。 そこでちょっといたずら心が騒ぎ、スローで弾いてみる。
「テンポ変えても変わんないですから!それプロトタイプですから!」
さらにいたずら心が騒ぎ、今度は早弾きをしてみる。
「はやwwwww歌えるわけねーっすよ!」
やはりボーカルをいじめるのは楽しい。
ちょっとサド心がうずいてしまう。

客の様子を見る限り笑っているので客にはうけたらしい。
「じゃあ次は何いこーか。」
そして客にリクエストを聞きつつ、とりあえず演奏を続ける。
「じぽたんアクエリおねがい!」
「渡る世間キタ━━━(゚∀゚)━━━!!、ってたらこwwwwwwwww」
「渡る世間はたらこばかりwwwww」

しばし、帽子たんとセッションを楽しみ流れを無視してここでVIP先生を弾き出す。
「Super Mario RPG〜♪」
「VIP先生キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」 「VIP先生!VIP先生!」
「Give me frog coins〜♪」 帽子がいつものように歌っている。
いつものことだが、ここの客と奏者ノリのよさは天下逸品だ。
調子に乗って、早弾きをはじめる。
「ちょwwwこれ歌えないですって!合わせるだけでも精一杯ww」
「あははは、帽子たんテラヒッシスww」 店の端から女性の笑い声が聞こえる。
いつの間に入ったのだろう、気づかなかった。
「じぽたんにくっついて歌わせてくだしあ><」
そう言いながら先ほどの女性がステージに上がる。

彼女の名前はぼんやり。
素敵な声のボーカルなのだが、何故か誰も気づかずにいつのまにか店にいることが多い。
噂では忍者という話なのだが、普通に考えてありえないがこういうところを見ると本当にそうなのかと疑ってしまう。

「ぼにゃもキタ━━━(゚∀゚)━━━!!、aiko!aiko!」 「事変!事変!」
何時も思うのだが、ここの客は「キタ━━━(゚∀゚)━━━!!」ばかり言って飽きないのだろうか。
別に言われるのが嫌というわけではないので不思議で仕方がない。
「じゃー、歌舞伎町の女王でも行こうかー。」 「おっけー」 「林檎キター><」
二人から返事が返ってくる、どうやら異論はないようだ。
「蝉の声を聞く度に〜♪」
ぼんやりの歌声が聞こえ始める。 相変わらずキレイな歌声だ。

このセッションハウスには歌姫と呼ばれている女性ボーカルが数人いる。彼女もその一人である。
しばし、指を動かしつつもその歌声に身を任せ次に弾く曲を思考する。

ここでお約束のあの曲を。「あはは、日清サラダ油セット〜♪」
いつものように彼女があわせてくれる。
「じゃあ次はアクエリ行こうかー!」「おけー!」
客のリクエストと、ボーカルのレパートリーに合わせ曲を弾いていく。
こうして皆の笑い声と心地よい音楽の中、何時ものようにセッションハウスの夜は更けていく……。

第一話-終-

第二話

穏やかなギターの音と、歌声が聞こえる。
あたりには誰もない、ただ小さな開店前の酒場があるだけだ。
その小さな酒場には「セッションハウス」という看板がかけられている。

第二話「昼間」

夜は大きな賑わいを見せるセッションハウスも今は穏やかで静かな時間が流れている。 その中心になっているのは二人の人物。

一人は男性で、ギターを持ちながら歌っている。

一人は女性で、キレイな歌声を響かせている。

男性の名はシェイカー。
夜はシェイカーを持ち、周りの演奏に合わせノリのいい動きを見せてくれる彼も今は穏やかな旋律を奏でている。

女性の名はぼんやり。
神出鬼没で、いつ現れるのか誰にも予想できないがいつも聞くものを楽しませてくれる。

ここセッションハウスでは、いつでも店を開放している。
しかし、酒場が昼間からやっているはずもなくマスターはもちろんいない。
しかし誰もが気軽に演奏できるスペースとして24時間解放しているのだ。
もちろん防犯の面などを見れば危険なことだらけだ。
しかし、マスターは「ここにくる客と奏者を信じている。いつだって店を支えてくれるのは皆だからね。」と言い常に店を開放してくれている。

「じゃあ、次はaikoやろうか。歌えないから歌は任せるよー。」
「あい>< できたら最初の音だけお願いするでござる。」
たまに語尾にござるをつけるのは自称忍者のぼんやりだ。
もう皆なれたのか、誰も気にするものはいない。

「じゃー、最初の音はこれで。いきなり入るからよろしくー」そういって彼はギターを弾き始める。
「〜♪」彼女の歌声が響く。
客からの歓声も夜に比べれば遥かに静かだ。
決して派手ではない、夜のセッションハウスのような活気もない。
しかし、紛れもなくここはセッションハウスであり、そしてこの穏やかな旋律が客の心を潤わせる。
セッションハウスは客を選ばない、ただ受け入れ誰であろうが関係なく楽しますだけ…

第二話-終-

side episode

今日もいつのものように酒場に向かう。
いつも向かう酒場は郊外にひっそりとたっている小さな酒場。
看板にはセッションハウスと書かれている……。

side episode 「 shaker 」


いつものように店に入り、席に座り酒を頼む。
今日はじぽたんと、△たんと、帽子たんがいるようだ。

気持ちのいい、楽しい音楽が鳴り響く。
しばしその流れに身を傾けつつ酒をあおる。

聞いているうちに酒がまわりはじめ、体がうずくのを感じる。
なんだろうこの感覚は……。
しばし考える。
演奏に耳を傾けながら考えているうちに気づく。
ああそうか、自分もあの中に入りたいんだ。
気づいたとたん自然といてもたってもいられなくなる。
しかし、演奏できる楽器を特にもっているわけではない。
ふと、ポケットに入っている先ほど購入した卵シェイカーがあるのを思い出す。

皆のように派手に演奏できるわけではない、しかしバックでやるには十分だろう。そう思い席を立つ。

「勝手ながらシェイカーで参戦させていただきます!」

奏者は何も言わない、一緒にやろうぜと笑顔で返事をしてくれる。
客の騒ぎ声が聞こえる、しかし暴言は一言もない、応援の声だけが耳に入る。

ああ、なんて心地よい雰囲気なんだろう。

そう思いステージへと一歩脚へと進める。

ステージに着き、曲が流れ始める。

曲に合わせてシェイカーを振る。

なぜもっと早く参加しなかったのだろう……。
いつまでもこの時間が続けばいいのに……。
そう思うような気持ちのいい時間が流れる。

それが始めてステージに立った夜だった……。

side episode-終-

第三話

いつもはどちらかというと落ち着いた雰囲気の漂うセッションハウス。
しかし今日はライブハウスのように盛り上がっていた……。

第三話「 Zwei 」

「ビッグブリッジ、二回続ケテ、弾キマス。」
スピーカーから機械音声が流れる。
スピーカーの横には一人の男。
そしてその後ろには一人の女性が立っている。

二本のエレキギターからビッグブリッジが奏でられる。
まるで競っているかのようにより激しくより熱くメロディーが奏でられる。

途中男の遊び心かコインをとる音が聞こえる。
二回目のビッグブリッジになり演奏がスピードアップする。
二本のエレキギターから激しい旋律が奏でられる。
しかし、それでもコインの音が鳴り響く。
そして二度目のビッグブリッジが終わる。

「うぃる米たんカッコヨスwwww」「コインバロスwwwwwwwwww」「姉さん(*´д`*)ハァハァ」
客の歓声が聞こえる。
男の名前はwillcom。
コインの音など、様々なパフォーマンスをもったギタリスト。
うぃる米たん、うぃ子などと様々な愛称で親しまれている。
彼の最大の特徴は機械音声でしゃべるという点である。
もちろん生声ではないし、自分でしゃべれないというわけではない。
しかし、しゃべる言葉があらかじめ全て用意されているかのように揃っており、全てがスピーカーから流れる機械音声で会話をしている。

「うぃ子たんウマス。・ ゚・。* 。 +」
そして彼女の名前はにのうで。
華麗なギターと、セッションハウスの客全てを魅了する萌えボイスの使い手。
萌えボイスもさることながら、ギターやドラムなどその才能は幅広く今ではセッションハウスの代表格の一人といっても過言ではないだろう。
姉さん、オカラの人、全てが計算などと呼ばれているが全て愛されているからの言動であろう。
文章では萌え声の魅力が伝えきれないのが残念である。
作者もにのたんの萌え声にやられた一人で大ファンdうわなにをするきs(ry

話が少々脱線してしまったが本線に戻ろう。

「炒る米たんカノンロックやってー!」

客からのリクエストが入る。
そしてスピーカーからはおなじみの機械音声が流れる。

「ジャア、カノンロック、イキマス。」

にのうでが一歩さがる。
そしてここからはwillcomのステージが始まる。

ゆっくりとギターが奏でられる。
穏やかな旋律から始まり、次第に激しさが増していく。
客達は静かに、耳を傾けている。
演奏が続けられる。
静かにに、しかし激しく奏でられる旋律。
誰もが耳を傾け、そして演奏が終わる……。

「カノンロックカコイイ!!」
「うぃる米たんうめーー!」

客の歓声が聞こえる。

「うぃ子たん乙。・ ゚・。* 。 +
これで帰るので最後に逆さまの蝶やります。・ ゚・。* 。 +」

今度はにのうでが前に出、そしてwillcomが少し後ろに下がる。

「姉さんの逆さまの蝶きたー!」
「にのたんがんば!」

音楽が流れ始め、観客が一斉に静かになる。
ここからはにのうでの時間だ。

「人の世は縁と申します」
曲にのせ、にのうでの特有の愛らしい声で件が紡がれる。
「結んだ糸は絡みつき、脆く哀れな彼岸花」
誰もが静かに耳を傾け
「怒り、悲しみ、涙に触れて午前零時の帳の向こう」
その声に聞きほれる。
「晴らせぬ怨み晴らします」
そして、歌が始まる……。

「いつか光に向かう 逆さまの蝶〜♪」
その奏でられる旋律に
その紡ぎだされる歌声に
誰もが静かに聞き入る。
そこはにのうでのステージだった…。

そして、歌が終わる……。

「姉さん乙です!」
「にのたんおつー、よかったよー」

先ほどまで歌で満たされ、静かだった空間が一斉に騒がしくなる。
そしてにのうでに労いの言葉が降り注ぐ。

「皆様聞いてくださってありがとうございました。・ ゚・。* 。 +
 それでは、みーみー><」

『うおおおおおおおおおおおお』
客達が異常な盛り上がりを見せる。
これもセッションハウスでは日常茶飯事なのだ。

今日もまた、いつものようにしてセッションハウスの夜は更けていく。
セッションハウスは誰のためのものでもあり、誰のものでもない。
しかし、心から楽しんでくれる人を決して裏切らないだろう……。

第三話-終-