【質問】 英米協調路線のif世界は,九八式軽戦車の開発に,どんな影響を与えるでしょうか?


 【質問】
 日本陸軍が第1次世界大戦で欧州に派兵したため,火砲や戦車について英仏から史実より影響を受けており,更に日独伊三国防共協定が流産等したため,日中戦争勃発に伴い,独は公然と国民党を支援し,更にソ連とも協調.
 日本陸軍は独を敵と認識したため,日本は第2次世界大戦勃発に伴い,英仏支援に乗り出した,という設定です.

 九八式軽戦車の開発に際し,日本は英国製2ポンド砲を戦車砲として採用して,ライセンス生産することを決定.
 榴弾については,ライセンス生産決定と同時に,開発,製造を進めたため,第2次ノモンハン事件に際し,九八式軽戦車が活躍.
 そして北アフリカ戦線でも,九八式軽戦車は装甲の薄さに悩まされつつ,日遣アフリカ軍団の主力戦車として奮闘する,
――というプロットを作ったのですが,そんなに簡単に榴弾が開発,製造できるのだろうか?,と疑問が生じました.
 1年あれば榴弾の開発,製造は大丈夫と最初は考えたのですが,考えが甘すぎるでしょうか?
 よろしくお願いします.

 【回答】
 勘違いしている.
 2ポンド砲には榴弾がなかったのではない.
 「対戦車砲には必要無い」として生産されず,しかし現場の声もあって,大戦後半に(これを搭載する軽戦車や装甲車用に)やっと供給されたのだ.

 また,2ポンド砲って重量が,オリジナルの九八式に積んでた奴よりも,3倍以上ある.
 積んだ話書くならそのへん,サラっとでいいので,うまくごまかす必要がある.
 英仏の協力が得られるなら,98式軽戦車のエンジン出力を上げとくと,2ポンド砲も載せられるかもね.
 ディーゼル・エンジンの欠点としては,出力に対しての容積率が無視できないのもある.
 軽戦車だと車体に余裕が無いから,容積が小さくて,出力がそこそこあれば,砲も大きいのを積めるし.

 この場合,ガソリン・エンジン搭載になってしまうが,ディーゼル・エンジンよりはマシ.
 軽戦車であってもエンジンは,ガソリン・エンジンをお勧めしておく.
 史実の糞のような空冷ディーゼルは,奇襲を妨害するほど煩く,かつ,英米のガゾリン・エンジンより低い出力しか出て無いからな.
 スチュアートのW-670が10980ccで262馬力.
 ハ号のA6120VDが10850ccで115馬力.
 排気量あたり馬力は4割と少しってところ.
 ディーゼル版スチュアートは16710ccで245馬力だから,日米ディーゼル同士比べれば7割.

 英国の力を借りれるなら,ロールスロイス・マーリンエンジンの初期型に使われていた,温度管理のノウハウなんかは使えそう.
 あれってマンガン合金鋼使っているから,日本での調達が容易だし.
 逆に,エンジン周りの技術が貰えないとしたら,そもそもうまく行かん.
 当時の日本の技術だと,ガソリン・エンジンにしても相当微妙.
 八九式中戦車のガソリン版にしても,排気量あたり馬力は,九八式のディーゼルとそう変らん.
 単に,ガソリン・エンジンに切り替えればうまく行くような簡単な問題じゃなく,根はもっと基礎技術の深いところにある.

 ただ,砲変えると重さとか機関部等々のガサとかで,砲塔自体から直さないとならんかもなぁ.
 砂漠戦だと無線機無いとそれこそ詰むだろうし,他にもそこそこ色々居るか.
 イタリアのセモベンテの,べーラー砲ベースの47mm積んだ小さい奴が,車格とか同じ位か?
 ファイアフライみたく砲自体がでかくなるようなら,後ろに張り出す方法もある.

 そもそも,そこまで協調関係にあるのなら,戦車設計も影響を受けて,我々の知っている日本軍戦車とは,似ても似つかぬものになっているような気がする.
 四式あたりはもう,シャーマン戦車っぽくなっていてもおかしくはない.
 あるいは戦後の61式みたいなものが,早くも登場しているとか.
(佐藤大輔の『レッドサンブラッククロス』の挿絵で,七式戦車が61式そのまんまみたいな絵に描かれていたのを思い出す.
 作者的にはT-54のイメージみたいだけども・・・)

 日本単独での開発・生産について疑問があるのなら,ライセンス国産にして配備させるとか,輸入するとかしたらいいかもしれない.

 海上輸送に問題が出るような事は,英日相手にして田舎海軍レベルのドイツ海軍に出来るとは思えないし,史実ドイツ海軍の駆逐艦・軽巡洋艦などの燃費の悪さ加減を見る限り,海上迎撃は恐らく独逸単独では不可能.
 独逸駆逐艦は冗談抜きで,日本の3〜4倍位燃費が悪い.
 イタリア海軍艦艇よりも燃費が悪いのだから,ホントどうしようもない.

(Z系の駆逐艦は戦争やってる間の半分はドックに入ってた辺り,機関無理しすぎな気がする.
 Kは波荒いとこには行けないし折れるし.
 英の地中海重視政策から言って,当面は伊海軍と独伊の航空戦力が,欧州方面の海ではメインディッシュか)

 ソ連が大量の潜水艦を配備していて,それが太平洋や黒海から出張ってくるなら,数の上では脅威だがね.
 それに,欧州に陸軍が出ていくくらい陸軍の,陸戦兵器への予算支出があるのなら,海軍だと駆逐艦数隻分の予算が陸軍に回ってそうだ.

 質問者の設定を見ていて一番気になるのは,日本陸軍の砲運搬能力.
 派遣先では英軍から,牽引車両を融通してもらわないとキツイね.
 史実の旧軍の野砲兵では,野砲を馬6頭で引いてたが,1t越えの牽引野砲の重量で,問題が起きてしまうほど,重砲・野砲牽引力には悩まされていた.
 日本全体が馬を飼うのに向いてない土地柄なのに加えて,江戸時代の200年間,戦争が無いから不要だってんで,飼い易く,少ない荷物を短距離運ぶ程度の小さい馬に品種改良しちゃって,大型軍用馬の血統が殆ど無くなっちゃった.
 それでも産業や運送に利用できるなら,多少の無理をする場合もあるだろうけど,日本の地形は宿場間を,飛脚がリレーする方が向いているという環境だからね…
 飛脚に重過ぎる荷物の時だけ馬.
 でなきゃ川や海を船で水運.

 しかも馬は,大きさに比例して食う.
 小型馬なら,草だけでも十分労働可能だが,大型馬はそうはいかない.
 穀物飼料も食わせねばならない.
 人間の食うものですらかつかつなのに,馬用の飼料まで生産する余裕なんてどこにもない.

 また,すごくお節介の重箱の隅だが,WW1で派兵した陸軍と民間の船腹,どんだけ消耗したかがキモである気がする.
 血を流せば信頼度は上がるけど,疲弊しすぎると政情不安定と経済不振が.
 派兵の時点で,陸軍と実業界に推された新聞屋が,喚き散らして世論形成してるだろうしなぁ.
 内閣が何度か倒れててても不思議じゃ無い.

軍事板,2012/02/11(土)〜02/14(火)

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