【回答】
まあ,1940年の英仏戦役に関しては,デイトンの『電撃戦』を取りあえず一読してみてくれ.
ハヤカワのノンフィクション文庫で入手もしやすい.
英仏の平和主義とか反戦主義ムードというのもあるけれど,外交的には連中はアレだけど,ところがどっこい,対ドイツに関しての軍事面での準備は,むしろ熱心に行なわれている.
ところが,本当に,連中の軍隊…特にフランス軍は,何だこれは…と思うくらいに,ものすごく軍組織そのものが混乱状態にあった.
純軍事的に見ても,フランス軍の組織システムは明瞭性に欠けていた.
総司令官から戦闘部隊に至るまでの序列と命令系統は,混乱状態にあった.
これじゃあ,負けない方がおかしいというくらいに.
しかも上級指令部でさえ,無線通信機器やテレックスなどの現代的な連絡用装備に欠く有様で,一部では高級将校が半日かけて,自動車で行き来することで,ようやくと指揮系統が守られていた.
さらに,軍と軍との境界線の継ぎ目に二線級部隊が割り当てられていたり,戦役の焦点とも言うべき戦闘が行なわれた,セダンの防御割り当ては,『電撃戦という幻』の付録の地図を見る限り,まるでジグソーパズルのように,防戦区域の割り当てが複雑怪奇な様相を帯びていたり….
とにかく,上から下まで,まったく合理性を欠く組織原理の中で動いていたのがフランス軍.
国内の平和主義とか,反戦主義がなくとも,多少はマシという程度だっただろう.
その辺は,『電撃戦』に加えて,もう1,2冊関連図書を読めば,明白にわかるはずだ.
他方,英国について言えば,19世紀初頭からすでに英国経済は下り坂にさしかかっており,ボーア戦争での醜態と負担に加えて,第1次大戦の戦費,軍の消耗で完全に勢力を失っていた.
このため,閉鎖主義的な方針を取らざるを得ず,スペイン戦争でも傍観者に留まることにした.
一方,共産主義革命は英国にも影響を及ぼしており,不況下,階級主義社会の英国では,労働者階級が共産主義に走ることを怖れていた.
そこに,共産主義の輸出国,ソ連と戦ってくれるというナチスドイツが登場したわけで,内心不安を抱きつつも,共産主義の抑止をある程度期待してもいた.
そもそも上記の事情で,積極的に動く余裕はなかった.
結局,第2次世界大戦で英国は破産してしまったから,英国に侵略の危険が及ぶことさえなければ,傍観が正解だったのかも知れない,短期的には.