【回答】
イスラムには,ユダヤ教・キリスト教という好戦的な「セム的一神教」の下地がある.
ムハンマドもその流れで布教を始めたが,当初は当然迫害され,信者も少なかった.
しかし彼は「戦う預言者」で,粘り強く戦闘を重ねて勝利し,メディナとメッカを占領して宗教王国を築き上げた.
こういう天命を受けたカリスマ的な指導者が出てくると,利益を求めて周辺部族も従ってくるし,彼らに利益を保証するため,異教徒をどんどん征服して,財宝や領土を獲得する必要も出てくる.
アラビアはほとんど砂漠で貧しく,豊かなペルシャも東ローマもお互いの大戦争で疲弊していたから,「勝てば財産,戦死すれば天国」という教義のもと,アラブの部族連合が襲い掛かれば,こりゃあ強い.
ちなみに異教徒は皆殺しというわけではなく,イスラムに改宗するか貢納金を払えば助けられた.
ただし改宗されると,前からの信者と同じ権利を与えねばならんので,多くの場合は貢納を求めた.
戦えば互いに損害が出るし,カネで片付けば話は早いから,短い期間であれだけ広がったわけ.
占領地の住民が大規模にムスリム化するのはアッバース朝からで,それまでのイスラム帝国は「アラブ人の王朝」だった.